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十七回目 涙の先に

遅くなってすみません。

 「・・・・・・さて、坊。そろそろ落ち着いたかのぉ?」


 しばらくして、玄武が俺が落ち着いてきたの見て、声をかけてきた。


 「・・・・・・あぁ」


 俺は必死に気持ちを落ち着かせながら、玄武に返事をする。


 「・・・まだ落ち着いたというには、少々足りないようじゃが・・・」


 まぁ大丈夫じゃろ、と呟くと、やっと意識を取り戻した親父にちらっと視線をやり、


 「坊も落ち着いてきたようだし、ちゃんと理由を話したらどうかのぉ。親父殿?」


 親父はまだ本調子でないのか、頭を軽く振りながら、


 「・・・いてぇ・・・」


 ・・・もう1回シバいたろか?

 にっこりスマイルも忘れずにプレゼント。


 『・・・のぅ、白虎よ。あの、清々しいほどの笑顔を見ると何故か寒気がするのは我の気のせいかの?』


 「・・・珍しいですね。馬鹿鳥と意見が合うなんて。私も身体に寒気が走りました。ですが・・・」


 『じゃが、なんじゃ?』


 「・・・そんな主様も素敵です」


 『・・・』


 「あぁ、その身の毛もよだつ寒々しい笑顔を私にお向けください!」


 『・・・おぬしとは、色々な意味で分かりあえん気がするぞ』


 「主様・・・」


 なんか、白虎が胸の前で両手を組み、息を荒くしているのは気のせいだろうか?


 まぁ、今はそんなことより、あのクソ親父(・・・・)だ。


 「思いっきり殴りやがって・・・この野郎ぉ・・・」


 親父は最後に首を左右に振り、息を整える。


 「まぁ、自業自得と言えんがのぉ。して、なにゆえに坊にあんなことを言ったのかのぉ?」

 

 親父は、玄武を一度見ると、意味ありげにこちらを見やり、


 「そろそろな、親のもとを離れる時期だと思ったんだよ」

 「それは、また急な話じゃのぉ」


 親父は玄武の言葉に手をひらひらと振りながら、

 

 「別に急な話でもねぇさ。前々から考えてはいたからよ。それが今日だったてぇだけだ」

 「・・・前々からのぉ・・・・・・」

 

 玄武は親父の言葉になにか思い至ったのか、なにかを考えるように目をつむり、


 「・・・それは最近来るようになった(やから)と、関係があるんじゃないかのぉ」

 「なっ!?」

 

 玄武の言葉に驚く俺をよそに、親父は楽しそうな顔を玄武にむけた。


 「さすが玄武。話が早くて助かるぜ」

 「そうすると色々な辻褄が合うからのぉ。これで合点がいったわい」

 

 お互いにドヤ顔で視線を交わす親父と玄武。

 

 「どういうことだよ!?」

 

 そんな二人に話の展開についていけない俺は、声を荒げて二人に詰問する。


 「あの、変な奴ら(・・・・)が、親父とどう関係あるんだよ!?」

 「それはのぉ坊・・・」

 「いや、そこから先は俺が話すぜ」


 玄武の声を遮り、俺に視線を向ける親父。

 その眼は、今までに見たことがあまりないほど、真摯な眼差しをしていた。


 「あいつらぁな、俺の元同僚だったヤツらだ。そして、俺が呼んだ」


 「っ!?」


 親父の言葉に驚く。

 最近、この辺りをうろついている奴らがいたのは、玄武や白虎、朱雀の話から知っていた。

 目的が分からず、また一応敵意も見られないことから、玄武たちに頼んで、この家が見つからないよう、結界のようなものを張ってもらっていた。

 そのお陰もあって、今だにこの家は見つかっていない。


 「なんで呼んだのか、分かってねぇ(つら)ぁしてるな。まぁ、なにも話してなかったからそれも当たりめぇなんだが・・・」


 「・・・・・・なんで、呼んだんだよ・・・」

 「そらぁな、お前が外に出ていく為だ」


 俺の疑問に、親父は真剣な表情で言葉を返す。


 「お前、俺がこうなってから・・・」

 そこでこつんと拳で椅子に座っている自分の足を叩き、

 「ずっと外に出ようとしねぇじゃねえか」


 「っ!? それはっ!」

 「もちろん、最低限外には出ているみてぇだが、それもほんの少しだ。買い物のときとかな。でも、1日以上家を空けたことがねぇ」

 

 親父の言葉に、俺はなにも言えない。


 「だから、あいつらを呼んだんだ。お前を外に出すために」


 親父が、自分からあまり離れようとしない俺を気にしていたのは、その雰囲気からうすうす感づいていはいた。だけど、こんなに考えていたなんて・・・。


 「ライハ」


 親父の呼ぶ声に、ハッと思考の渦から呼び戻され顔を上げる。


 「もういい。お前は十分苦しんだ」


 そこで、親父は真剣な顔から、ニカっといつもの笑顔を俺に向け、


 「お前のせい(・・)じゃねぇんだ、この足が動かなくなったのも・・・」


 なんだろう・・・。親父の言葉を聞いていると、段々視界がぼやけてくる。


 「だから、泣くな」


 そこで、自分が泣いていることに初めて気がついた。


 「そして、外に行って来い」


 ぼやける視界に、親父の笑顔が、涙に滲んだ。 

なんか、久しぶりに書いたら、かなりのシリアス展開に・・・。

自分でもビックリです。

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