四十三回目 戦闘
棒を握りしめ、体勢を低くし、とりあえず目の前の集団で一番前にいた男に狙いを絞る。
今まで追い回していた獲物が急に自分たちに対して向かってきたものだから、相手は慌てて迎え撃とうと自分の武器を構えようとする。
しかし、そんな絶好の隙を見逃すほど、俺は優しくない。
むしろ意地悪だ。
「フッ・・・!」
突貫した勢いのまま棒を突き出し、相手の鳩尾のあたりに突きを放つ。
棒が相手に触れた瞬間、
ドンっ!!
「げぼらぇ!?」
という轟音と悲鳴と共に、すぐ後ろにいた数名を巻き込んで男は後方に吹き飛んでいく。
一瞬、目の前の光景が信じられず、固まってしまう男たち。
その顔のどれもが口を開け、ポカーンとしている。
そんな男たちの姿を見て、俺は、これは楽勝だなと考える。
もし、一人でも猛者がいれば、瞬時に体勢を立て直し指示を出して反撃にうつるだろう。こちらはいくら強くてもたった一人なのだから。
数の利点を活かさない時点で、ここにいる男たちの程度が知れる。
ここまで考えて1秒と経っていない。
瞬時に間を詰め、二撃目を放つ。
ブンっ!!
「「「「うぼめげぁ!?」」」」
横なぎに力いっぱい棒を振れば、今度は約10人ほどがまとめて吹き飛んだ。
「・・・・・・歯応えがなさすぎる」
思わずボソっとつぶやく。
『そもそも、我が主に敵う者が少なすぎるのじゃ』
それはつまらん!
でも、ベルードあたりは強そうだけど?
『あやつは、バイアスと同じかそれ以上じゃろ。バイアスも以前そんなことを言っておった』
じゃぁ、かなり強いな。しかもクソ親父以上か・・・。
「・・・・・・それは少し楽しめるかも、な・・・」
少し興奮するなぁ~。すこし試合してみたいなぁ~。
『じゃがまぁとりあえず、今は目の前のこやつらを早々に片付けねば』
いやいや、一応俺、囮なんだから早々に片付けたらいけんでしょ!
『そういえばそうじゃったな』
そういって苦笑いをする朱雀。
でも朱雀の言うとおり、早々に終わっちゃいそうなんだよなぁ・・・。
・・・・・・リュノアさんに怒られるかも・・・。
「まぁ、せいぜい囮らしく・・・」
呆然としたまま俺を見やる男たちに、獰猛に笑いかけながら、
「盛大に暴れてやりますかっ!!」
俺は目の前の獲物たちに喰らいかかった。