二十六回目 一つの真相と不滅の友情
まぁ~よくあるシスコン君です。
アトスが言葉にならない叫びをあげている間、ベルードによる事情説明があった。
曰く、あの親父は、昔ベルードと同期で同じ隊に所属していた。
曰く、あの親父は、かなりの問題児で、よくベルードと一緒に悪さをしていた。
曰く、あのクソ親父は、問題児ではあるが、とても優秀な魔術師だった。
曰く、あのクソ親父は、『二つ名』が付いた位の魔術師だった。
曰く、そんなクソ親父は、面倒見が良く、後輩や部下からとても慕われていた。
曰く、そんなクソ親父の後輩だったリュノアさんは、よく親父に面倒を見てもらっていた。
曰く、そうこうする内に、リュノアさんは自然と親父に憧れを抱くようになった。
曰く、そんなクソ親父に、リュノアさんの気持ちが憧れから、好意へと移り変わり・・・。
「今の、この状態になるという訳だ」
そういってベルードが示した先には、顔を真っ赤にして無言でうつむいているリュノアさんがいた。
「まぁ、こんな状態だから、アトスのヤツもそれはそれはアイツのことを目の敵にしてなぁ」
そこで、いまだに叫び続けているアトスをちらっと見やり、
「いつもリュノアとバイアスが話しているのを苦々しく見ていたよ」
ベルードは当時のことを思い出したのか、面白そうに笑った。
「だから、アイツが突然近衛魔術師を辞めたと知った時は、それはもう踊りだすくらい喜んでいたんだが・・・」
そこで、ベルードは笑みを苦笑いに変え、
「姉のリュノアがアイツが辞めてから日に日に落ち込んでいって・・今のように元に戻るまで、かなり時間がかかったんだ」
「・・・」
「だから、元々アイツを目の敵にしていたアトスは、アイツのせいで落ち込んだ姉を見て、余計にアイツを嫌いになった」
ベルードは俺を見て、意地悪くニヤっと笑い
「そんな訳で、今回の決闘は、いわゆるとばっちりだ」
そこまで。茫然とベルードの話を聞いていた俺は、
「・・・・・・」
ニヤニヤ笑っているベルードを見て、
次に、真っ赤になりながら申し訳なさそうに俺を見るリュノアさんを見て、
最後に、いつの間にか地面に両手を付き、男泣きをしているアトスを見る。、
「・・・・・・」
アトスに近づき、そっと手を差し出す。
アトスは俺の気配に気が付き、顔をあげ、差し出された手て見やり、次に俺の顔を見る。
「・・・・・」
「・・・・・」
無言で見つめあう、俺とアトス。
互いの視線が交わる中、俺は確信した。
今、俺とアトスの意志が、一つになったことを!
「・・・あの野郎を・・・」
「・・・あのクソ親父を・・・」
ガシっ! と二人同時に互いの手を強く掴む。
俺はアトスを引っ張り起こす。
そして、どちらともなく宣言する。
「「殺っちまおう!!」」
後の世に言われる、ライハ・バーミアスとアトス・ネイトリンの不滅の友情は、こうして生まれたのだった。
同志というなの友情・・・