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第1話 聞こえる者1

俺はある能力を持っている。いわゆる、

超能力だ。ちょっと待て。今、こいつ

頭おかしいとか厨二病とか思ったよね?

ちがうから。そういうのじゃないから

ほんとまじで。困ってるんだよ。

その能力のせいで。

まどろっこしいのは好きじゃないので

端的行こうか。俺の能力、それは

物の感情がわかるという能力だ。

超能力と呼ぶには使い道がまったくない

だろう? しょうもないだろう?

気持ちが想いが聞こえてくるだけで

それ以外はなんにもできない。

強いて言えば物と会話ができること

だろうか。側からみると

すごく変な奴だな、俺。


信じられないかもしれないがある日俺は

この能力に目覚めた。


一番最初に声が聞こえてきたのは

目覚まし時計だった。

目覚まし時計の声が聞こえるなんて

ありえないと思うだろうがマジなんです。



俺は朝が苦手だ。だから目覚まし時計

ごときでは起きないことが多い。

いつもならいつまでも鳴り続ける

目覚まし時計の音がうるさくて

母親が


『いい加減にしなさい‼︎

さっさと起きろ‼︎ やかましい‼︎』


と言って俺を起こしにくる。


だが、


この日、俺は母ではなく、

目覚まし時計に起こされたのだ。


そう、あれは、中学三年夏の朝。

俺の能力は唐突に目覚めた。



ジリリリリリリリリリリリリリリ。

目覚まし時計が唸りを上げる。


唸りやがれ‼︎ 目覚まし時計‼︎


俺の使っている目覚まし時計はかなり古い。

俺の父親も昔こいつに起こされていたらしい。

それくらい長く使っている目覚まし時計だ。

黒いやつね。ベルのあれ。すげー古いタイプ。


ジリリリリリリリリリリリリリリ。

うーん、意識的にはなんとなく

聞こえる。しかし、起きられない。

それがいつものモーニング。



何度も言うようだが

ぐっすり眠っていた俺を

起こしたのは母親ではなく、

目覚まし時計だった。

目覚まし時計に起こされるのは

普通なら当たり前のことだろう。しかし、

俺にそれは当てはまらない。

俺に当たり前なんて通用しないのさ。

どれくらい通用しないかと言うと

冒険を始めたばかりの冒険者の

攻撃がキングでメタルなスライムに

通じないくらい通用しない。

もし、奇跡が起きて倒せたら

どんくらいレベルあがるのだろうか。

少しきになるな。って前置き長いわ。

俺が起きたのはたしかに目覚まし時計に

よってだ。しかし、


目覚まし時計の音により起きたわけじゃない。

目覚まし時計の声で起きたのだ。



『おい、いい加減に起きろよ。俺を

鳴りっぱなしにするんだよ。あれだよ?

夏のセミだって一生鳴き続けることは

ないだろ? 死んじゃうんだよ?

一週間くらいで。あいつらマジ儚いよな。

なにをしに地上にでてきたの?

ミーミーミーミーうるせぇんだよ‼︎

とにかくよ。セミと同様、

これ以上なったら俺も死んじゃうよ?

結構年配なんだから少しくらい

労ってくんない? お前の親父は

目覚めよかったな。俺がなった瞬間に目覚めたよ。あいつは瞬間に生きていたわ。

それに比べてお前はなんなんだ。どんだけ

起きないの? なんなの? 死んでるの?

いや、むしろこっちが死にそうだわ。

目覚まし時計だからって過労死させて

いいわけじゃねぇんだぞ?

労働基準法くらい守れよ‼︎

目覚まし時計界では5コール以内に起きてもらうのが常識だからね、うん。だからさ。

いい加減オキロヤァアァァアア‼︎‼︎‼︎』



「え⁉︎ な、え⁉︎ なになに⁉︎」


だれだ⁉︎

今の声は⁉︎


驚きのあまり、てかあまりにうるさい声が

頭に響いて俺は目覚めた。

部屋中を見渡しても誰もいない。

あれ? おかしいな。今、男の声が

聞こえたぞ。母さんではなく男の声。

父さんでもないよな。だって単身赴任中だし。


「気のせい? それとも夢?」

『夢じゃない。俺だ』


「は?」


声のする方を見るとそこには目覚まし時計が

あった。

待て。待つんだ。俺。考えろ。

目覚まし時計が喋るか?

答えはNo。喋るはずがない。

だったら、今の声は? いったい。


『無視するなよお前。俺だ。

目覚まし時計だよ』


「これは夢だな」


だってありえない。

ファンタジーかよ。

目覚まし時計が喋る世界なんて

この世界に存在しない。

強いて言えば子供チャ⚪︎ンジの

コラ⚪︎ョの目覚まし時計はくそ

うるせぇ声だして使用者を毎朝

不快にしつつもきちんと起こしてくれる

という伝説を聞いたことはあるが。

夢なら早く覚めてくれ。

もしこいつの話に耳を傾けたり

ましてや俺が何か答えて会話を

成立させてしまったらなんか

負けなきがする。人として。


『夢っていうのは寝ているときに見るものさ。

いわゆるジャム睡眠な』


「・・・・・・」


ジャムじゃねぇよ。レムだよ。

なんでジャムだよ。べったべたじゃねぇか。

そんな睡眠まっぴらごめんだわ。

気持ち悪りぃよ。


『だがお前は目覚めた。そう、この俺、

目覚まし時計によって‼︎ いつもいつもお前は

俺の音では起きなかった。それじゃあよ、

俺はなんのために鳴ってるんだ? 意味ねぇだろ‼︎ ただジリリリリなっているだけの存在なんてなんにも価値がない‼︎ だからお前を起こすために俺は何をすべきか、どうするべきか考えた、だが、所詮俺は目覚まし時計さ。動くことも話すこともできない、だから俺はお前の心に訴え続けた。起きろ、起きろ、起きろ‼︎ 起きろ‼︎

死ね。とな』


「・・・・・・」


最後のちょっと待てや‼︎

なんで目覚まし時計に死ね思われなきゃ

ならん‼︎


『死ね。死ね。死ね。死ね。それをずっと

願い続けてきた。あ、間違えた。

起きろだった』


「本心死ねしか思ってねぇじゃねぇか‼︎」


しまったぁぁあ‼︎ 返答してしまった‼︎

このくされ目覚まし時計が‼︎

人間様に死ねだと⁉︎

思わず口開いちまったよ‼︎


『そして今日、俺の思いは届いた、

貴様は死んだ‼︎ ハッハッハ‼︎』


「ピンピンしてますけど⁉︎」


『あっ、間違えた。

お前は俺によって目覚めた‼︎

ハッハッハ‼︎ 俺の勝ちだぁぁあああ‼︎‼︎‼︎‼︎』


どんな間違いだよ‼︎ さっきから

くそウゼェな‼︎この目覚まし時計‼︎

つーかほんとなんで声が聞こえて来るんだ⁉︎


あれ? 声が遅れて聞こえて・・・・・・

はこないが普通に目覚まし時計の声が

聞こえてくるよ。


どうやらこれは本当に現実らしい。

ほっぺをつねろうがほっぺを殴ろうが

ガムテープをすねにはりガムテープを

思い切り引っ張ってすね毛を引き抜き

まくろうがまったく目覚めない。

すね超痛ぇ。


これが現実だというのは受け入れた。

だが待て。なんで目覚まし時計の声が

聞こえる? おかしくない?


『今お前が考えてること当ててやろうか?』


まさかコイツ。俺の心も読めるというのか?

目覚まし時計のくせに。


『お前が考えていること。それは朝起きたばかりの口ってなんでこんなに臭いんだろう。特に俺の口ってくっさ‼︎ だろ?』

「そんなこと微塵も考えてねぇよ‼︎」


え? なに? 俺の口ってそんなに臭いの?

どれどれと口に両手をあて、

ハァ〜と息を吐いてみた。


「くっさ‼︎ 俺の口くっさ‼︎」


なにこれ⁉︎ 寝起きの口やべぇ‼︎

って、


「そんなことはどうでもいいわ‼︎」


『いやお前な。歯磨けよ。エチケットだろ?』

「目覚まし時計に言われることじゃねぇな‼︎」


たしかに歯磨きはエチケットだ。つーか、

普段してるわちゃんと。俺の口が臭いのは

寝起きだけだわ。たぶん。なんか心配だから

歯磨き粉もっと匂いするやつにしよ。


「俺が考えてたのはそんなことじゃない‼︎

なんで目覚まし時計が俺に話しかけてくるんだ‼︎」

『そっちか』

「普通に驚きだろ‼︎ そっちのほうが‼︎」

『不思議発見‼︎』

「うるせぇな‼︎」


バン‼︎

突然俺の部屋の扉が開いた。


「うるさいのはあんたよ‼︎ 朝からなに一人で騒いでるのよ‼︎ バカなの⁉︎」


扉を開けたのは母さんだった。どうやら、

俺の声がうるさかったらしい。

しょうがないじゃん。えなり君ぽく言うなら

だって、しょうがないじゃないか〜。


「母さん大変だ‼︎ 目覚まし時計が‼︎ 目覚まし時計が話し始めた‼︎」

「あんたね。夢は寝てみるものよ? なに? 幻聴? 薬でもやってるの? あんた。警察く?」

「実の子供にとんでもねぇこと言ってんじゃねぇよ‼︎」

「だったら目覚まし時計が喋るなんてバカ言うんじゃないよ。成績もバカなのにあんた、頭まで本当にイカれたら生きる価値あんの? 母親として息子の将来が心配だよ。ポイしたくなるよ」

「あんたそれでも母親か‼︎」

「親に向かってあんたとはなんだい‼︎」


バチーンと思いっきり右ほほをビンタされた。

目覚ましビンタ‼︎ いや、すでに起きているので

ただのビンタ‼︎


「なんか理不尽‼︎」


これが母親の力か。


「いいからとっとと着替えて下に降りて来なさい」

「ふぁ、ふぁ〜い」


右ほほが、じんじん、ビリビリ、

ヒリヒリする、痛いよぉ。心もそれとなく

痛いよぉ。


『ドンマイ』

「お前が元凶じゃねぇか‼︎」


俺は目覚まし時計を掴み取り思い切り

投げてやった。

なんか、少しスッキリ‼︎



これが、俺の能力が目覚めた朝だ。

すごくかっこ悪い目覚めた方だな。

なんの前触れも脈絡もなくふと勝手に

目覚まし時計の声が聞こえてくるなんて

まったく、どうかしてる。


ちなみに、目覚まし時計には今でもお世話に

なっている。最近の俺の目覚めはすべて

目覚まし時計の声によるものだ。この声、

頭の中に直接響くような感じなので

怒鳴ったりしてくるとすっごいうるさい。

騒音だよ。ご近所迷惑だよ。

ご近所には聞こえないけど。


そして高校二年生になった今、俺の

能力はただ物の声や感情が伝わってくる

ものではないのだということが判明した。

どうやら、その物との親密度、好感度が

ある程度なければ聞こえてこないらしい。

よーするに新品のものでは

声は聞こえてこず、ある程度使い古した

ものでなければ声は聞こえてこない。


物の好感度あげるってなんだかまったく

意味がないように感じる。

いやそもそも、好き好んで好感度を

あげるのではなく使っていくうちに

勝手に話出すなんてマジ無意味。

回避不可能。コスト的なのことを

考慮するとね。ほんと人生の中でなんも

生かされない力だ。恋愛とかにも

とくに生かされてないな。

相手がもののせいで。

むしろ、ギャルゲーの方が恋愛に

生かされる気がする。

つまり、ギャルゲーは俺のバイブル。

どうしようもねぇな。俺。


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