プロローグ
少女がいた。
まっすぐストレートに伸びた黒髪。風になびいて、さらさらと揺れる髪は俺の目を奪う。
儚げで、美しくて、どこか孤独なヒト。
『ねぇ』
彼女はその美しい見た目にあう、繊細で綺麗な声で問いかけた。
『…何?』
俺はゆっくりと言葉を一つずつ、間違えないよう噛みしめて言う。
少しでも何かを間違えてしまうと、彼女は消えてしまいそうで。
俺の手からするりと抜けてしまいそうで。
何故そんなことを思うのか、何を間違えるのか。
分からない。でも、そう思ったのだ。
『…幸せ?』
彼女はゆっくりと尋ねる。
俺を見つめる彼女の目に吸い込まれそうになった。
『あぁ…幸せだ。』
だって、今は君が居るから。
君が居れば俺のこのぽっかり空いた心の穴は埋まるから。
君じゃなきゃこの穴は埋められないから。だから、だから……
俺は彼女がこれから何をするのか、分かっていた。
そして俺はそんなことをして欲しくないと思ってしまうのだ。
だって"ソレ"をすれば君は……
『そっか。』
彼女はそういって、少し嬉しそうに、少し寂しそうに笑う。
わずかに濡れた彼女の瞳が綺麗で。
その泣きそうな彼女を慰めたくて。
ただ何も言わずに抱きしめたくて。
でもそんなことは俺にはもう、出来ないのだ。
『………あのね、』
彼女はゆっくりと、俺が聞きたくない言葉を言おうとしていた。
ここまでお読みくださりありがとうございます!!
すぐに第1話を投稿する予定なので、もしよろしければ、そちらも宜しくお願いします*