四十回目 近衛魔術師団
息切れが・・・!?
・・・・・・燃え尽きたぜ・・・真っ白に・・・。
あのあと、リュノアさんからありがたぁ~いお説教・・・もとい、お話を正座のまま二時間ほど頂いたライハです。
・・・いや、凄かったよ? 何がって?
・・・・・・リュノアさんに決まってるじゃないですかっっ!!
最初は小言から始まり、説教・説法に続き、普段の生活態度、習慣へと繋がり、最後には泣き落としへと収まるという王道ハメコンボ!
後ろの方で、アトスが「姉さんの説教・・・久々に見たな・・・」と呟いているのが全てを物語っている気がする。その後、過去の何かを刺激されたのか、ぶつぶつと独り言を言いつつ、どこかの世界に旅立ってしまった。
おーい、帰ってこぉ~い。
『あれは無理じゃろうな』
お、いつの間に戻ってきた? 朱雀さんや。
『真に怖ろしいは女子じゃの』
ホント、そのとおりだと思いますよ。ははは。
「じゃあ、場も温まってきたようだし、今後のことについて話し合うかね」
そして、絶妙のタイミングでベルードが口をはさみ、話を誘導し、今後のことについて話をすることになった。
覚えてろよ、ベルード!
説教が終わったのを見計らって話を切り出したお前を、俺は恨むからな! お前がリュノアさんの説教が始まった途端、シェーレさんやキトくんの近くに避難したのを俺は知っているんだからなっ!!
俺の恨みの念が届いたのか、ベルードが一度こちらに視線を寄越し、やってみなと言わんばかりにニヤリと笑いやがった!
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「まず、現状確認だが、今回の件はここの孤児院が、ルーザゴ・デタブに目をつけられていることが原因だ」
そこでベルードはちらりとシェーレさんとキト君を見やり、一呼吸おく。
「なぜ、ルーザゴ・デタブが孤児院に目をつけたのかは、あとで確認するとして、一番の問題はヤツが自分でも言っていたとおり、『並みの貴族ではない』ということだ」
「並みの貴族ではないとは、どういうことでしょうか?」
ベルードの言い回しに引っ掛かったのか、アトスが聞き返す。
「今言ったとおりだ。アトスも近衛に所属するから分かるかと思うが、ヤツは『譜代貴族』と俗に呼ばれる貴族だ」
「・・・それは、なんともやっかいですね・・・」
リュノアさんがベルードの説明に眉をしかめる。
あぁ! 顔をしかめたリュノアさんも素敵です!
『・・・アホじゃ・・・アホがおる・・・』
朱雀から諦めたような声が聞こえたけど、たぶん気のせいだろう。
「『譜代貴族』、てなんですか?」
キトくんが素朴な疑問をする。
ナイスだキトくん! 俺もそう思ってたんだよ!
「『譜代貴族』というのは、王国が建国される以前から王家に仕えていた家来の子孫たちのことだ。ほかに王国建国時に取り立てられたり、王国に仕えるようになった『外様貴族』。王家の兄弟筋や親族たちの『親族衆』と呼ばれる貴族などがある。『親族衆』が貴族たちの中で一番家格が上で、その次に『譜代』、『外様』と続いていく」
へぇー・・・知らなかったなぁ・・・。
朱雀は知ってたか?
『我らは、もともと俗世に興味がないからのぉ。知らなんだ』
ですよねぇ~・・・。
「さらに言えば、ルーザゴ・デタブのデタブ家は譜代の貴族の中でも最近勢いをつけてきている家だ。その点においても、やっかいな人物と言わざるを得ない」
ベルードの話を聞いて、シェーレさんとキトくんの顔がどんどん曇っていく。
「・・・が、しかし、だ」
そう言うとベルードはシェーレさんとキトくんを見て、ニヤリと笑う。
シェーレさんとキトくんも、いつの間にか俯いていた顔を上げ、ベルードを見る。
「ここに、その『譜代貴族』をなんとかできる存在がいる」
いつの間にかベルードの近くにいた、リュノアさんとアトスがベルードの左右に並ぶ。
日の光を浴びて、その存在を誇るかのように輝く紋章を胸につけて。
「それが我々『近衛魔術師団』だ」
そう言ってニヤリと笑うベルードが、このうえなく、頼もしく感じられた。
渋いっすよ、ベルードさん!!