第70話 人類滅亡への、カウントダウン?(その2)
年の瀬ですのでご挨拶を一つ。
累計での5000ページプレビューを超えました。読まれている皆様、本当に有難う御座いました。今年の投稿はこれにて終了ですが。この作品は投稿済みの内容を書き直しているものですので、投稿するペースは他の作品よりも早いと思っています。
明日の正月も出来れば同じペースで投稿したいものですが、行事が行事ですのでどうなるか確約はできません。
とにかく読んでいただいた皆様。今年一年、本当に有難う御座いました。そして来年も皆様にとっても良い年をお迎えできます様にお祈り申し上げます。
一 止
「雫斗、荒川さんが訪ねてきているわ。すぐに戻って来なさい」との連絡を受けた雫斗だが、さすがに荒川さん達がいるであろう村役場の会議室に、転移門を構築して躍り出る事も出来ず、何時も通りにダンジョンを出て村役場に向かうのだった。
村役場の応接室に通されたSDSのメンバーは、其処で荒川さんから日本のダンジョン攻略最前線にいる探索者の紹介に唖然とした。
「やあ、久しぶり! と言っても一週間も経ってはいないが、今日は聞きたい事が有ってまかり越した次第でね。・・・紹介しよう、こちらは関東を拠点に主に活動している”深淵の踏破者”のクランリーダーの芽梶さんだ。そしてそちらは関西を拠点に活動している”なにわ商会”のクランリーダーの香坂さん」
SNSやテレビでよく見る探索者の訪問に、ドギマギしながらもなんとか自己紹介を終えた雫斗達は彼らからの質問に答えていく。
「早速で悪いが、ダンジョンの管理者には会う事は叶うだろうか? 彼らに聞きたいことが有るのだが」と香坂さんが話し始めた。芽梶さんも同意している様で頷いているのだが。皆の視線を浴びた雫斗は緊張しながらも、その質問に答える。
「残念ながら彼らはダンジョン内で僕以外の人に会う事を極力避けているようです、それに彼らはダンジョンから出られません、ですので彼らに直接会う事は出来ないと思います」
その事は予想していた様で、「そうですか」と答えただけで他には何も言わなかったのだが、かなり落胆している様子にだった。そもそも雫斗達が知り得た事柄はまとめて探索者協会に提出済みなので、彼らもその事に関しての情報は知り得ている。ただそのダンジョンの管理者に直接会って話を聞いて、感触を確かめたかっただけの様なのだ、そこで雫斗は代案を出す。
「直接彼らと会う事は出来ませんが、間接的には可能かと思いますがどうしますか? ただ彼らも答える事が出来ない事柄が有る様なので、知り得る事には限界が有りますが」
「おおお、構わんよ。直接話してみて感触を確かめたかっただけだからね。ところで間接的にとはどうするのかね」雫斗の提案に一瞬喜びはしたが、けげんな表情を浮かべる芽梶さん。雫斗はスマートホンを取り出してアプリでチャトの部屋の構築をしながら。
「彼らもスマートホンを所持していますので、チャト会議に参加できるのです。・・・画像付きにしますか?それとも音声だけで」そう言った雫斗に。
全員が慌ててスマホを取り出してアプリを立ち上げる。「ビデオ通話で」と芽梶さんが代表して答えた。
チャト会議の為の部屋を構築した後に、キャサリンとキリドンテを呼び出して、部屋に入るための暗号キーを伝える。当然ここに居る人達にも伝えてルーム内で引き合わせた。
「キリドンテと、キャサリンです。キリドンテは斎賀村の二つのダンジョンの管理者で、キャサリンは名古屋市内に有る九つのダンジョンの管理をしています。二人とも忙しい所悪いね、こちらの人達は、日本のトップクランの代表者での荒川さんと芽梶さんと香坂さん。君達に聞きたいことが有るそうなので呼び出した次第でね、話せる内容だけでもいいから質問に答えてよ」
ダンジョンマネージャーたちの紹介を終えた雫斗はわき役に徹した、ダンジョンに関して持論は有るがここで話す事柄でもない、それにダンジョンに向き合うトップシーカーの考え方を周知出来るいい機会だと聞き役に回ったのだ。
「初めまして、関東を主に活動の場としている芽梶と言います。まずダンジョン間の移動だけど、転移と捉えていいのかね、瞬時に移動できる事は便利ではあるけれど、危険はないのかね?」と芽梶さんが聞いてきた。
確かに二つの離れた距離を移動するのに、時間は欠かせない、距離に対して移動速度が同じなら、遠い方が時間が掛かるのは当たり前の事なのだから、その離れた空間を移動するのに一瞬でと言う事は普通は考えられない、何か齟齬の様な物が起きないかと心配して聞いているのだ。
「転移とは二点の空間を入れ替える行為じゃな。我らが迷宮同士で構築するのは空間と空間の接続じゃ。そもそも其方らは日常的に虚無の空間を移動しておろうが、迷宮へと誘われる時もそうじゃが、階層と階層の境界を通り抜ける時もそうじゃ。そもそも此の惑星上に存在している迷宮など入り口だけがほとんどじゃ。その方らは迷宮内を移動する度に現実世界の空間と虚無世界の境界を跨いでおる。その事をほとんど気にかけた事も無かろうに、今更危惧するとは可笑しな事を言うものじゃ」とキャサリンが答えた。
その事なら知っている、キリドンテからの情報で今更ながらに話す内容でも無いのだが、日常的に普段から行なっている事が非日常のなのだと思い知らされる瞬間だ。
とにかくダンジョンの中での数々の行いそのものは常識の中には存在しないのだ。
「そもそもダンジョンとな何なのかね、5年も経つが未だにその全容を把握する事も叶わない、一体何のために作られたのかその一端でさえ理解できて居ない、全てを話せないと言うならば何かヒントになる事でも教えて欲しいのだが」と香坂さんがど真ん中を突いてくる。
「我らは迷宮の起源や本質を語る事を禁じられておる。しかしその方らは最早察しているのでは無いか? 何のための迷宮なのかを」とキャサリンが意味深に答えた。
雫斗も一度キリドンテにその疑問をぶつけた事がある、キャサリンが答えた様に適当にはぐらかされたが、彼には叡智の書という強い? 味方がいる。
ヨアヒムという中の人は胡散臭いが、叡智の書の本質は変わらない、つまり”真実を伝える事”に置いて嘘は無いのである。
キリドンテ、キャサリン、そしてヨアヒムを交えた議論の場での会話の一部だが、真実を伝える事の出来ないキャサリン達と、会話を捻じ曲げ・・・オッフォン・・・議題の行き先を故意に変えようとするヨアヒムとのセッションは遅々と進まず、雫斗の精神を大いに削っ行く事に為るのだが、しかし成果は絶大であったと雫斗は確信していた。
「ねえキリドンテ、この間口を滑ら・・・話していた”創造主”についてだけど。君やキャサリンを作った? いや創造したと考えていいのかな? 話せる範囲で教えて欲しいんだけど、どうかな?」そう切り出したのは、雫斗の拠点にある館の一角にある部屋での事だ。
休息している時間に何気ないふうを装って叡智の書をテーブルの上に置き、ヨアヒムを呼び出して話をしていたついでに聞いた風を装ったのだが、少し違和感が在るのはしょうがない事だった。雫斗は役者では無いのだから。
ちなみにキリドンテとキャサリンと話していた内容は、雫斗の倒したアドミラル・ジャイアント・クインビーホーネットを、魔核を基に召喚してクルモの召喚獣として使ってもらう計画を話していた所なのだ。
どの道使役するならば主である雫斗が召喚しても支障はないとはいえ、クルモをゴーレム型アンドロイドとして使役している雫斗では在るが、感情的にはクルモを友達か弟として考えている雫斗には自分の一部としての感覚が無いのである、結局話が平行線をたどり休息を取っていた所なのだ。
「主よ。前にも言ったが迷宮の理を話す事は禁じられておる。我らが其方らにその事で答えを語る事など無い」とケンモホロロニ拒否してきた。
しかし其処で引いてはいけない、ヨアヒムとの作戦では会話に引きずり込んで、何とか真実の欠片でもいいからもぎ取らなくては為らない。
「ま~そう言わずに、僕たちの話を聞いてよ。この間ヨアヒムと話をしていたのは、ダンジョン・・迷宮が作られたとして、誰が作ったかとか、何のために造られたかとかの話ではなく、迷宮が地球に出来た当時の世界情勢を僕なりに考えていたんだ、先日その事をヨアヒムと話していて、そう言う話ならキリドンテとキャサリンも一緒に話し合う事は出来るんじゃ無いかと思ったんだ」と雫斗が自分とヨアヒムの会話を聞いて、会話に参加してくれと頼むと。
「確かに主殿の話を聞くだけでありますれ、ば禁則事項に抵触する事は無いでしょう。よしんば迷宮の出来た時代背景を慮る事に否とはいえません。よろしいでしょう我らは傍観者として主殿とヨアヒム殿の考察の議論をお聞きして居ましょう程に」とキリドンテが肯定した。
いい感触だ、会話の中で適当に話を振ると議論に参加してくれそうではある。叡智の書の表紙の上に立体的な顔を浮かび上がらせて会話をするヨアヒムの表情は、初見であれば不気味な事この上ないのだが、その事に慣れている雫斗は事も無げに話しかけていた。
「まず。ダンジョンが出来た当時の世界情勢だけど、日本に限って言えば食糧を始め生活に必要な資源のほとんどを輸入に頼っていた、しかし世界の至る所で紛争が激化するに従い、次第に物資の不足で市民生活に支障が出来始めていた。島国である事と侵略戦争をしてはいけないという法律の下、他国の紛争に介入しない事が功を奏して戦争に巻き込まれずに済んだと言う事までは良いかな」と同意を求めた雫斗に。
「その当時の世界情勢は分からぬが。おおむね迷宮の顕現する条件は、発展し過ぎた知生体の自戒の予兆か、停滞による退行のどちらかではあるな、それを踏まえると概ね間違っては居らんだろうな。今ならインターネットなるもので調べる事が出来るが、其方ら人類はおろかにもこの星の資源を食い尽くし、気候を激変させてまで己の欲望に忠実に贅沢な生活を謳歌するあまりに、人類に執って未来へ唯一の道を閉ざしてしまうとは、愚かしさを通り越して道化の喜劇に見えるのは妾だけであろうかのう」とみ身も蓋も無いことを平気で言うキャサリン。
確かに、その当時中国と台湾の関係が最悪で、一色即発の情勢であった、その背景には極貧国に支援という形で融資とインフラのごり押しを進めてきた中国の政策がとん挫していた事が伺える。
その国の経済力は元より技術力に沿った支援では無く、自国の経済力を背景にした過剰な設備の投資でその国の支配をもくろんでいたのだが、ことごとく上手く行かなかったのだ。
それは当然の結果だと言える、港の設備や交通インフラにしても、自国の技術者を連れて来て作る事は出来るが、その設備を使う事の出来る人材の育成や教育、保全整備の出来る人材を育てるには時間が掛かる、2年や3年では育てるこ事は出来ないのだ、10人や20人なら出来るかもしれないが、設備の運営には100人や1000人単位の人間がかかわってくる、逸れこそノウハウの蓄積には10年、20年単位の時間が必要なのだ。
アフリカや東南アジアでは住民による不満が爆発した、当然莫大な予算と時間を費やした事業がうまく機能しないとなると、その地域の住民は抗議の声を上げる、教育を施された住民であればデモと称して街道を練り歩き、関係機関前でシュプレヒコールを上げて解散と平和的に終わるのだが。
経済的に余裕の居ない国に至っては、抗議の形態が実力行使となって現れる、つまり暴力に訴えて暴徒と化してしまうのだ、当然その国の情勢は国民の暴動と政府による武力での鎮圧という最悪な結果となってしまう。
不満の有る国民と政府が争えば紛争という形になって来るのは当然で、そうなると力の無い住民は隣国へと逃れて避難生活を送るしかなくなるのだが、その隣国も余裕があるわけでは無い、難民の受け入れに不満が募り、その人達に対する排除を実力で行う人たちが出てくる事に為る。
気候変動による食糧生産の低下と相まって、各地で難民が増大してくると、ユニセフなどの機関も支援の体制が追い付かなくなってくる。アフリカや東南アジアだけではない、ヨーロッパでもロシアとウクライナの戦争の長期化と、周りの国に飛び火するのではないかとの懸念から強い警戒感が増して、NATOと米国とロシアの緊張状態が世界経済に悪影響をもたらしていた。
その様な状況下での台湾と中国の台湾海峡での紛争は、世界戦争に発展するだろうとの見方をする人が多かったのも事実なのだ。
「生命は衰退と繁栄を繰り返して進化していくものでは有りまするが、高度に繫栄した文明が途絶してしまえば、一から始めなければ成らなくなりますれば、途方もない時間が必要になってしまいまする、出来ればそのような事が起こらぬようにしなければ成りませんでしょうな」とキリドンテが口を滑らせた。答えを言っている様に思う雫斗だが、そこは伏せておくことにした。
ダンジョン、迷宮と称する此の現象は、何処かの高次元に存在する知生体が、滅びゆく知生体に対する支援の一環であると言っている事に為るのだと雫斗は理解した。
ことさらに言う事ではないが、そのままダンジョンが出現しなければ、紛争が激化して行けば、侵略戦争に発展して世界大戦、核戦争と人類滅亡のシナリオを容易に思い描くことが出来るのだから。




