二十九回目 邪な考えとシスコン
説明会のつもりがシスコンに・・・。
シスコン、恐るべし!
巨大な外壁の門をベルードたちの顔パスで無事通った(門番さんはすごく畏まっていたが)俺たち一行は、寄り道もせずに宿屋へと足を運び、本日の寝床を確保した。
連日の野宿と長旅に疲労が溜まっていたのもあるが、アトスの体力が限界に達していたのと、一刻も早く宿で湯浴みをしたいリュノアさんの主張が、見事に一致したからとも言えた。
とりあえず、リュノアさんの個室を1部屋と、男3人野郎ども用の4人部屋を1部屋取り、夕食の時間までは、それぞれの自由時間として一時解散となった。
リュノアさんは早速、宿屋の女将さんに湯浴みの準備をしてくれるよう話して部屋に入り、アトスはフラフラとおぼつかない足取りで、なんとか部屋のベットまで辿りつい―――たと思うまもなくベットに倒れこんだ。
ベルードは、ベットに倒れこんだアトスに毛布をかけてやると、外套や鎧を外し、いっぱいひっかけてくると言って、部屋をあとにした。
そして俺はと言うと、ベットに倒れこむ屍となったアトスを横目に、ベットに横になり、一時の休息を取っていた。
野宿も嫌いではないけど、やっぱり硬い地面より、ベットの方が横になったときの疲れの取れ具合が違う。
「あ~・・・久しぶりのベットはイイなぁ~・・・」
ついつい、オヤジくさい発言もしてしまう。
それにしても、アトスは隣で死んだ屍のようになってるし、リュノアさんは部屋で湯浴み。ベルードはどこかで一杯飲んでいる・・・。
「・・・覗くか」
誰を、とは言わずもがな。
それは、ほんの少しの、邪な感情。
その感情におされるように、横たえていた体を起こす。
そして、ベットから立ち上がろうとして―――またベットに横になった。
再びベットに横たわりながら、ちらっと隣の屍を見る。
ベットから起きだそうとした瞬間、凄まじい殺気を感じ、マズイと思った俺は、すぐにまたベットに戻ったわけだ。
隣では、倒れこんだときと同じように、アトスが死んだように眠っているだけ。
リュノアさんへの俺の邪念を察知し、俺を攻撃しようとするなんて・・・しかも無意識で。
なんてシスコンだ!!
俺は、仕方ないと諦め、意識を切り替えて邪念を意識の外へと追いやり、もう一度ベットから立ち上がる。
今度は、夕食前に食べ物をつまもうと思ったからだ。
意識を切り替えた途端、小腹が空いているのを自覚するなんて、よっぽど疲れているのか・・・。
まぁ、今までクソ親父としか一緒に過ごしたことがないから、いきなり見知らぬ人間―――しかも初対面―――と一緒に何日もいたから、変に緊張していたのかもしれない。
夕食までベットで横になって休むかとも思ったが、それよりも、この腹を空かした状態でいる方が精神的に良くない。
そうなると善は急げと言うし、なにか食べるものを探しに行こう。
そう考えた俺は、アトスの方をもう一度見やり、少し肌蹴ていた毛布をかけなおして、部屋をあとにした。
次回は、なるべく早く更新したいと思います。