第32話 モフモフは至高の存在であると自負すれども、カワイイの定義は如何なるものか?。(その1)
ダンジョンからの帰りに、ミーニャをどの家で保護するかについて少し揉める事になった、百花が名のりを上げたのだ。
「この子は、私の家で飼う、違った保護する事にするわ。着ている服も汚れているから変えなくちゃいけないでしょう。それに女の子だから雫斗の家だと心配、じゃ無くて。色々と不便でしょうから」と百花が”私の家に行きましょう”と言った途端ミーニャが雫斗の後ろに隠れて警戒する。百花がいくら雫斗の友達だと言っても、助けてくれた雫斗に懐いて居るのは一目瞭然だ。取り敢えず毛を逆立たせて唸るミーニャをなだめる。
「百花ミーニャが警戒して居るから、僕の家に連れていくよ。母さんも香澄も、良子さんもいるしね」とそこは譲れないと宣言する。どっちにしても雫斗から離れようとしないのは一目瞭然の事なので、百花も諦めが付くだろう。
「百花、諦めなさい。助けてくれた雫斗を信頼しているみたいだし、べつに会えなく無くなる訳じゃ無いもの」と弥生が助け舟を出してくれた。状況が百花より雫斗の方に傾いている事で、渋々承知する百花だった。
ミーニャを迎えた高崎家は、ちょっとした騒となった。幼いとはいえ黒豹の様な猛獣が日本語で挨拶してきたときの家族の表情に、雫斗が吹き出したのは言うまでもない。
とりあえず汚れた体をどうにかしないといけないので、お風呂を進めたがミーニャは身体を洗うという事が理解できなかった。ミーニャの身体を綺麗にするという行為は、母親に舐めてもらったり自分で舐めたりして綺麗にしていたので、お湯で汚れを落とすなどやった事が無いのである。
ましてや湯船につかるというのは想像もできなかった、猫を洗う感覚で雫斗が風呂場で洗おうとすると、母親と家政婦ゴーレムの良子さんに止められた。
猫のような体つきをしているが紛れもない女の子なのだ。女の子と一緒に風呂場に入るなどとんでもないと怒られたのだ、姿は獣でも意識的には女性と認識しているみたいだ。
結局良子さんが洗う事に成り事なきを得たが、風呂から出たミーニャに香澄が抱き着いてきた。最初は警戒して父親の海慈の後ろに隠れて見ていたが、無害だと分かると首筋に抱き着いて甘えだしたのだ。
「わぁ~、もふもふだ~。すぅ~はぁ~、すぅ~はぁ~」顔をうずめて匂いを嗅いでいた香澄を振り払うでも無く、少し迷惑そうにしながらも猫座りして。
「香澄ちゃんって言うんだ、ミーニャだよ、よろしくね」と言葉をかける、すると香澄は挨拶していない事に気が付いて、がばっと顔を上げるとミーニャの正面に回り。
「香澄はね、香澄っていうの。ミーニャお姉ちゃん、よろしくね」とにこっ~と笑って。「お姉ちゃん。なでていい?」と今更ながらに聞いてきた。
ミーニャが戸惑いながらも承諾すると、香澄は笑顔で自分の部屋へ駆け出した。自分の部屋といっても今まで両親と一緒に寝ていたのが、これからは1人で寝なさいと寝床を寝室の一角に設たのだ。そこを自分の部屋と決めた香澄はその場所に自分の持ち物を置き始めたのだ、そうは言っても寂しくなるのかたまに両親の布団に潜り込んで来るらしいのだが、両親と同じ部屋とはいえ、いきなりの一人寝は寂しいのだろうと、そこは許しているみたいだ。
トコトコと自分のブラシを持ち出して来て、ミーニャの隣にペタンと座りブラッシングをはじめた。見慣れない物で自分の身体を梳かれて顔を硬らせていたミーニャだが、気持ちが良いのか次第に表情がとろけ出して、終いには寝っ転がってゴロゴロと喉を鳴らしていた。
その姿を見て“完全に猫やん”と思った雫斗だった。しかしまだ幼いとは言っても大きさは香澄の1.5倍はある。猛獣然としたミーニャの隣で、毛並みを整えようと真剣な表情でミーニャのブラッシングをする香澄と、蕩けて液体になっているミーニャとのギャップを微笑ましさで見守っていると。
「雫斗も、お風呂に入ってらっしゃい」と母親の悠美に言われて、後ろ髪を惹かれる思いで渋々風呂場へ向かったのだった。
雫斗が風呂から出ると、困り顔の悠美と良し子さんが話しているのが聞こえて来た。
「如何しましょう?、ミーニャちゃんのご飯、私達と同じで良いかしら?」と悠美が困っている。何時もは家族4人で台所の食卓を囲んで食事をして居たが、今日はミーニャというお客さんがいる為、居間の座卓に食器が並べられて、料理が運ばれていた。
「どっうでしょ?。あっ雫斗サッん、ミーニャさッンの食事は如何しッましょう?、私達ッと一緒でいいでッすか?」目ざとく雫斗を見つけた良子さんが聞いて来た。
「大丈夫だと思うよ、普通にサンドイッチを食べてたし。お箸は流石に無理そうだけど、スプーンとフォークは多分使えると思う」雫斗はミーニャが器用に、カップとサンドイッチを両手に持って食べていたのを、思い出しながらそう言うと。
「そうなの、良かったわ。雫斗お父さん達を呼んできて、食事にしましょう」ホッとしながら悠美が言うと「分かった」と雫斗はリビングで寛いでいる三人を呼びに行く。
ミーニャと香澄が話しているのを、父親の海慈がほほえましく聞いている。当然香澄は保育園の事とか家族の事を話しているのだが、みーやにとっては良く分からない事だらけなので聞き役にってしていた。
食事の準備が出来た事を伝えると、皆で居間へと移動して来た。しかしミーニャのしなやかな動きとその毛並みに雫斗が見とれていると、海慈がおかしそうに「どうしたんだいと」言ってきたので、我に返った雫斗は誤魔化す様に何でもないと歩き出す、それでも。
「ミーニャ、凄い毛並みだね」と言いながら雫斗は思わず手で撫でそうになってぎりぎりで思いとどまった、それ程手触りを確かめたくなる毛並みなのだ。
「んにゃ、ぁ有難う御座います、香澄ちゃんのブラッシング?、気持ちよかったです。またお願いしたいです」とおねだりするミーニャ、よほど気持ちよかった様だ。
「うふふふ、うん又やってあげるね。でもほんと気持ちがいいね」と言いながらミーニャの服から出ている腕をなでている。多少うらやましげに見ている雫斗に気遣いながら恥ずかしそうにミーニャが話す。
「わぁ〜楽しみです。・・・雫斗さんなら、撫でて貰っても良いです」許可を貰った雫斗は思わず手が出そうになった、しかしミーニャを猫というか獣ではなく女性として認識し始めた雫斗は思いとどまった。
「う!あ、有り難う。今度おねがいするね」ヘタレな雫斗らしく遠慮すると、少し残念そうにミーニャが答える。
「そうですか、雫斗さんならいつでも撫でて貰っていいです」それを聞いた香澄が「香澄は?、香澄は?」と飛び跳ねて騒ぎ出す。
「うふふふ、香澄ちゃんも何時でも良いですよ。さっきは気持ち良かったです」とミーニャ応えると、その後ろから自分の息子のヘタレ具合と香澄とミーニャの微笑ましい会話にニヤニヤしながら海慈が付いて来る。
居間で良子さん以外が席に着き「いただきます」で食事を始めると、最初は香澄の隣で戸惑いながら器に盛られた料理を見ていたミーニャは、香澄がスプーンとフォークを使って食べ始めたのを見て、見よう見まねで恐る恐る同じ物を使って食べ始めた。
「何か~、食べられェ~無いものがッ有れば、遠慮なッく言ってクーださいね」と香澄の補助をしながら良子さんが言ってきた、どうやら香澄の隣にミーニャを座らせたのは、良子さんが手伝えるようにする為らしい。
「す~~ごく、美味しいです。雫斗さんから貰った食べ物も美味しかったですが、此れも美味しいです」とミーニャが感動して鳥の唐揚げにフォークを突き刺しながら涙ながらに訴える。
「そっ、そう。まだ沢山有るから遠慮なく食べてね」と悠美が多少引き気味に答えると。
「美味しいよね」と言いながら、同じように鳥の唐揚げをフォークで突き刺して香澄が口へ運ぶ。口をもぐもぐさせながら嬉しそうに見つめ合う香澄とミーニャに、全員が吹き出しそうになるのを堪えながら食事をしていく。
食事を終えて寛いでいると、ミーニャとじゃれ合っていた香澄が眠たそうにし始めて、つられてミーニャもウトウトしだしたので、居間を片付けてミーニャの寝床を設えた。
そこでミーニャが丸くなって寝るっている、まー無理もない雫斗が彼女をダンジョンから救出してからまだ数時間しか経って居ないのだ。
雫斗たちはリビングに移り、海慈と悠美は雫斗から今日の出来事を詳しく聞いていた。
「えっ、ダンジョンで地震があったの?。そんな話は今まで聞いた事が無いわ」と悠美が驚いていた。それもその筈、ダンジョンは入り口は地表と繋がってはいるが、内部は別の空間だと認識されているのだ。
ダンジョンの入り口から半径100メートルの円形の範囲は良く分からない空間の揺らぎが観測されているがそれ以外はいたって正常なのだ。言い方を変えればダンジョンの中は地球の地表の動きの影響を受けないと言う事なのだ。
ダンジョンが出現し始めてまだ5年しか経っていないが、今までダンジョンの中で揺れを観測した記録は無かった。
「揺れているというより、震えていると言う方がしっくりくるような、そんな感じだったよ。まるで何かに怯えているみたいだった」と雫斗が思い出しながら言うと。
「怯えるなんて、まるで生き物みたいな表現ね。それにしても困ったわ、ダンジョンが別の世界と繋がっているかもしれないとなると、今までの様にダンジョンを開放することが出来なくなるわ」と悠美が言うと。
「それは大丈夫みたいだよ、確認はしないといけないだろうけど、ヨアヒムが言うには
ダンジョンが別の世界とつながる条件がまだ整っていない筈だと言っていたから。多分イレギュラーでミーニャが運ばれて来たらしいよ」と雫斗は胡散臭いおじさんの意見だけどとそう断って言った。
「ダンジョンは別の世界とつながることが出来るのかい? 当たり前の様に話しているが、聞いた事がないぞ」と海慈が驚いた様に言うと。
「ダンジョン自体が別の世界みたいなものだから、その可能性は前から議論されていたの。でもこれで証明されてしまったわ、思わぬ形だったけれど」と悠美が困り顔で話す、そもそも異世界と繋がる事が出来るのは、深層ダンジョンの最深部だろうと予測されていたのだ、それが3層ダンジョンのしかも自分の管轄なんて、揉め事の種としか思えないのだ。
何れにしても、此れは中央のダンジョン協会に報告しない訳にはいかない案件なので、そうすると芋ずる式に伏せていた諸々が明るみに出てくることに成ってしまうのだ。しかし悠美は此れをすべてを明るみにするチャンスだと考えた、雫斗が鑑定のスキルを発現させて一か月余り、雫斗のパーティーメンバーは勿論の事、すでに鑑定のスキルを取得している探索者やダンジョン協会の職員など、結構な数がいるのだ。
「ま~~いいわ、雫斗達のパーティーは明日は雑賀村のダンジョン協会でその時の事を話して、どっちにしても本部からの調査が終わらないと沼ダンジョンは開放できないし、村の中央のダンジョンは収穫とスライムの討伐でいっぱいいっぱいだから、暫くはダンジョン探索は控えなさい」と悠美が爆弾を落とした。
雫斗はスライム討伐に関して暫くやめても構わないが、他のメンバーが承諾しそうに無いのだ。せっかく鑑定のスキルを取得して”昇華の路”でお宝や経験値を手に入れられるのに、それを禁止するとは百花がぶー垂れるのが目に見える様だ。
「昇華の路の事は大目に見るけど、流石に明日は其れ処じゃ無くなるわ、中央への報告とその後の対応を話し合わないといけないし、ミーニャちゃんの検査も有るからしばらくは大忙しよ」と悠美は明日のスケジュールを模索し始めていた。
「雫斗も暫くダンジョンに通い詰めていたからな、ここらで一休しても良いんじゃ無いか?」と父親の海慈が言う。確かにここ最近は百花達のスライム討伐に触発されてダンジョンに入り浸っていたのは事実だ、そのせいで魔導書の読み解きも暫くやっていなかった。
雫斗が大学や研究機関で保管されていた、ダンジョン産の本や石板を閲覧したいと申し込んだところ、まだ解読中だからと断られたのだが(多分中学生だと正直に言ったのが原因だと思うが)、奇妙な字体の解読に行き詰っていた研究者に、悠美を通して異言語習得のスクロールを提示すると、二つ返事で許可された。
流石に、原本は見せて貰えなかったが、研究者用のサイトでの閲覧が出来る様になったのは大きかった。 そのサイトで、既存の魔導書や石板といった物が、ほぼすべて見ることが出来る様になったのだ。ただ残念なのは鑑定のスキルはPCの画面越しには用を足さないと言う事が分かった事だ。やはり直に見て鑑定を使って読み解く方が、理解力はけた違いだった。
「僕はかまわなけれど、百花達がね、鑑定を取得したばかりだし、承服するかは判らないよ。もしグズったら説得は母さんがしてよね」雫斗は母親に丸投げする構えだ。
「あら?貴方達パーティでしょう。その位の説得で躓くようだと、ダンジョンでの危機回避に支障がでるわよ。大丈夫よ百花ちゃんも馬鹿じゃないわ、そのくらいは理解するわよ」百花も生命が掛かって来ると流石に聞き分けは良くなるが、今は時期が悪い、鑑定を取得して一日一回の昇華の路を探すのがメインの探索ではあるが、スライムを倒すと無条件で保管倉庫のLVが上がるので、ここは数多く倒して置きたい処なのだ。
「分ったよ、説得してみるよ。取り敢えず明日から沼ダンジョンは閉鎖になるんでしょう。村のダンジョンで、昇華の路の探索は許可してもらえるんだよね?」と雫斗が確認すると。
「それくらいなら良いわ、でも1階層でのスライムの討伐はダメよ。予約がいっぱいで余裕がないわ」と悠美が釘をさす、まだ鑑定スキルの取得条件は公表して居ないとは言え、さすがに1ヶ月も経つと噂が広まってきていた。ダンジョンカードの取得と、接触収納の取得で誤魔化しているとは言っても、普段は深い階層を探索している高LVの探索者が1階層をうろついて居ると、勘のいい人は何かあると疑ってしまう様だ。
「分って居るよ、昇華の路の探索がすんだら2層と3層でスライムを探してみるよ」雫斗は諦めたようにそう言うと、百花たちの説得に顔を曇らせる。スライムはダンジョンに満遍なくいる事はいるが、しかし1階層の方が多いのは既存の事実だ。
「じゃー明日の放課後は、皆んなで村役場に集まれば良いんでしょう?」と雫斗が確認すると。
「そうね、午前中は日本探索者協会の本部に報告して、沼ダンジョンの閉鎖と調査の日程の調整があるから、色々決まるのは午後からになるでしょうね」悠美が答えると。
「分った、じゃーもう寝るね」と言って雫斗は居間のほうをチラッと観て2階へ上がって行った
雫斗が2階に上がると、悠美と海嗣は顔を見合わせてため息をつく。雫斗が持ち込む厄介ごとには慣れたつもりで居たが、今日の出来事は次元が違う、何せ別の世界から人?が迷う込んだのだから。
子供達の手前平然としてはいるが、如何に対応していくべきかで道筋が大きく変わる、馬鹿正直に本部へと報告すると、政府はミーニャを接収して監禁されてしまう恐れがある、此処は長老達の悪知恵に期待するしかない。
「しかし、年頃の娘が家庭に居るというのも良い物だね、香澄も可愛くて良いが華やかさが段違いだね」と居間の方を見ながら海嗣が言う。
「あら!、貴方が女の人の話をするのは珍しいわね、如何したの?」と悠美が聞く、寡黙な海嗣が女性の話を振ってくるのは珍しく、妻として興味を持ったのだ。
「いやね、ミーニャの毛並みを見ただろう?触りたくても触れない雫斗が可笑しくてね。彼女が気を遣って撫でても良いと言っているのに、決心が付かなくて葛藤してるのが新鮮でね」いわれた悠美は吹き出した、子供の少ない雑賀村では子供達同士は家族のような感覚で付き合って居る、とくに歳の近い物同士は顕著だ。
そこに歳の近いと想われる女の子?が現れたのだ、浮き足立つ気持ちはわかるが、思春期で多少おっとりして居る雫斗が、初めて意識した女性がケモ耳だというのも雫斗らしいといえる。
「うふふ、少し安心したわ。雫斗の歳で女の子に興味が無いのも考えものだけど、多少は意識して居るのであればホッとするわね。でも相手が猫ちゃんというのもねどうかしらね」と複雑な表情で悠美が話すと。
「そこは大丈夫だと思うよ、言葉を話すとはいっても人とは違いすぎるからね。雫斗もそのことは理解しているさ」と呑気に話す海嗣だが、悠美は懐疑的だ。ダンジョンが出来て全ての常識が崩れた今とはなっては何が起こっても不思議ではない。しかも言葉を解する獣というのは今までいなかった事なのだ、そもそもこの世界の生き物では無いという、これから先自分たちの常識では測り知れない事が起っても不思議では無いのだ。
両親の心配をよそに、雫斗は自分の部屋で一つのメールを受け取っていた。勉強を始めようと思ってパソコンを立ち上げると、メールが来ていたのだ。
内容は、依頼していたベビーゴーレムの魔核の自我の確立が成功した様だ。雫斗が倒したベビーゴーレムからドロップした真核は、普通のゴーレムからドロップする真核よりかなり小さかったのだ。
最初に依頼した時は、その小さな魔核をゴーレムの魔核だとは信じて貰えず、ゴーレム型アンドロイドを製造する企業は渋っていたが、その企業を立ち上げるきっかけとなった、高崎家で働いて居る家政婦ゴーレムの良子さんの取りなしと、いくつかのベビーゴーレムの魔核の提供で引き受けてくれたのだ。
雫斗は祝福の言葉と、依頼した内容でのアンドロイドの製造と指定された口座への送金を済ませる。ゴーレム型のアンドロイドは、魔核自体の数が少ないのと製造過程が特殊なため、かなり高額になるのだが、雫斗の場合は魔核の持ち込みと研究用の魔核の提供と特殊な義体の依頼で、かなり安くした価格で作ってもらえる事が出来た。
雫斗が提案した義体の仕様と、これから先ベビーゴーレムの魔核が定期的に市場に出ることで製造コストが抑えられる事への期待から、需要が見込めると考えた企業が雫斗の提案に乗る形で試験的な義体の開発と、ベビーゴーレムの真核の自我の覚醒を試していたのだ。
そうは言っても普通なら数千万円で造られるゴーレム型アンドロイドだ、今の雫斗には払えない金額ではないが。しかし未成年の雫斗の高額な買い物だ、当然両親の許可がいる。最初は渋っていた海嗣と悠美だが、雫斗の熱意と良子さんの取りなしでようやく許可してくれたのだ。
どうやら1週間程度で届けて貰える様だ、雫斗はワクワクしながら勉強を終えるとベッドへ入り眠りに付いたのだが。何時もは直ぐに寝付ける雫斗だが、その日はなかなか寝付けずにいた、少し気持ちが昂って居る様だ。
その原因がミーニャなのかゴーレムなのかは分からないが、しばらく悶々としてベッドの中で過ごしていた。それでも睡魔は襲ってくる様で、何時の間にか寝息が聞こえて来た、どうやら寝付いた様だ。




