三十二回目 不穏な気配
お待たせいたしました
朝、日がやっと昇ってきた頃、いつもの習慣で目を覚ました俺は、ぐっすりと寝ているアトスを尻目に、宿屋から出て、ベルハイの街をジョギングがてら見て回っていた。
バイアスと二人で暮らしていたときも、こうして早朝に起きて鍛錬の前によく森の中を走り回っていたっけ。
そういえば、起きたときベルードの姿が見えなかったけど、どこにいったんだろう・・・。
まさか、昨日宿の食堂で分かれてから、違う場所で飲み明かしているのだろうか?
いい大人がけしからん!
でも、ベルードなら、なんとなく納得しちゃうな。
それはさておき、大きな街だ。
街の外周を囲むように外壁がそりたっている。その壁のデカイことデカイこと!
ゆうに、10m以上はあるじゃないだろうか。ビルにして2階くらいの高さがあるぞ。
それに、色んな種族がいる。
まだ日も昇りきっていないせいもあるけど、それにしたって、ちらほらとエルフやドワーフと言った『亜人族』や竜人・魔人と言った『魔族』が、店の準備やどこかに出掛ける様子が見て取れる。
あ、エルフって本当に耳の先が尖ってるんだ! あと長い!
竜人発見! 見た目まんま人間じゃん!!
でも、よく見ると鱗っぽいのが所々にある!
あれ、猫耳!?
亜人族に分類される、通称『獣人』ってヤツか!
こうして走っている途中、目にする種族それぞれに、イチイチ反応してしまい、興奮が治まらない。
俺もこうやってはしゃいでしまうあたり、まだまだ子どもだな。
『今頃分かるとは、そこが我が主が子どもたる所以じゃよ』
『良いんだよ、俺は。なんてったって、まだ13歳だからな』
朱雀がここぞとばかりに茶化してくる。
まったく、急に話しかけてきたと思ったら、コレだよ。
『13歳とは言っても、この世界に生を受けてからの年齢じゃろう? 実際は、もっと歳を取っておるくせにのぉ』
ぐはっ!?
相変わらず、痛いところをツッコンできやがる。
『・・・別にはしゃいだって構わないだろ。あっちに居たときだって、せいぜい17歳くらいだったんだから』
『それでも、合計すると30歳にはなるではないか。まったく我が主はいつまで経っても子どもじゃのぉ』
・・・こいつ言わせておけば、馬鹿にしやがって・・・!
『・・・お前、いつもいつもそうやって人を馬鹿にしやがって、なにが楽しいん・・・っ!?』
『それは我が主の・・・ほう、これは剣呑じゃのぉ』
あまりよくない気配を感じ取り、足を止める(ちなみに、この会話の間中ずっと走っていた)。
足を止めてじっくりと気配を感じる。
そう遠くないところで、誰かが争っているような気配がする。
しかもこれは・・・。
『・・・殺気が混じってるな・・・』
『なんとまぁ、呆れてものも言えんのぉ。こんな街中で、しかも早朝から、こんな物騒な気配を放つなど・・・阿呆じゃな』
呆れるところではない気もするけど・・・。
でもこれ、放っておくとかなりマズイな。
『朱雀』
『・・・我が主も阿呆じゃな。自分から厄介ごとに首を突っ込むのじゃから』
苦笑している朱雀の気配が思考念話ごしに伝わってくる。
『阿呆で結構! こんな気配を知った以上、見過ごしたら後味が悪くて、夜も寝れなくなる』
『仕方ないのぉ。まぁ付きおうてやるわい』
『それでこそ、俺の相棒!』
『・・・まったく、こんなときだけ調子が良いのじゃから・・・』
思考念話ごしに朱雀が照れているのをなんとなく感じ取りながら、俺は気配がするほうに、ジョキングのときより数段ギアを上げたスピードで近づいていくのだった。
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