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ダンジョンを探索すると、いろいろな事が分かるかも。(改訂版)  作者: 一 止
第1章  初級探索者編

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第69話  人類滅亡への、カウントダウン?(その1)

 斎賀村へと帰るにあたって、百花からダンジョンからダンジョンへの移動を試さないかとの提案があったのだが、まだダンジョンを制覇した事を発表していない手前、ダンジョン間の移動で名古屋支部前ダンジョンから雑賀村のダンジョンに帰ると、そのまま帰還不備の状態になってしまうので悠美から却下された。


 そこで仕方なくヘリドローンに分乗して帰村する事になったのだ、しかしヘリドローンの最大搭乗人数は4人で一人余るのだ。高崎親子と百花達とで別れて搭乗したのだが、母親の悠美の沈黙が何気に気がかりな雫斗は話し掛けるタイミングを計りかねていた。


 当の悠美はこれ迄練っていた計画の見直しを強いられている事で、頭の中で整理をして居ただけなのだが、思わぬ形で、別のダンジョンを勢力下においた雫斗は叱責されるのではないかと戦線恐慌なのだ。


 「ねぇ~。お母さん、怒っている?」


 ダンジョンを制覇した事で多少は心構えや思考の仕方が大人びているとは言っても、母親の顔色を窺うあたり、まだまだ子供ではある。戸惑いながら聞かれたことに吹き出してしまった悠美では在るが、べつに雫斗に対して怒りがあるわけでは無い、何れは何処かのダンジョンを制覇してしまうだろうなと、朧気ながらに思ってはいても、ひと月と待たずに別のダンジョン群を制覇してしまうとは思っていなかったのだ。


 斎賀村のダンジョンを雫斗が制覇した後、ダンジョンとの向き合い方を考えるいとまもなく、遠く離れたダンジョンの事まで考慮しないといけない事に、考えが追い付かないのが本音ではある。


 しかしある意味これはチャンスでもある。統括本部の副部長の高倉が言っていた事柄を肯定するわけでは無いが、ダンジョンが便利な機能で地域に貢献できることが知れ渡れば、そもそもダンジョンを忌避していた人たちに考を改めるチャンスを与えることになるのだから。


 だがそれは、もろ刃の剣でもある。そもそもダンジョンが出現して5年もたてば、ダンジョンの特性を理解して使いこなしている人達と、ダンジョンは危険なものであるとして、頑として敬遠し続ける人達とに分かれてしまっているのだ。


 「別に怒っては居ないわよ。雫斗のダンジョンを如何するかで悩んでいただけだから」そう言って笑顔を向けると、雫斗が「よかった〜」と、本当に心底安心した様な声を漏らす。


 「あっ。恭平から提案があったんだけど、ダンジョンの中で訓練場みたいな物を作って欲しいんだって。その事も考慮してくれたら嬉しいかな?」


 完全に悠美にダンジョンの此れからの事を丸投げする気満々の雫斗に、”君の所有物でしょ”と言いたいが、探索者協会の理事長や本部副部長に「ダンジョンの使用に関して私を通してください」と言った手前どうやら悠美が考える事が当然だと認識していまっている様だった。


 そこでふと思い付いた、一人で考えるから煩わしいのであって、其れなら雑賀村の村民を巻き込んで、いろんな意見を募集して、後はその中から良さそうな物を纏めて仕舞えば良いのでは無いかと。


 考え込んでいた悠美が、いきなり悪そうな顔をしてニヤ付き出したのを見て、何とも言えない気持ちになる雫斗だった。


 翌日になると、斎賀村回覧板と称する斎賀村の住人の一人一人が取得しているアプリに、今までの経緯と此れから斎賀村のダンジョンの在り方、またどういった機能を持たせたいかなどの意見の募集と。出来る出来ないは別にして、斎賀村の住人としてダンジョンに入れて欲しい施設などを募集した。


 『斎賀村のダンジョンを改造する事になりました。各々の考えているダンジョン内の有ったら嬉しい仕様や機能が有ったら、このフォームから要望を上げてください。出来るか出来ないかはその都度交渉するので、荒唐無稽な考えでも良いで皆さんの意見を募ります』


 スマホのアプリから、そのお知らせを見た雫斗は「お母さん、完全に匙を投げたな」と思わなくも無いが、斎賀村の住人であれば気心も知れている事に加え、無茶な提案はして来ないだろうと思いはした。確かに初めての試みで五里霧中なのは分かる、そこで斎賀村の住人の意見を募集する事は的を射ていると言える。取り敢えず、自分のダンジョンではあるが、雫斗も要望を幾つか提案した。


 キリドンテの話していた事では有るが、ダンジョンは成長する。そこに住む住人の数が増える事によってダンジョンの規模や数が増えていくのだ。斎賀村のダンジョンも住人が増えれば5層10層と規模が大きくなると言う。事実最近の斎賀村はアマテラスの研究所が建設中だ、他の企業や大学も支社や研究施設、驚く事に分校の打診も届いていると言う。


 まさしくダンジョン関連の最前線が、斎賀村と成りつつ有る。それを踏まえるとダンジョンを制覇出来たのが斎賀村であった事は良かったのかも知れない、規模の小さなダンジョンで人類の要望に沿った仕様で作り変える事ができるのだから。斎賀村回覧板へと要望を投稿したその後で、雫斗は拠点空間から名古屋支部前ダンジョンへと飛んだ。


 昨日は慌ただしかった事もあり、220迷宮郡の管理者であるキャサリンとまともに話をして居なかったのだ。


 「やあ、昨日は話をする暇が無かったからね、所で此処はどう言った場所なんだい?」


 名古屋支部前ダンジョンに転移してキャサリンを呼び出すと、この空間へ連れて来られたのだが、まるで宮殿の中に迷い込んだ様な佇まいに呆気に取られて居た。


 「此処は我が住まう為の空間じゃ、無骨な迷宮では気が休まらぬからな、主人殿の拠点空間と同じじゃ。・・・時に、主人よ。主人殿の住まう館に我を誘うは何時に成るのかのう?、 主人の許可なくば館への推参は叶わぬからのう」


 キャサリンが多少拗ねた感じで雫斗の拠点空間にある館へ連れて行けと言われた、聞くとキリドンテに自慢されたらしくて、招待されない事で疎外感があると言う。


 雫斗にしてみると昨日会ったばかりのキャサリンから、しかも命をかけたバトルを強要した相手に、その様に言われるとは思わなかったのだ。


 迷宮の管理者と自分達の倫理観は違った感覚がある様で、何ともサバサバとした気持ちの切り替えが出来る様なのだ。要するに、深層の試練という命を懸けた戦いに勝利した時点で、盟約という強制力により主従の関係が築かれてしまうらしいのだ。


 雫斗は間接的とはいえ、命のやり取りをした相手から主人として慕われる事に多少の抵抗が有るが、其処はそういう物なのだと気持ちを切り替えてキャサリンと共に自分の拠点空間への扉をくぐるのだった。キャサリンは雫斗に拠点空間の中を案内されながら感嘆の言葉を漏らす。


 「何ともはや、これ程の規模の空間を構築なされておられるとは。全てを主人殿がお作りに成られたのか?」


 確かに最初の頃と比べればかなり違和感は無くなった、何も無い空間に自然な感じで地球の環境を作り込んでいくのは、とでも大変でやり甲斐はあったのだ。


 岩や土、草木などの固形物だけで無く、空気や水や気温、湿度や気圧などの気象条件は元より夜や昼といった光による時間の設定なども与しなければ成らず、全ての要素が相互に関わりある事でこの世界は成り立っているのだ、細かい調整は拠点空間自身が賄うからとキリドンテに言われて、大雑把な感じて配置を考えてしまったのだが、其れは其れで良かったのかも知れなかった、取り敢えずは満足できる形で落ち着いたのだから。


 「大方は僕が考えたかな、細かな調整と細部はキリドンテとクルモに任せてあるから、本当に作り込んだのは二人なのかもね」と多少はにかみながら答えると、すかさずキャサリンが声を上げる。


 「おお!。 其れなれば、我も主人の拠点の構築に参加してもよいであろうか?」


 「其れは構わないけど、取り敢えず三人で相談しながらお願いね。所でどうして僕の拠点空間の構築に拘るの? 自分の迷宮でも出来るでしょう?」


 当然の疑問を口にする雫斗、好きに空間を作る事ができる自分の迷宮の方が簡単な様に思えたからなのだが、キャサリンの話では迷宮には厳格な決まりが有り、自由に作る事ができないそうなのだ、自分の住まう空間は別なのだが、必要最低限な広さが決められて居て、キャサリンの希望に添えるだけの広さが無いのだとか。取り敢えず、無茶な広さで作らない様に釘を刺した雫斗なのだが。


 「当然であろう」と同意したキャサリンの嬉々とした感じから、広さの感覚が雫斗とキャサリンでは、かなりの開きがあるのでは無いかと、若干の不安がないわけでは無い。


 その後は、雫斗の館にもどってキリドンテとクルモを交えての話し合いになった。


 「キャサリンの管轄しているダンジョンの一階層の一画にダンジョン間の移動に使う為のスペースを確保したいのだけどどうかな?」と雫斗が聞いてみた。


 「その様な事はたいした労力では無い、どの様な仕様で作るかが決まれば直ぐにでも出来ようぞ」キャサリンがそんなことの為に呼んだのかと言わんばかりに憤慨して言う。


 「そうなんだ。取り敢えずキャサリンが管轄しているダンジョンはあまり触らずに、斎賀村のダンジョンを重点的に改造していく形になるみたいだね、キャサリンの管轄しているダンジョンは、移動をメインに作り変えて様子を見る事になると思うよ。まだ何とも言えないけどね」そう言う雫斗に。


 「まぁ良かろう。急いては事を何とかとも言うし、慌てる事もあるまい。しかしあの建物は何なのだ主人よ」と目ざとく見つけた遠方の建物を指さしてキャサリンが問う。


 雫斗の拠点空間をキャサリンを連れて案内がてら回ってきたのだが、時間がなかった事もありクルモの管理している工場の中を見せる事ができなかったのだ。


 「あれは工場だよ、此れの通信に必要なマイクロSIMを作っているかな、今は使役している魔物達との意思疎通の出来る媒体の改良をメインでやっているよ」そう言って雫斗がスマホを見せる。


 「なかなか便利な機械でございますぞ、インターネットなるものに繋げますれば、人々の生活がツブサに解る様に成りますれば、キャサリン嬢もお使いになると宜しいかと存じます」


 そう言って自慢げにスマホを取り出して見せびらかすキリドンテ。”ぐぬぬ”と唸りながら、物欲しそうにスマホを見るキャサリン。


 「主殿!!。 我にもその機械なる物を貰える事は出来ぬであろうか?。」そう切実に訴えるキャサリン。


 雫斗はあっさりと「いいよ」と承諾して保管倉庫から新しいスマートホンの媒体と契約済のマイクロSIMカードを取り出した。


 何を隠そう雫斗とクルモ、そして美樹本 陸玖とで作り上げた通話の魔道具をマイクロSIM上で稼働できるようにした通信媒体の製造方法を探索者協会に持ち込んだ際、大手のスマートホン製造会社や、通信キャリアーの人達に講習という形でその製造過程を伝授していたのだ。


 その報酬の一環で、最新の電子式の電話交換機と契約済みのマイクロSIMカード数十枚、そして最新式のスマートホン数台をゲットしていたのだ。


 当然マイクロSIMカードのスロットが複数ある機種にしてある、通常で使えるマイクロSIMカードと通話の魔道具であるマイクロSIMカードを同時に差し込むためだ。


 雫斗はキャサリンに説明しながら初期設定をして、ある程度操作方法を教えると彼女は嬉々として色々なサイトに入って検索し始めた、そしてあるサイトを見付けて驚嘆の声を上げると、しげしげと見ていた、どうしたのかと聞くと。


 「主殿。このスマホなる物は物凄い速さで情報を伝えるものじゃな。先日の昇華の試練の模様が、ほれこの様に映し出されておるぞ」


 「なぬ??」と雫斗は慌ててキャサリンのスマホを見る。


 ”この動画は本物かそれとも作り物か”と題して昨日のバトルの模様がYou 〇ubeに投稿されているでは有りませんか? しかも数百万単位で視聴数が増えている。顔の目線を隠しているとはいえ、見る人が見れば雫斗だとすぐにばれる画像に頭を抱えた。


 雫斗は消去法を駆使して犯人を捜す。SDSのメンバーは論外だ、両親も外してミーニャ? いやいやそんな事をする子じゃない。しかし昨日見ていたという雑賀村の長老達も面白がってやりかねないが、時節と常識を見極める目は有る。では一体だれがと考えた時。


 「おおお。最初の投稿でバズるとは、さすが主殿ですな。これは億越えも直ぐでは無いですか、ぐふふふふ~。無理してネットに上げた甲斐が有りますです」とキリドンテが感動して言う。


 ”お前かい”雫斗は動画を投稿した事を白状したキリドンテに呆れてしまう、いくら何でも状況が悪い、詳しい説明も無しにただ魔物とのバトルを映しているだけだとしても、何れダンジョンを制覇した事は発表しなくてはいけないのだ。


 一躍時の人になった自分を想像して身震いする雫斗、目立つことを極力避けてきた彼にとって必要以上に世間に周知されることは苦痛では在るのだ、しかしその事を知らないキリドンテには、当然主である雫斗の功績として世間に知らしめたいという思いがあるが、まだダンジョンを個人が所有できる事は発表前だと言う事を考慮して、謎掛けめいた動画にして有るのがせめてもの救いではある。


 「これでわが創造主方の苦労が報われそうですな、数億年の時を超えようやく第一歩を踏み出せた事に、我が胸の内に喜びがあふれんばかりに打ち震えております」キリドンテに抗議の言葉を言おうとした雫斗は思わぬ発言に言葉を飲み込んだ。”創造主の苦労?”、”数億年の時?”。その言葉の意味を聞こうとした雫斗に待ったをかけるキャサリン。


 「これキリドンテ、それは禁止事項じゃ、むやみに話してはならぬ。そもそもまだ最初の一歩を踏み出したにすぎぬ、個人が突出したとて社会構成が追従せねば意味が無い」キャサリンがため息とともに不思議なことを言う。


 何かダンジョンに関しての大事な話の様だが、雲をつかむ様な話でその真意の糸口が見えない。雫斗はキリドンテにネットに上げた動画の事で苦情を言う事を忘れて聞いてみた。


 「何か重要なことを言っていたけれど、どういう事かな、創造主?このダンジョンを作った人ってこと? ダンジョンが自然に出来たとは思わないけれど、作られたとは穏やかじゃ無いね。説明してくれると嬉しいのだけれど」雫斗がそう言うと。


 「残念じゃがいくら主の願いであっても、我らはその事について話す事を禁じられておる。迷宮の出来た本当の意味を考えて理解せねば人類に未来は無い。その事だけは肝に銘じておくがよいぞ」そう言ってキリドンテ同様キャサリンもそれ以上は口をつぐんだままだった。


 それから数日後、ダンジョン間の交通インフラの使用の概要を詰めた要望書を、探索者協会の日本支部の本部へと送ったのだが、一向に返事がない。どうやらダンジョン庁の官庁ともめている様なのだが、流石に無視して進める訳にも行かずどうした物かと考えていると、荒川優子さんの他、数人の人が雫斗を訪ねてきた。


 夏休みの渦中にある雫斗は、本来であればダンジョン制覇に性を出している筈の時間なのだが、また問題を起こされては堪らないと両親、特に母親の悠美から「これ以上厄介ごとは御免ですからね、自重しなさい」と言われて、他のダンジョンへの入場の禁止を言い渡されているのだ。


 暇を持て余している雫斗は仕方が無いので、百花達SDSのメンバーと一緒に、雫斗の拠点空間でダンジョンを模した空間をあえて作り、訓練方法及び訓練施設の構築を実際に試しながら、個人の能力の向上と効率が良い訓練の方法を模索している最中なのだ。


 何れは、探索者訓練施設として雑賀村のダンジョンや名古屋支部前ダンジョンに構築しようと考えている施設だが。1階層はダンジョン内と他のダンジョとの移動のプラットホームとして作り変えるとして、2層と3層で探索者の強化を目的とした施設の構築を考えていた。自身の能力の向上とスキルを取得した後に中層や深層に挑む上で必要な身体能力を養う事を目的に訓練の方法を考えているのだ。


 しかしそれは建前で、百花達が自分自身を鍛える為にやっているだけで、雫斗が習得している保管倉庫を使った空間高速移動など普通の人が出来る訳が無いのだ。



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