十八回目 始めの一歩
ご無沙汰しておりました。更新となります。
俺は今森の中を歩いていた。
家の周りを囲むように形成されていた森。修行などでしか使わなかった為、漠然と「緑がワンサカある森」としか認識していなかったが、こうしてゆっくり歩きながら眺めていると、意外と静かで情緒ある森なんだと認識を改めさせられる。
・・・・・・まぁ、所々にある、変な穴や不可思議に巨大なクレーター、幹の途中から焼け焦げている大木、なにかに砕かれた岩などなど、目をつむるとしても、だが・・・。
「しかし、こうしてゆっくり歩いてると分かるけど、意外とこの森って広かったんだなぁ」
『修行のときには、分からないかもしれんかったが、一応あのバイアスが選んだ土地だからのぉ』
俺の独り言に、右肩に止まっていた朱雀が、嘴で羽を掃除しながら答えた。
「親父が選んだからって、ただの森だろ?」
『そんなことはない。隠棲する上で、人にあまり見つからず・寄り付かず・少々の騒ぎでも人に知られない為に選んだ森じゃ。それなりに魔術も仕掛けておるようじゃし、そこらへんの森とはまったく異なるじゃろうて』
「・・・それって、『森』というより、一種の『迷宮』だろ・・・」
ただの森を、なに好き勝手いじってチート使用にしてんだ、あのクソ親父は!
心の中で、改めて親父に対して毒づいていると
『・・・まぁ、あのバイアスじゃしな・・・。それより我が主。色々と話し込んでいる間に森の終わりが見えて来たぞ』
「お、もう森の端まで来てたのか」
朱雀に言われ、視線を前方に移すと、森の切れ目が見える。
そして、人影も。
「あれかな? 親父が言ってた元同僚ってのは。」
『じゃろうな。ただあまり歓迎しておらん輩もおるようじゃが・・・』
朱雀も羽の掃除をやめ、前方に見える人影を見つめる。
前方に見える人影は、三つ。
遠目で分かりづらいが、女が一人と男が二人。
敵意を放っているのは、その男たちの方の、背格好が俺と同じくらいのヤツだ。
「まぁ、初対面で恨まれる理由なんて・・・・・・」
なにか忘れてる気が・・・・・・
『・・・我らに、奴らを迷わせるように結界を張らせたじゃろう』
おぉ! そういえば、そんなことも!
「スッカリ忘れてた!」
『・・・威張るところではないぞ、主』
ナイスツッコミです、朱雀さん!
「忘れていたことは仕方ないから、とりあえず置いといて・・・」
『置くなっ!』
スパーンッ! と景気よく俺の頭を羽で叩く朱雀。
「とりあえず、なんか向こうの人たちも待ってるみたいだから、ちゃっちゃと行きますか!」
『そうじゃの』
俺は、三つの人影に向かって、足を速めた。
これが、俺の長い長い冒険の日々の、第一歩となった。
またもや新たに新キャラの予感。
次回、人影の正体?・・・となる予定。
ご感想お待ちしております。