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ダンジョンを探索すると、いろいろな事が分かるかも。(改訂版)  作者: 一 止
第1章  初級探索者編

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第68話  事に重大さの認識のズレが、悲劇の引き金となるのか? (その2)

 そのほのぼのとした雰囲気を壊す様に、顰めっ面した中倉が言葉を投げかけた。


 「久しぶりで懐かしむのは後にして、そろそろ本題に話を戻しませんか?、 私としては重要な案件を秘匿して居たことに問題があると思うのですが」


 そう言って、副部長の中倉が問いただす。確かにダンジョンを私物化できる事を秘匿して居たが、其れは一時的な事でしか無い。そもそも、探索者協会に必ず攻略情報を報告するという憲法上の規定はない。ダンジョンの攻略に関連した情報は、最初に探索者協会報告した人が、報奨金として受け取れる。


 ただその一点で、見つけた攻略情報は早めに協会に報告した方がいいという風潮が出来ただけで、報奨金の取得に有利だから情報の開示は義務の様に思われているが、別に秘匿して居ても問題はない。


 「あら。ダンジョンの攻略情報は個人で秘匿して居ても問題は無いはずです。そもそも情報の開示は義務でもなんでもない。違いますか?」悠美に堂々と言われてますます渋くなる表情の中倉は黙り込む。


 「最初に。斎賀村のダンジョンを本当の意味で攻略し制覇した事で、個人として所有出来ている件ですが。それは3層しかない特殊なダンジョンという特異性が原因ではないかと思われていたからです、検証するにも同じダンジョンが少ない事が足枷となっていた事。また攻略する為には一人で戦う事が条件だった事が挙げられます。はっきり言いますが、年端も行かない我が子をその様な危険な事に従事させる事は承諾出来ませんので」


 悠美はそう言って正当性を強調する。確かに斎賀村のダンジョンを雫斗が掌握した事は思いもよらない事ではあったが、遣ってしまった事はどうしょうもない。


 しかし、雫斗の思惑は如何あれ、危険なダンジョンの攻略を、雫斗にもう一度お願いする事は、親として断じて承諾できる事では無かった。


 「第2に、本来は最下層にあるオーブの間のガーディアンを単独で殲滅した後に、迷宮の試練を受諾するかの選択があると言う事でしたので、雫斗も50階層以上あるダンジョンで、たかだか3階層を探索していて迷宮の試練に巻き込まれるとは思っていなかったった様です。要は今日の出来事は完全に事故の様なものだと聞いています」


 当然悠美は、探索者協会名古屋支部に向かっているヘリドローンの中で、雫斗と電話である程度の打ち合わせをしていた。ただ理事長と統括副部長の二人が居る事は予想外だったが、中倉はともかく、事長の田中は話の分かる人物だ。この事で話が抉れる事は無いと悠美はある程度確信していた。


 「しかし、有益な情報を敢えて秘匿するとは、支部を任された者として、その行動は不適切だと言わざるを得ない。私は彼女の斎賀村支部長からの解任が妥当だと思いますが如何ですか理事長?」


 悠美の探索者協会の支部長からの解任の話が出て雫斗は驚いた。そうなると”大事になったな”という話だけでは済まない。斎賀村の探索者協会の支部長が変われば、雑賀村のダンジョンの運営方法も変わるだろうし、斎賀村の住人とうまく折り合いが付けられれば良いが。


 雫斗の心配を他所に悠美は解任の話を鼻で笑った。


 「面白い事をおっしゃいますね。ダンジョンは存在している地域の管理下にあります、いわばその地域の財産です。その財産を探索者協会が強奪すると言うなら斎賀村の長として探索者協会との契約を破棄しなければいけません。副部長それでよろしいですね?」


 「まぁ、二人とも落ち着きたまえ。確かに探索者協会の支部長は本部からの派遣か委託のどちらかではあるが、ダンジョンがその地域の所有である事も事実だ。中倉さんもこれだけは理解して欲しいのだが。我々協会はダンジョンを取り巻く環境を、より良くする事に尽力する。その為に設立された機関だという事を」そう言って諭す様に話す田中理事長なのだが、思惑というのはどちらに重きを置くかによって変わってくる。


 「当然です。ですからこれ程の有益性と利便性に優れたものを、一個人の所有とする事に問題があるのです。何か大きな組織の枠組みの中で活用する事で、より豊かな社会を作り出せると考えたからこそ、探索者協会への譲渡を推奨しているのです」中倉福部長はダンジョンマスターの権限を譲渡する事ができると当然の様に話すが、それは無理な話だ。


 そもそも、ダンジョンマスターの称号はダンジョンを攻略した褒賞で、そのダンジョンの管理者たるダンジョンマネージャと交わした誓約の証なのだ。 その証をおいそれと他者に譲り渡すなど出来はしない。ダンジョンマスターという称号は、取得物ではない。


 「そもそもの話、ダンジョンの権限を譲渡できるものなのか? 話は其処からでは無いのかね。しかしダンジョンの管理者とは何者なのかね? ダンジョンを設置した人物と考えて良いのかね?」


 そう言って疑問を投げかけてくる、田中理事長。その疑問に答えようとした雫斗だが、中倉副部長が邪魔をする。


 「ダンジョンからの取得物に関して譲渡できないものは有りません。おそらくダンジョンマスターの権限も譲渡できるものとして考えるのが妥当だと思いますが」 そう言って先制を掛けてくる、どうあってもダンジョンの管理を協会もしくは国で行いたいとの思惑がにじみ出ていた。


 「待ちたまえ。私が聞いているのは雫斗君であって君ではない。ダンジョンを管理する権限の譲渡に関して憶測で話を進めてはいかんよ。・・・で、如何なのかね?」 田中理事長は中倉副本部長が言っている事に異議を唱えて、雫斗に改めて尋ねたのだった。


 「ダンジョンマスターは称号であってダンジョンを作り替える権限はその付属でしかないと、キリドンテ・・・雑賀村のダンジョンマネージャがそう言っていました。称号は譲渡できませんので」


 それを聞いて頷く田中、最近まではダンジョンカードで自分の称号を確認する事が出来なかったのだが、鑑定のスキルを取得した事で自分のステータスを知ることが出来るようになったのだ。


 かく言う田中も理事長という忙しい責務の中、暇を見つけてはスライムの討伐を行っていた、いわばスライム狩りのお仲間である。


 「確かに、自分の称号を他人に受け渡す事など出来はし無いな」と納得する田中理事長。


 「ダンジョンから取得した石板からの情報だったとしても、ダンジョン制覇を個人で出来る人物が出てくるとは思わなかったぞ。しかもジャイアント・キングスライムを倒してしまうなど驚愕を通り越して、呆れるばかりの強さだな」


 そう言って首を振る田中。そうなのだ、何故雫斗の話した内容を何故皆が信じているのかと言うと、ダンジョンがからもたらされた石板にその内容が書き記されていたからなのだ。


 しかし其れは不可能だと思われていた、15階層以上のダンジョン最下層にいる、オーブを守っている強力な魔物を単独で倒すなど不可能に思えたからなのだ。


 しかし其れがダンジョンを本当の意味で攻略する為の最低条件だときている、フルパーティーでも倒すのに四苦八苦しているのに、単独でのダンジョンの最下層に居るオーブの守護者の討伐となると夢のまた夢だと思われていたのだ。


 しかし雫斗が鑑定のスキルや保管倉庫のスキルの取得の仕方を発見し、あまつさえ接触収納の能力を攻撃へと繋げた事で、何とかなりそうな気配はあった、だが実際に単独でのダンジョンガーディアンの討伐までして退けて居るとは思っても見なかったのだ。


 「裏を返せば、そのダンジョンマネージャなる人物の助成が有れば、協会がそのダンジョンを管理統括する事が叶うという事ではないですか? キリドンテなる人物との交渉を我々は優先して行わなければなりません、当然雫斗君は協力してくれますよね」と中倉は、雫斗が協力するのが当然だと言ってくる。


 「その事に関して雫斗はまだ未成年です。話し合いは親である私を通してもらいたいですね。そもそも雑賀村のダンジョンマネージャーのキリドンテさんと、ダンジョン外で直接交渉する事は無理ですね、そもそもダンジョン外で会う事が出来ませんし、彼は息子の雫斗の言う事しか聞いてくれません。中倉統括副部長の仰る協力とは、無償でダンジョンを使用する事でしたらお断りいたします。ダンジョン間の移動に関しても無償とはいきませんし、作り替えたダンジョンを年間を通してどの程度使用するのか見当もつきませんから、最初は年間契約として随時更新していくという事で如何でしょうか?」


 悠美はさっそくダンジョンの使用に関する取り決めを話し始めた。最初が肝心とばかりに無償での使用に関してNOを突き付ける、探索者から徴収しているダンジョン税に関して新たな制度が求められてきそうなのだ。どの道、最終的には探索者協会の理事会とダンジョン庁の議題にかけられる案件で、決定稿が出来上がるのは、どんなに早く見積もっても2・3か月はかかる見通しだ。


 探索者協会の理事長に統括副部長、探索者協会の支部長が二人と高レベルの探索者が居る事が功を奏した。最低限の体裁が整っている事で、取り敢えず攻略済みいや制覇済みのダンジョンで何が出来て何が出来ないのかの検証を、雑賀村支部のダンジョンと名古屋支部のダンジョンで試して見ると言う事で折り合いがついた。


 「いやはや、最近のダンジョン関連の情報最新の凄まじさには驚きだね。ここ4カ月でここ迄で変わるとは思いもしなかったよ、これからの事が楽しみでしょうがないね。所で中倉君、私は此れから大阪支部と福岡支部へと赴くが、予定通りに君も来るのかね」斎賀村へ帰って行く一行を見送りながら田中本部長は独り言ちる。


 「いえ、ダンジョンの攻略者…制覇者が出た以上、此れからの事を考慮しなければなりません。私は本部に戻り、ダンジョン使用に関しての、新たな枠組みについて協議しなくてはなりませんのでこれで失礼します」


 そう言って中倉副本部長は秘書の人を携えて出ていく、その後ろ姿を見ながら田中理事長はため息を付く。ダンジョンを恐れている人は、この世界たくさん居る、現在の人口の半分以上は居るだろう。


 彼もその一人だろう、その様な人物が探索者協会の重要な職にあるには訳がある、年齢を重ねている人ほどダンジョンからの帰還是非を問うの水晶の色が赤いのだ。それは仕方のない事だと田中は思う、人は年齢を重ねるごとに業を貯めていく、社会生活を営む上で、清廉潔白な人など存在しないのだ。


 特に都会では顕著で実に市民の8割以上がダンジョンの浅い階であっても試金石で否を突き付けられているのだ、かく言う田中もその一人だと思っている、しかし今現在田中は20階層に行くことが出来る。そこ迄降りてもダンジョン帰還試金石の色は青色をしているのだ、それはダンジョンが彼を受け容れたからだと田中自身は思っているのだ。


 田中は5年前のダンジョン発生のあおりでダンジョン化した東京駅に取り込まれた、その時は思い至らなかったが、魔物と戦い必死な思いで無事に地上に帰還できたことで自分自身のため込んできた業が取り除かれたのだと確信していた。


 ダンジョン帰還試金石の色が赤の人でもダンジョンに入る事はできる、ただ帰って来る保証がないだけの話なのだ。事実、少数では在るが試金石の赤い人でもダンジョンに入り無事帰還できた人はいる、その人の話では尋常ではない魔物に襲われて、もう駄目だと死ぬ思いで必死にあがいて生き延びてきたのだ訴えていた。ダンジョンから帰還できたそういった人達はまるで人が変わったかの如く性格や生きざまに違いが出て来たと、その人の知り合いが証言している。誰であれ、ダンジョンに挑む以上は命の危険が付きまとう、そこに勇気で打ち勝つか逃げ出すかはその人次第なのだから。


 名古屋支部の屋上のヘリポートから最寄りの駅まで移動しているヘリドローンの機内で、考え込んでいる中倉に秘書の吉川が話しかける。


 「如何なさるおつもりですか?」


 「ダンジョンを個人で所有するなどもってのほかだ、有っては為らん行為だよ。・・・・そう、その様な事態は許されんのだ、いや許してはいかんのだ」そう呟いて、中倉は深い考えに落ちていく。吉川もそれ以上聞くことも無くヘリドローンの羽の風を切る音だけが沈黙に華を添えていく。



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