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ダンジョンを探索すると、いろいろな事が分かるかも。(改訂版)  作者: 一 止
第1章  初級探索者編

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第39話  ダンジョンを探索すると、知能が上がるかも?(その2)

 「おいおい、どうしたんだい!。全員集合とはただ事じゃ無いな」と下級生全員で来たことに驚いた星士斗は多少警戒して聞いてきた。母親からすべて話しても良いと許可を貰っている雫斗は多少余裕があるのか、警戒している星士斗を茶化す。


 「ふふふっ・・、先輩方の圧迫尋問に対抗するために全員できました。これで気持ちで負ける事はありませんよ!!」と言った途端、後頭部をハタかれる。


 「煽って茶番を誘うのは止めなさい。この後ダンジョンに行くんだから早く終らせないといけないでしょう」と雫斗と星士斗の楽しみをつぶしにきた百花チームSDS(雑賀村ダンジョンシーカー)のメンバー全員がようやく鑑定のスキルを取得して、昇華の路を探し当てる事が出来る様になっていたので、本音で言えばこの様な報告会に参加する暇があるならダンジョンへと入りたいのだろうが、此処は自重した形になる。


 頭を叩かれて、星士斗との茶番をつぶされた雫斗だが、時間が惜しいのは雫斗も同じなのでさっさと始める事にした。雫斗の肩に乗っていたクルモを瑠璃先輩が目ざとく見つけると、今朝の由香里と同じ状態に成り、質問攻めと触りたい攻撃で多少の時間のロスは有ったが、取り敢えず話を終えてからと言う事で進める事にした。


 「今朝支部長から話しても良いと許可を貰ったので全部説明しますから、ちょっと待っていてくださいね」と言いながら雫斗は黒板に今まで分かった事柄を書き出していく。


 最初はカードスキルを書き出していき、接触収納のあたりでは皆が知ってる事も有りざわつきはしないが、スライム10万匹の討伐でスライムの固有スキルである保管倉庫と物理耐性が取得できる可能性に言及した辺りでががやがやと騒がしくなる。


 ライム100万匹の討伐でダンジンカードを使った鑑定が使えるようになる事や、一階層に居るベビーゴーレムとカメレオンサラマンダーの存在と、鑑定スキルで見つける事の出来る隠し通路(昇華の路)の辺りでどよめきとなる。その事は雫斗の予測の範囲なので最後まで書き出して「何か質問は?」と質疑タイムに突入していく。


 ざわついていた教室内が一瞬静寂を取り戻すと、「「「はい!はい!」」」と全員が一斉に手を上げる、我先にと勝手気ままに質問してこないのは教育のたまものではあるが、自分を指名しろとの気迫が半端ではない。取り敢えず呼び出した本人から指名する「はい星士斗先輩どうぞ」。


 「このカード鑑定とは鑑定スキルと思っていいのかな?」と一番気になる事柄から聞いてきた。雫斗は予測して居たので今まで分かった事も含めてどの様に説明するか考えてきていた。


 「これは僕の所見なんだけど、ダンジョンカードを取得をすることでダンジョンでの活動の初歩的な技術の習得が出来る様になるのだと思う。収納にしても鑑定にしても無いより有った方がダンジョン攻略の難易度が段違いだから。ちなみにだけど良く分からないというのが今の所の見解です。鑑定のスキルの取得自体はスライム100万匹で間違いないですが、鑑定スキルの覚醒となるとカードを透かして見るという条件が居る様です。鑑定のランクアップと融合はまだ良く分かって居ません」と雫斗が考えなしに爆弾発言したものだから、教室内の喧騒が一層激しくなる。


 「どういう事よ?。 鑑定のスキル自体が変化するって事」と瑠璃先輩が驚いて聞いてきた。


 「それも良く分かって居ません、僕の場合だと鑑定のスキルと気配察知のスキルが合わさって魔物を直接見る事で鑑定できるようになりましたが、物や人物は相変わらずカード越しに見なければ分かりません。もしかしたら他の人は違う形でスキル同士が融合するかもしれません。とにかく検証はこれからなんです」と雫斗が言うと。


 「確かに、まだ分からない事だらけだと言う事は分かった、しかし発動する条件は同じだと考えていいのかな」と星士斗先輩が確認する。


 「それは検証済みです、百花も弥生も恭平も、保管倉庫、物理耐性、鑑定と僕がスライムを倒して取得したスキルはすべて習得できましたから。ただカードを使った収納もそうですが最初は使い勝手が良くありません」と雫斗。


 「そうね、カードの収納だと触って無いと駄目だし重量にも制限があるわね、カード越しに見る鑑定も煩わしいわね」と百花が言うと、残りの教室に居る人達も納得した様に頷く。ここに居るメンバー全員が接触収納を使えるのだ、しかし鑑定が出来ると言う事が今まで無かったわけで、それが出来るだけで凄い発見だと他の人は思っているのだが。


 「後カード鑑定だけど、自分の鑑定は別にして、他人を勝手に鑑定できません。これはうちの家族で確かめたんだけど、自分が鑑定のスキルを所持して居る事を伝えて、相手が鑑定されることを承諾していないと使えないみたいです。つまり知らないうちに鑑定される事が無い様に出来ているみたいなんです。後カードを取得していない人はステータスが無いのか見る事が出来ないみたいだね」と雫斗が続けて言うと、カード鑑定を取得しているチームSDSのメンバーと他の人で検証が始まる。雫斗は事が収まるまでの間、家族で行ったカード鑑定の検証を思い出していた。


 両親に鑑定のスキルが有る事を打ち明けたその日は、家族間での鑑定の検証を始めたのだが、如何せん両親とゴーレムの良子さんに加えダンジョンカードを取得していない香澄では検証の精度は限られる。その日は鑑定することを相手が承諾していないと、相手のステータスが見えない事と、カードを取得していない香澄は鑑定してもステータスが出なかったことくらいしか分からなかった。


 後日赤の他人を勝手に鑑定するのは憚られるので、家のじ~様である俊郎爺さんで試した所、やはりステータスが表示されなかった、カードを向けられてぶつぶつ唱えている孫を見咎めて。「なんじゃ、わしを鑑定しとるのか?」と聞いてきた俊郎爺さんに驚いて聞いてみると、どうやら母親の悠美に長老会として相談を受けたとの事だった、ちなみに相手に黙って鑑定しても効果は無いことがこの時分かったのだ。


 「ねえねえ、私を鑑定してみて」と野島京子が恭平に話しているのを聞き我に返る雫斗。しかしそれを聞き咎めた百花が止めに入る。


 「やめた方が良いですよ、京子先輩。鑑定されると自分のスリーサイズまで知られてしまいますよ」と諭すと、「それはいやね~」と京子が自分の体を見て躊躇する。


 そのやり取りを聞いていた雫斗は、カード鑑定を取得したその日、百花からシートアッパーを顎に貰った事を思い出して無意識に顎を擦っていると、それを見咎めた百花が「何よ?」と憤るが、雫斗は「べつに、・・何も・・・」と視線を外して言葉を濁す。


 「カードを使った鑑定はある程度わかったが、そもそも鑑定のスキルとは何だい?しかも複数あるみたいじゃないか?」と、雫斗と百花のやり取りを不思議そうに気にしながらも星士斗が雫斗に確認してくる。


 「僕も其れに関しては良く分かっていないんです、多分ランクアップのしたせいだと思うんですけど、スキルは使うと成長していくみたいなんです」雫斗にしてもまだ分からない事ばかりだ。一人で検証するにはどうしても無理がある、ここは他の人がスキルを取得して確認して行くしかない。


 そうなのだ、カードに表示されるスキルには数字が付いている、その数字が上がるに従ってスキルの使い勝手が良くなっていくのはスキルを使ってきた雫斗の心からの実感である。


 当然、百花達にもカード鑑定から鑑定スキルが使えるようになった状況を自分の考察とヨアヒムのアドバイス?を交えて伝えているが、察知系のスキルと鑑定の相性が良いといわれても良く分からない事に変わりはない。


 「しかしここ最近のダンジョン攻略の新発見には驚かされるな。しかも一階層で全てが雫斗が見つけた事だとはね」星士斗が褒めると。


 「だいたい、スライムだけを倒そうなんて他の人は考えもしないわ、しかもその事でスキルの取得の幅が広がるなんてとんだ盲点よね」瑠璃が、以前百花が言っていた事と同じことを言う。


 「そんな事よりステータスよ、どうなのやっぱり学力に影響は有るの?」と聞いてきた、雫斗が話した内容に驚愕して目的を忘れていたが、ようやく思い出した様だ。


 「その事なんですが、確かにここに書いた様にステータスの表記に知力の項目は有りますが、それが直接学力と結びつくかというと良く分かりません。アルファベット表記ですがAが最高なのかさえ分からないんです、ただ言える事は感覚として記憶力や理解力は上がっていると思います」と雫斗は正直な気持ちを伝えた、感覚的な事ではあるが、憶測だけよりかは良いと思ったからだ。


 「そうね、私も以前より学力テストの順位が上がったわ」と百花も肯定する、恭平や弥生も同じ気持ちらしく頷いている。


 「な~~、言った通りだろう。やっぱりダンジョンでステータスを上げた方が試験勉強には良いって」と星士斗先輩が嬉しそうに話す。


 「何を言っているの、雫斗達はちゃんと勉強しているから学力が上っているのよ。貴方はダンジョンでステータスを上げたいだけでしょう?それだと受験勉強にはならないわ」と瑠璃先輩がダメ出しをする。確かに下地があって学習能力が上っても、勉強しなければ意味がない。頭が良い=勉強が出来るとは限らないのだ、学習とは文字どおり学ばなければ身に付かない。


 「そうは言ってもよう。このままだとじり貧だぜ」と原因は星士斗先輩の学力の低さから、来年受験する予定の探索者養成学校の試験に受かる見込みがない事なのだが、星士斗先輩がさも自分には関係のない事のように言う。


 「分かっているわ、星士斗は勉強する時、集中力が続かないから、これまで時間が限られていたけど、此れからはダンジョンで息抜きが出来るから、勉強する時の集中力も上がるでしょう。今日から放課後ダンジョンでスライムを倒した後、私か星士斗の家で受験勉強しましょう」とこれまでの受験勉強に加えて新たにダンジョンの探索を追加する事を宣言する瑠璃先輩。


 「えええ~、ダンジョン探索と受験勉強を一緒にやるのか?」星士斗の思惑とは違う時間割を決める瑠璃に、絶望の眼差しを向ける星士斗に対して。


 「当たり前でしょう、貴方自分の置かれた状況を理解しているの?。合格が絶望なのよ、千いえ万に一つも可能性が無いのよ、此処はダンジョンで知能と集中力を上げるしか受かる見込みが無いのよ。藁よりましでしょうけど、縋りつく事が出来るものなら何でも掴まなきゃいけないわ」と真剣な表情で瑠璃が言い放つ。ひどい言われようだが、これまで星士斗の勉強を手伝ってきた瑠璃の本音らしい、彼がどれだけ受験勉強が・・・いや勉強自体が苦手だったのかが良く分かる台詞だった。


 取り敢えずスライムを倒さなければ始まらないので、今日は全員で沼ダンジョンへ向かう事にした





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