二十七回 野宿
今回はダベリです。
その後、俺はアトスと結束を確認しつつ、二人の目的であり、結束を結ぶに至った原因でもある、
「親父をぶっ殺す」
という目標をいかに達成するか、また、いかにリュノアさんを悲しませずに実行するか、などを話し合いながら、迎えにきた3人が所属する王国に向かっていた。
そういえば、歩いている間、ベルードは終始楽しそうに、リュノアさんは困ったような顔をしながら、一緒に歩いていた気がする。
そうこうする内、すっかり日も暮れ、王国まであと半分位に差し掛かったところで、今日はこれ以上移動せず、野宿をする運びとなった。
適度に開けた場所で大きな岩を背にするような形で、簡易式のテントのようなものを張り寝床をつくる。俺とリュノアさんで寝床を作っている間、ベルードとアトスが辺りを散策し、今夜の焚き木に使えそうな枝などを拾ってきた。
それらが終わるころにはすっかり辺りも暗くなっており、俺とリュノアさんが作ったテントの目の前で火を焚き、すぐに食事となった。
食事はリュノアさんが、野営食と俺を迎えに来るまでの間に狩った動物の肉や植物を混ぜて、芋煮のようなスープを作ってくれた。
「よし。じゃあ、食べるか」
リュノアさんが全員にスープをよそい、いきわたったのをみてベルードが音頭を取る。
「あまりおいしくないかもしれませんけど・・・いっぱい食べて下さいね?」
リュノアさんが少し申し訳なさそうに話す。
「「いえ、全力で食べます!!」」
そんなリュノアさんを心配させまいと、気合の籠った声で返事をする俺とアトス。
俺たち二人の返事に一瞬キョトンとしたリュノアさんは、そのあとクスクスと笑いながら、
「じゃあ、全部食べてね」
「「もちろんです!!」」
「・・・おい、そこのバカ二人。俺の分も残しておけよ」
俺たち二人がリュノアさんに返事をするのを横目に見ながら、ベルードが呆れたように溜息をついた。
そうして、なごやかに食事も進み、俺とアトスの宣言通りスープが無くなったところで、俺はベルードに話しかけた。
「なぁ、ベルード。あと何日位で目的地に着くんだ?」
焚き火を挟んで俺の向かいにアトスとリュノアさんが並んで座り、俺の隣にベルード座っていた。
「あと、2~3日と行ったところだ。そうすればまず街に着く。そこから徒歩で1日で王国の王都に着く」
「じゃあ、目的地は王都なのか?」
「そうだ。とりあえず王都に行って色々と用事をこなしてもらうつもりだ」
「用事?」
「それは行ってから教える。今教えたら面白くないからな」
ベルードはそこで俺を見ながら、ニヤっと笑った。
「・・・なんか、あまり良い予感がしないんだけど・・・」
「ん? 気のせいだ、気のせい」
「いや、気のせいじゃないと思うぞ、ライハ」
「そうよ。隊長がそういう顔をするときは、とんでもなく面倒なことがあるときなんだから」
俺のよくない予感に、向かいに座っていたアトスとリュノアさんが話に加わってきた。
「俺もその隊長の顔に、何度煮え湯を飲まされたか・・・」
「・・・アトス、お前、苦労してるんだな・・・」
渋い顔をしたアトスに、俺は激しく同情した。苦労してるんだな、こいつも。
「そういえば、ライハくんは王都は初めて?」
そんな弟をみて慌ててリュノアさんが話題を変えようと俺に話を振ってきた。
「そうですね、王都は初めてです。というか街ですら初めてで、少し楽しみにしているんです」
ん? なんでリュノアさんには敬語かって?
それは、相手が綺麗なお姉さんだからに決まってるじゃないか!
「じゃあ、あまりの大きさと人の多さにビックリするかもね」
「そんなに大きいんですか?」
「そりゃあお前、なんてったって王国の王都だぞ? 大きいに決まってるじゃないか」
アトスが呆れたように俺に言ってきた。
黙れ! 俺はリュノアさんと話していたんだ! 邪魔するな!
「・・・・・・迷子になるなよ」
ボソっとベルード。
「なるかっ!!」
バカにしているのかこいつは!?
「怒らないでライハくん。真面目な話、あまりに広くて大きいから、初めてくる人たちの3割くらいは必ず迷子になるの。だから一応隊長の言うことも頭の隅に入れておいてね」
つい反射的にベルードに突っ込んだ俺に、リュノアさんが優しく諭すように話す。
リュノアさんの話を聞いて、そんなに広いもんかと頭をひねっていた俺だが、以前の世界の都市よりも大きくはないだろうと考えた。
のちにそれが、大きな誤りだと、このときの俺はまったく考えもしていなかった。