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第3話 聞こえる者3

突然だが、今日はお休みとなりました。

ってまぁ俺が開校記念日を忘れてた

だけだけどな。急に休日をもらえると

以外と困るものらしい。なにをしていいか

わからん。とりあえず

制服を脱いで着替えよう。

だが待て。忘れるな。脱ぎたくても

簡単に脱げないのではないだろうか。


なぜなら


制服のズボンのチャックが盛大に

噛んでいるから‼︎


「こりゃかなりやばいよな」


無理に引っ張れば確実に死ぬ。

制服は明日以降毎日着るものだ。

もし、それが壊れでもしたら

俺は何を着て登校すればいいんだ。


『もうさ。そのまま社会の窓半開きで

生きていけよ。情けなく、恥ずかしげもなく

無様に生きていけよ。お前にはふさわしいな』

「なんで目覚まし時計に罵倒されてんの? 俺」


こんなバカは放っておいて

早くなんとかしないしと。


とりあえずズボンのチャックに手を伸ばす俺。

すると、


『あんちゃん。ちょいとまてや』


この声は、

おいおいまさか。やめてくれよ。


「・・・・・・」

『なに無言決め込んでんだ? お前に話しかけてんだよ。なにこの俺を噛ませてんだ。お母さんもよく言ったろーが。チャックは優しく扱いなさいってよ。勢い任せでチャック上げるなよ。たしかに勢いが大切な場面もあるよ? チャック降ろす時とかはさ。やっぱり急がないとだめだろ? あれを出すときはさ』


もうお分かりだろうが今話しているのは

目覚まし時計ではなく、

ズボンのチャックである。

開口初っ端から下ネタかよ。死ねよ。


俺は現実を受け止め、嫌々ではあるが

とりあえずチャックの

話に耳を傾けた。もしかしたら

この噛んだチャックをなんとかする方法

知ってるかもされないし。チャックのことは

チャックに聞くのが一番なはずだ。


『でもお前あれだよな。サイズがな。

残念だからな。チャック全開にしなくても

用は足せるだろ。なに調子こいて全開に

してんだ。自分のサイズをしっかり

認識しろ。このなめこサイズが』


「そこまで小さくねぇよ‼︎」


こいつさっきから鬱陶しいことこの上ないな‼︎


『サイズも小さいし、早いし、早いし、早いし。どうしようもないチェリーボーイだぜ』


「お前が俺のなにを知ってると⁉︎」


早いをあんまり連呼するなよ‼︎

そこまで早くないよ‼︎


『いいか? 男ってのはな。遅いくらいが

いいんだぜ? だからよ。チャックの開け閉めも

もっと丁寧に優しくゆっくりしてくれや。これ、チャック兄さんからのお願いな』


「頼むからもう黙ってくんない?」


こんな奴を頼ろうとした俺がバカでした。



チャックについてはあの後も色々

うぜぇこと言いやがったので

勢いに任せて引っ張ってやった。

その瞬間の奴は最高のリアクション

だったぜ。思い出すだけでざまぁと

思っちゃうね‼︎


『待って‼︎ 待って‼︎ 俺が悪かった‼︎ 悪かったって‼︎ いろいろ言いすぎたよ‼︎ お前のあれは小さくもないし、まして早くもないよ‼︎ あれだろ?

ただ、不感症なだけだもんな‼︎ だったらもう

なにもかも考えたところでしょうがn』


「散れ」


ビリィィィイイイ‼︎


俺は力の限り思い切りズボンのチャックの

部分を引っ張ってやった。

無理やり力任せにな。


『ギィィィイヤァァァァあああああ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎』


あーあ。やっちゃったぜ。いや、

殺っちゃったぜ。


ズボンのことはひとまず忘れよう。

俺は洗面所へ行き歯でも磨くことにした。



俺の歯ブラシをよく見るとかなり毛が

ボサボサだった。ああ、結構長い間

使ってたからな。ってこれはまさか

フラグですか? 歯ブラシがしゃべりだす

フラグですか?

しゃべりだす前にとっとと磨いて捨てよ。


シャカシャカシャカシャカ。

よし、綺麗に磨けたな。

ニっとはにかんで磨き残しがないかを

チェック。


「よし、今日もいい男だぜ」

『キモ』

しゃべりだしたのは歯ブラシ。

ではなく、洗面所の鏡だった。


「鏡よ鏡。キモいとはなんだね。いいか?

この世で一番かっこいいのは誰だ?」

『お前以外の男ならみんなかっこいいさ。キモ』

「まさかの複数⁉︎ 少しくらい褒めてくれよ‼︎

こんなに丁寧に歯磨きしたんだぜ?

俺だってかっこよくなりてぇよ‼︎」


『は? 歯磨き一つでかっこよくなれるとか思ってるの? 現実そんな甘いわけないでしょ。

どんな幻想抱いているの? バカじゃないの? 頭に虫でもわいてる? 』


「わいてねぇよ‼︎」


『それにさ。丁寧に磨くってそんなのかっこいいどうのこうのじゃなくエチケット、身だしなみだよね。おしゃれと身だしなみは違うんだよ? わかる? 身だしなみは他人から評価されるもの。おしゃれみたいに自己満足で完結するものじゃないんですけど? 君ね。自分の歯磨きは丁寧で綺麗に磨けてるとかそれ、完全に勘違いだから。君の歯磨きってさ。なんなの? 歯磨き粉使いすぎなんだよ。歯ブラシ噛みすぎなんだよ。だからすぐにブラシがボサボサになるの。君みたいな無能にはわからないと思うけど、ただ歯磨き粉つければいいわけじゃないんですね。歯磨きって。そんなこともわからないで君は自分の歯磨きが完璧だって? いるよね。こういう自分がやっていることはすべて正解だって勘違いしてるやつ。救いようないよね。そんなんで人間やっていけるなんて。人間の底も知れてるよ。鏡のほうがよっぽど綺麗だね。綺麗な鏡だからこそ、使用者の顔を姿をきちんと映せる。でもね。結局使用者の心や顔や体や顔や顔や顔が汚かったら映すその姿も所詮ただの汚物でしかないんだけどね。

ねぇ、汚物のくせになんで鏡様に話しかけてるの? ねぇ。なんで? っていうかさ。鏡にここまで言われて今どんな気持ち? ねぇねぇ。教えてよ。負け犬』


バリーン。


俺は利き手の右腕を犠牲にこの心底腹立たしい

鏡を思い切り割ってやった。手は

みなさん予想通り血まみれである。



くそ。まったく、なんなんだ。俺が使う

ものすべてなんでこんなに俺に優しくないの?

敵意むき出しすぎるだろ。ふざけろよ。


どーせこのボロい歯ブラシも俺の敵だ。

だったら話しだす前にとっとと

捨ててやるよォォォオオ‼︎


『待って‼︎』

「なんだよ。歯ブラシ、案の定話しだしたな? で? 要件は? それとも遺言か?」

『完全に私を捨てる前提⁉︎ 待ちなさいよ‼︎ あなた、誰が今まであなたの口の清潔を守ってきたと思っているの‼︎ 私でしょ‼︎ もうあなたには私しかいないのよ‼︎ それに、それに、私だって、私だって‼︎ あなたしかいない‼︎』


は?

何言ってるの? このメス歯ブラシ。

メスってこと自体今知ったけど。

ちなみに色はオレンジです。

毛は柔らかめです。


『私ね。気付いたの。毎日毎日あなたのそのくっさい口の中に突っ込まれて。気付いちゃったの』


「いますぐ捨てたろか?」


『待って‼︎ ちゃんと私の話を聞いて‼︎』

「んだよ。わかったよ。うるせぇな」


どーせ捨てるんだ。話くらい聞いてやるか。


『私ね。あなたに使われて幸せよ。そりゃくっさい口の中でぐちゅぐちゅ噛まれたりするけど。なんだろう。それが愛なのかしらね。甘噛みだったんでしょ? 』


「ちがいますけど?」


『わかってたわ。あなたの歯磨きが愛だって気づいたらもうくっさい口の匂いもなんだがとっても好きになっていたのよ』


「さっきからくっさい言い過ぎだよね?」


『おかしいでしょ? 変だって思うでしょ? でも、理屈じゃないのよ。私は歯ブラシよ。わかってる。わかってるわ。でも、それでも‼︎ あなたを愛してるの‼︎ 好きになってしまったの‼︎ 』


「お前さ。なに訳のわからないこと言ってるの?」


『この恋は報われないってわかってる‼︎ でも‼︎ せめてあなたにこの先もずっと使って欲しい。あなたのそのくっさい口に包まれたいの』


「だからくっさい言い過ぎだっつーの。どんだけことさら強調してんだよ。ふざけんなよ。つーかさっきから俺の話きけよ。一人で勝手に語りだすなよ」


『隙間大きい歯間に挟まった食べカスたちを取ってあげたい。ずっと私が。あなたのそばにいる。だからお願い‼︎ 私を捨てないで‼︎ いやよ‼︎ 私を捨てたら新しい女があなたの口を磨くんでしょ‼︎ 私耐えられない‼︎ 女をすぐに取っ替えて柔らかい毛先であなたの口を清潔にするなんて‼︎ そんなの考えられない‼︎ お願い‼︎ 考え直して‼︎ 私頑張るから‼︎ そのくっさい口できる限り綺麗にするから‼︎』


「頑張らないとどうにかならないほどの

臭さなのかよ‼︎」


『確かに私は使い古されて毛先もボロボロ。

広がってるわ。でも‼︎ あなたの口の清潔を守ることならだれにも負けない‼︎ あなたのそのくっさいくっさいくっさい口を清潔にいい香りにさせてみせる‼︎

だから私を捨t』


「そんなボロボロでまともに磨けるかよバーカ」


俺は3ヶ月使い続けた重たい女もとい、歯ブラシを容赦なくゴミ箱に投げ捨ててやった。


『嫌ぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ‼︎』



ほんと。ろくな私物がなくて困る。

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