↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンを探索すると、いろいろな事が分かるかも。(改訂版)  作者: 一 止


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/80

第72話  初のダンジョン攻略者として、思いを馳せる。(その2)

 ぼお~~と窓際に移る景色を見ていた雫斗では在るが、悠美に・・・いや、誰にも言っていない決意が有る。それはミーニャを故郷に返すという野望である、ミーニャを此の地球に召喚したのが、間接的にしろ雫斗達のせいなら元の世界へと送り返すのが正論と言うものだ。


 しかしその方法が分からない、いや察しは付いている。ダンジョンマネージャーであるキリドンテが、手違いだとはいえミーニャを此の地球に連れてきた張本人なのは間違いない。どうやら、雫斗の知らないところで面識は有る様なのだが、キリドンテがミーニャが彼の召喚した異物であると承知していない訳がない。それでもあえて何も言わない事に不自然を通り越して、違和感しか無い。


 しかも、ミーニャの話から推察すると、彼女の元いた世界情勢が彼等、もしくは彼女等に優しくは無いらしいのだ。その様な世界にミーニャを送り返す事は出来ない、かと言って返す手段が有るなら、返さないと言うのも変な話だ。


 其処で雫斗はミーニャの居た世界に事前に自分が赴いて、偵察ではないが自分の眼で見て判断しようと思っているのだ、当然一方通行では話にならない、この世界とミーニャの居た世界を行き来出来る様にしたうえでの話ではある。


 しかしキリドンテの二つのダンジョンのレベルでは意図的に異世界への転移を行う事は無理であると最初に言われたのだ。ではどうするのか・・・・・・答えは分かっている。


 他のダンジョンを制覇して、ダンジョンマスターと成る事なのだ、しかしキャサリンが管轄している九つのダンジョンを制覇した事で、その課題は克服できたのではないだろうか。


 キリドンテが雫斗達が破壊したダンジョンの修復に異世界の休眠しているダンジョンからマナをチョロまかして居たとの事なのだが、その休眠しているダンジョンが一体どれだけのマナを蓄えていたのか見当もつかない。


 その様な思惑の有る雫斗だからして、規模の大きな都心のダンジョンの攻略に後ろ向きになる訳が無いので有る、しかし母親には心配を掛けたくはない。ではどうするのか? ダンジョン庁長官の梶山さんの出方次第だと思っている雫斗。


 ”かなり押しの強い人らしいし、要請に仕方なく応じる体で話を持っていければ好都合だけど”と考えを巡らせている雫斗はどうやって都心のダンジョンに潜り込めるのかを考えていた。


 ダンジョン庁の施設を訪れた雫斗と母親の悠美は、職員に案内されて長官室に併設されている応接室に通された。室内に入ると、ダンジョン庁長官の梶山 嗣人その人がて迎えてくれた。待ち遠しかった人がやっと来たと言わんばかりの対応に雫斗は少し引いていたのは内緒だ。


 「やあ武那方さん。いや今は高崎でしたな、失敬。改めて高崎さんお久しぶりですね」とまるで芝居を打つ様に態とらしく名前を間違えた。


 「梶山さん、相変わらずですね。はい、お会い出来たのは久しぶりです、何度かダンジョン庁には足を運んでいるのですが、タイミングが悪いのか、いつもいらっしゃらなくて、お会いする事が叶いませんでした。私が斎賀村の村長と探索者協会支部長に就任して以来ですね」と悠美がにこやかに挨拶を返すと。


 「貧乏暇なしとまでは言わんが、なにぶん開庁して日の浅い庁舎でね、やる事は満載なのだが、なにぶんに人手が足りないのが現状だよ。特に君の離職は痛かった、今からでも復職を検討しては貰えんかね。いやマジで」とかつての部下であったからなのかかなり口が軽い、これでもこの庁の最高責任者である、威厳も何もあったものでは無い。


 「相変わらず口が軽いのですね、その口の軽さに騙されて何度も無理難題を押し付けられたのを思い出しました、でも何故でしょうねその全ての思い出が、良い思い出となっているのですから不思議です」そう言って笑顔で返す悠美。


 「喉元を過ぎればなんとやらでね、時間というスパイスは思い出という食材を美化する魔法の力があるのだろうね。ところでその子が雫斗くんかね? 中学二年生だと聞いていたのだが、・・・いや失敬。ウォホン、初めまして雫斗くん私はダンジョン庁長官をしている梶山 嗣人と言うものだ。君の活躍には驚かされているよ、スライムを簡単に倒せる方法を立案したことを初め、ダンジョンカードを使った接触収納を探し当てた挙げ句の果てに、保管倉庫と鑑定のスキルまで立て続けに発見するとは驚きを通り越して驚愕に値するね。それは日本のいや世界の探索者にとって掛け替えのない新たな一歩と言って良い。僭越では有るが探索者を代表して私から礼を言わせてくれたまえ。本当にありがとう」と言って身を乗り出して握手を求めてきた。


 かなり大げさな表現をする人だなと油断して居たのがいけなかった。軽い握手で済むと思っていたのに。両手で絡め捕られてしまったのだ。


 両の手で抱えられて身動きの取れない雫斗は隣の母親を顧みる、すると苦笑いを浮かべて首を振っている悠美の姿が。・・・どうやら呆れている様だ、かなりの人たらしの様で、人懐っこい性格と相手をいい気持ちに持ち上げる気づかいで、この人の為ならと奮起する人が多いのもうなずける気がした。


 「いえ。たまたま僕が見つける事が出来ただけで、運が良かっただけです。その事がこれ程の騒動になるとは思ってもみませんでした、このスキル自体は特殊でも何でもない物ですから、誰でも取得可能です。ですから僕は特別な事は何もしていません」と雫斗は取り敢えず無害を主張する、カードを利用した接触収納にしろ、保管倉庫、鑑定とどのスキルも誰でも取得は可能なのだ、スライムを倒せばいいだけなので別段難しくはない。


 しかし使いこなすとなると話は別だ、スキルの存在を発表してから約四カ月程には成るが、雫斗以上に上手に使いこなせている探索者がいないのが現状なのだ。


 「そろそろ会議室に案内してはいただけないでしょうか?」と悠美が笑いを堪えて言うと。「おお~~そうだった」と慌てて手を放して此方だと促す様に立ち上がる。


 後ろの方では秘書官なのだろうか、すまし顔で後を付いて行く、雫斗達も同行していくのだが、歩きながらも悠美との会話に華が咲いている様で、その光景を見ながら怖い人をイメージしていたのにとひそかに安堵した。


 案内された会議室で雫斗が攻略したダンジョンの使用について検討していたダンジョン庁の職員たちと、探索者協会からの出向者とのあいさつした後、議長の梶山長官の音頭で会議が始まった。


 ダンジョン庁の会議室で行われた話し合いでは、主に制覇済みの斎賀村と名古屋市内のダンジョンを、どの程度まで一般に解放するかで揉める事になった。


 日本に居る全ての探索者に無条件で解放した場合効率が悪くなるのは当然と言えた、探索者の多くは10階層を踏破出来ない中級以下の探索者なのだ、探索者全体の底上げが目的ならそれでも良いが、ダンジョンの攻略を目的とするならば、素質のある探索者を集中的に鍛えた方が目的を達成する早道だとダンジョン庁の首脳は考えている様だ。


 確かに、深層を探索して居る高レベルの探索者なら、時間を置かずにある程度までならダンジョンを攻略できるレベルまで身体能力を上げる事は叶うだろうけれど、雫斗には其れだけではダンジョンの攻略は厳しいと見ている、相性があるのだ。ダンジョンガーディアンとして存在している魔物とでは無い。ダンジョンとだ。


 ダンジョンに個性というか性格が有るのであればダンジョンを攻略出来るか否かはその人の人格に左右されると雫斗は思っている。自分が攻略出来たからでは無いが、どんなに戦闘能力が高くても、ダンジョンがその探索者を主と認めなければどんなに強くても無理なのだと朧気ながら思っていた。


 「やはり此処は、高レベルの探索者優先ではどうでしょうか? ダンジョンの攻略が急務である事は間違い無いですからその事を念頭において考えては如何ですか?」との発言に周りは同意している様だ。


 「しかし、探索者の裾野を広くしない事には後々人員不足と成りはしませんか? 幾ら高レベルの探索者でもダンジョン攻略は危険ですから。言ってはなんですが未帰還ともなれば大変な損失と成りかねません」と少数ではあるが、もっと慎重にしてはと遠回しに発言する人が居る、しかし急進派の意見の方が優勢のようだ。大方の意見が出揃ったところで、梶山さんが採決に入る。延々に議論を重ねても意味は無い、どのみちダンジョンの有効利用なんてやって見なくては分からないのだから、方針を早めに決めて事を進めてしまった方が後々の為になる。


 取り敢えずは、名古屋ダンジョンは一般に開放して、探索者のレベルの底上げを主体とする事とし、雑賀村のダンジョンを深層探索者専用の鍛錬場とする事で採決された。


 ダンジョン内の構造に関してはその都度変更していく事で決まった、施設を稼働して見て不具合が見つかったとしても、一週間程度の閉鎖で作り替える事が出来るのが大きかった。


 既存の建物ではそうはいかない、不具合が簡単な物なら修復という手も有るが、致命的な不具合なら一度出来上がってしまえば変更するのに年単位どころか老朽化を待って次の施設の建築に着手するという悪循環が生まれてくるのだ、そう言った手前、膨大な資金と時間を無駄にしない為に協議に時間を、逸れこそ無駄だと評されるほどの時間を掛けて協議に協議を重ねてようやく建築の許可が下りるのが一般的なのだ。


 その点ダンジョンの異常性は際立っていた、部屋の模様替えをするかの如く、気に入らなければ中身の構造自体を作り替えるこ事が出来るのだから、さながら異空間に存在する迷宮の不思議と言えた。


 それから数週間が経過した、夏休みも終わり子供たちの学校生活も始まった事で、斎賀村に平穏な日常は訪れるはずであったのだが、そんなことは事は無かった。


 ダンジョン交通機関の発表と共に、訓練施設や、5階層迄のダンジョンを使った第一次産業を含む工業生産拠点の構築に関する施策の依頼を、各企業に打診をしたところ最初は懐疑的な目を向けられていたが、本当にダンジョン内での生産活動を行えると知ると驚きをもって迎えられた。


 日本の国土を考えると狭い土地に悩まされることが無くなる事は大きかった、ダンジョン内で魔物に悩まされる事無く活動できると知ると其の利便性に着目する数多くの企業が名乗りを上げたのだった。


 ただ最初に開放するダンジョンは斎賀村の沼ダンジョンを使用する事に為り、あまたのダンジョン関連の企業の研究機関が誘致に乗り出したのだ。


 雑賀村内の土地の買収に始まり、村の郊外に研究施設の建設ラッシュが始まったのだった。普段なら陸の孤島と化している斎賀村だが、ダンジョン交通の起点となった事でそのくびきから解放されたのだった。


 しかも資材の輸送には保管倉庫の取得者が居れば事足りるのだから、重機を始め数々の建設機械と資材が効率良く移送できるとあっては、どの企業もこぞって村の開発に名乗りを上げてきたのだ。


 「最近は村の郊外が騒がしいわね、こうもうるさいと落ち着かないわ、何とか為らないかしら」と百花が学校の帰りに気色ばむ。


 雫斗達SDSのホームダンジョンが、ダンジョン関連の企業と探索者協会の深層探索者の訓練場と化していて、雫斗達は仕方なく村のダンジョンの中で活動しているのだった。


 「仕方ないさ、今の所ダンジョン内での交通機関は斎賀村と名古屋市のダンジョン間でしか機能していないのだから。取り敢えずは村の中は村人優先でとの決まりを作れただけでも良しとしなきゃ」と雫斗が言うと。


 「それにしても、かつての雑賀村の人口の三倍の人数が寝泊まりしているのにどうしてダンジョンが増えないのよ、おかしいじゃない?」とおかんむりの百花。


 「キリドンテの話だと定住が条件としてある様だよ。最低半年間の衣食住の継続だって、此処に来て居る人達はいわば建物と道を作る職人だからね、出来上がれば帰って行く人たちだし、それに名古屋市に住んでいて仕事の時だけ此処に来るっていう人もかなりの数がいる様だしね」と雫斗が身も蓋も無いことを言う。


 そうなのだ、ダンジョン交通機関は時間の観念が無い、一瞬で移動が完了してしまうので、まるで名古屋市のお隣さん感覚でこちらに来る人がいるのだ、雑賀村は遊戯施設がない、ちょっと飲みにとはいかないのだ、しかし名古屋市であれば羽を伸ばせる事の出来るお店はたくさんある、わざわざな何もない雑賀村に寝泊まりしてまで仕事をする必要が無いのが現状なのだ。


 「今度の週末は、名古屋支部前のダンジョンの15階層での探索だったね、何時も通りに8時に村のダンジョン前での集合で良いの?」と話題を変える雫斗。


 「ええ、そのつもりよ。でも癪だわね、パーティの連携を確認する為とは言っても、あなたが全力を出せない戦闘を強要するのは気が引けるわ」と若干愚痴気味に百花が話す。


 そうなのだ、雫斗が本気で戦えば周りが付いて来られない事も有り、かなり控えめの戦い方になってしまうのだ。


 ついて来られないというよりも、周りを巻き込んで怪我を負わしかねないのだから始末が悪い、雫斗が制覇した以外のダンジョンに入る事を禁じられている雫斗は、使える時間のほとんどを自身の鍛錬に費やしている、その弊害として雫斗の戦闘能力が百花達の数倍に跳ね上がっているのだ、そうなるとパーティとしての連携以前に戦闘としての連携が成り立たない。


 取り敢えずパーティとしての体制を整える意味で、連携の訓練を月一で行ってはいるが、百花達が全力で戦っている傍で仲間を傷つけないように気を付けながら戦っている雫斗に思う所が有る百花なのだった。


 其処で前に「こうも実力に差が有るとパーティとして意味がないから、雫斗は一人でいた方が良いんじゃないの」と提案した所、「ボッチの探索者は嫌だ」と泣きつかれたので、とりあえずはそのままSDSのメンバーとして扱ってはいるが、どちらかと言えば教官としての立ち位置がふさわしいような気がしているのだった。


 戦闘に関しては、後方からのアシストでピンチと言える事態には為らないし、戦闘後の的確なアドバイスで、メンバーの戦闘能力の向上にもつながっているのだから、その事は言い得て妙だと言えた。


 「雫斗の場合は、遊撃手として考えた方が良いかもね。僕たちの攻撃の側面から縦横無尽に繰り出す礫や魔法の攻撃には相手も迂闊に踏み込んで来られないからね」と弥生が雫斗の立ち位置を提案する。


 確かに後方から指示を出しながらパーティーとして攻撃に参加するよりも、かく乱の意味合いで挟撃をする方が雫斗の戦闘スタイルには合ってはいるが、そうなるともはやパーティーとしての体裁は無くなりそうではある、しかし其処は妥協する事にした雫斗だった。


 「ところで、ダンジョンの制覇はあまりうまくは要っていないと聞いたけれどどうなの?」と恭平が聞いてきた。


 そうなのだ、雫斗も詳しくは聞いていないのだが、自信過剰な探索者が挑戦してはいるが、そもそも単独での最下層の魔物の討伐で躓いていてはどうにもならない。


 子供の雫斗が簡単にダンジョンを攻略できたと聞いてそれならと挑戦しているらしいのだが、昇華の試練の檀上にさえ上る事が出来ていない現状だから話にも為らない。


 そう言っても雫斗にしても正規の手順を踏んでダンジョンを攻略できたわけではない為、何とも言えないのだが、近いうちにその事で何らかの話し合いが模様されることになりそうだと母親の悠美から聞いているのだ。


 「まだ攻略できたとは報告がないから何とも言えないけれど、暫くは無理なのかもね、そもそも僕が攻略できたのは、ほんとイレギュラーが原因だから」と雫斗は正規の攻略者ではないと訴える。


 「じゃ~~暫くは、世界初のダンジョン制覇者として君臨していくのね。すごいわ~~」と茶化して百花が話しかける。


 多少羨ましさが有るとはいえ、現状雫斗の置かれた立場は微妙なのだ、何故雫斗だけがダンジョンを攻略できたのか、その疑問さえうまく答える事が出来ないのだから、謎は深まるばかりである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。