三十一・五回目
長らく間をあけてすみません。
~~~ベルード視点~~~
部屋に戻るライハの背中を見送り、完全に見えなくなってから、手に持っていた酒を一気に口に流し込んだ。
まったく・・・こちらの興味が尽きないヤツだ。
今でこそ、こうして酒をかっくらって平静にしていられるが、あのとき、アトスの魔法を、ヤツが持っている『棒』で打ち返したときなんざ、正直呆れて笑いが止まらかった位だ。
ヤツの親父-――バイアスからの事前に寄越された便りで、ある程度のことは知っていたが、あそこまで常識外だとは思っていなかった。
まぁ、バイアスが育てたヤツだ。それなりに面白いヤツなんだろう、と考えてはいたが、まさか魔法を打ち返すなんざ誰が予想する?
ハッキリ言って、この国の―――いや全魔術師の常識を覆したと言ってもいいだろう。それほどのことをヤツはやってのけたのだから。
しかも、それを当の本人がまったく自覚していない。なんだこのアンバランスさは!
バイアスにも困ったものだ。もう少し世の中のことを教えておいてほしかったものだ。まぁ、アイツが親というじてんで仕方のないことではあるが・・・。
アイツのことに考えが至ったところで、カウンターの向こうにいるマスターに酒を追加を頼む。
追加の酒が手元にきたところで、アイツについて考えを再開する。
アイツも、急に近衛魔術師団を抜けると言って辞めて出て行ってから、なんの音沙汰もなかったくせに、急に今頃になって便りを寄越しやがって・・・。その癖、『俺の息子に世間を見せてやってほしい』なんてガラにもないこと頼みやがって!
以前のアイツだったら、絶対言わなかったことだな。
これにしたって、十分面白いことではあるが・・・。
でも、まさか、アイツがな・・・。
年は取りたくないものだ。
俺もさっさと隠退でも考えるか・・・。
でも、アイツがさっさと辞めたせいで俺が今の役職に就いているわけだから、半分はアイツのせいなんだが・・・。
フフフ・・・なんだ、この言いようのない殺意は・・・。
とりあえず、今日は飲み明かしてやる・・・フフ。
つなぎです。
ベルードさんは黒くて、世の中を面白いかそうでないかで判断する人です。
でも基本黒いです。