二十五回目 打ち砕く!
お待たせしました。
ベルードはあとに続く俺を気にもせず、まず呆けている二人のうちの一人、アトスに近づき、
「早く目を覚ませ、アホが」
ドゴッ!
どこからか出した短槍で思いっきり後頭部を殴る。
いや、いま、凄い音がしたよ、うん。
事実、アトスはいきなりの衝撃に殴られたままの格好で地面に口付けをしている。
「このバカは、放っておいてもいいとして・・・おいっ! リュノア! あれだけ弟にはちゃんとしつけをしておけと言っただろ!」
倒れているアトスを一瞥したと思うと、今度は少し離れたところで呆けていたリュノアさんを一喝する。
「いまのは・・・・・・はっ!? あ、その、ベルード隊長。弟には、わたしからキツく言っておきますので!」
ベルードの一喝され、呆けていたところから一転、急に頭を下げ謝りだすリュノアさん。
いや、あなたは悪くないですよ。むしろ悪いのは、そこで地面に倒れてるバカですから。
「そう言っていつも直らないだろうが! まったく、もう少し厳しくしても大丈夫なんだよ、こういううヤツは。とりあえず、こいつにもお前から謝っとけ」
そう言って手に持っていた短槍でアトスをぐりぐりを押しつつ、ベルードが俺の方を顎で示す。
「わかりました!」
ベルードに言われ、下げていた頭を上げたかと思うと小走りで俺の目の前まで近づいてきた。
そして、俺の目を真っ直ぐに見ながら、
「弟が迷惑をかけてごめんなさい!」
そういって、またもや思い切りよく俺に対して頭を下げてきた。
いや、いきなり頭を下げられても困るんですけど! ていうか、あなたは悪くないですから! 悪いのはあなたの弟ですから!
いきなり謝られ、内心テンパる俺。
「いや、あの、悪いのは弟くんですし、リュノアさんは悪くないですから。それに、俺も、悪ノリしてたっていうか・・・」
「でも、弟がライハくんに迷惑をかけたのは事実でしょ? 普段からよく人に突っかかるところがあるから。わたしも注意はしているんだけど・・・。それに、ライハくんは、バイアスさんの息子だっていうのに・・・」
意味のないことを話す俺に、なおも謝り続けるリュノアさん。
「だから、リュノアさんは悪くな―――」
まて、今、なにか変な単語がなかったか? そう―――『バイアスさんの息子だっていうのに』?
「―――親父のこと知っているんですか?」
「・・・・・・えっ、その、あの・・・」
そう聞いた途端、バッと下げていた頭を上げ、しどろもどろに慌てるリュノアさん。
いや、むしろ気のせいだろうか?
顔がほんのりと赤くなっている気が―――
「こいつは、バイアスに惚れているからな」
ベルードが爆弾を投下した。
リュノアさんは顔を真っ赤にした。
アトスがいきなり立ち上がり、支離滅裂に叫ぶ。
俺は、ハートを打ち砕かれた・・・。
次回、アトスが絡んでくる理由が明らかに!