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ダンジョンを探索すると、いろいろな事が分かるかも。(改訂版)  作者: 一 止
第1章  初級探索者編

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第31話  攻略の自信と確信は、ダンジョンの揺らぎと共に、暗雲へと変わるのか?(その3)

 雫斗が鑑定のスキルを覚醒してから半月あまり、ようやく百花と弥生も鑑定が使える様になった。早いか遅いかは別にして、誰でも保管倉庫と鑑定のスキルを使える事が立証できたわけだ。


 この日は百花達も、鑑定のスキルと察知系のスキルの合成を目指してダンジョンで訓練する様だ。雫斗が取得したやり方は教えているが、こればっかりは感覚的なもので各自が習得に頑張るしかないのだ。


 その日のノルマ(昇華の路でお宝と経験値をゲット&スライムの討伐)を終えてそろそろ帰ろうかと思ったときそれは起こった。


 地鳴りの様な音が聞こえてきたのだ、只ならぬ気配におののきながら入り口を目指していたらいきなりダンジョンが震えだした。


 立って居られないほどの揺れに這いつくばりながら、地震が収まるのを待つ。動けないのでそれしかやる事ないのだ、それにしてもダンジョンが揺れるなんて聞いた事が無い。崩れ落ちるのでは無いかと慄きながら揺れが収まるのを待つ。


 しばらくして揺れが収まると、雫斗は急いでダンジョンの入り口を目指す。空間把握の感触では、あれほどの揺れがあったのに崩壊している所が無い様だ、さすが不破壊属性だと感心しながら歩いていると、めったにない水たまりに何やら黒い布の塊が落ちていた。


 布の塊に見えたのは服を着た獣だった。頭の上には猫耳が付いているので最初猫先生かと思ってしまった、しかし真っ黒の毛皮でスッラとした体形は、三毛猫の丸っこい猫先とは全然違っていた。死んでいるのかとびくびくしながら、木刀を保管倉庫から取り出してつついてみる。


 「びぎゃ~~」弱々しい声と共に少し身じろぎする、へっぴり腰の雫斗が思わず飛びのいて警戒する。


 雫斗をチラつと見て、すべてを諦めた様な瞳で「みぎゃ~~」と泣いて目を閉じた、すると雫斗異言語習得のスキルが仕事を始めた、「みぎゃ~~」と泣いた声に重なって「腹減った~~」と聞こえてきたのだ。


 「大丈夫かい」と恐る恐る尋ねる雫斗に反応して、「言葉がわかるの?どうして?」とその生き物が話す。


 どうやらモンスターの類ではない様だ、意思疎通の出来る魔物は聞いた事が無い。「其処から出すから動かないでね」と念を押して雫斗は水たまりから大きな猫を助け出す。


 濡れた毛をタオルで拭くと、きれいな毛並みに驚く、まだ若い個体のようで、性別はわかりにくいが女の子のようだった。

 

 「水を飲むかい?」と聞くと嬉しそうに「欲しいです」と言うので、マグカップを取り出して水をペットボトルから入れてあげる。


 地面に置くと、そのままぺろぺろと猫の様に飲むのかと思いきや、正座して器用に両手で挟んで、コクコクとカップを傾けて飲み始めた。呆気に取られている雫斗をよそに「有難うございました」と丁寧にカップを返してきた、するとその大きな猫のお腹が鳴た。


 お腹を押さえてキョロキョロと周りを見回している大きな猫に、軽食用に持ってきたサンドイッチをラッピングを外して渡してあげる。


 器用に両手でサンドイッチを持ち上げた猫がクンクンと匂いを嗅いだ途端、ハムハムと食べだした。正座した猫が両手でサンドイッチを持って食べている構図に大きさは別にして違和感しか無い。


 落ち着いたところで聞いてみる「君名前は有るのかい?僕は雫斗。高崎 雫斗」するとその猫は首を傾げて。「たかさき しずと」とよっくり発音する、暫く声に出していると、ニコッと笑って。


 「私は、ミーニャってお母さんから呼ばれているの」と言う、良かった名前は有るみたいだ。どうしてここにいるのか聞くと、人間に追われている内に洞窟に迷い込んで気が付くと出られなくなって、さまよっている内に力尽きてしまったみたいだ。


 「お兄さんは狩りの人なの?ミーニャは売られて奴隷になるの?」と悲しそうに聞いてきたので。


 「安心して、此処では奴隷とかそんなものは無いから、ところでこういうのは持っている?」とダンジョンカードを見せる。


 「お兄さん、潜る人だったんだ。初めて見たよ、潜る人には悪い人はいないってお父さんが言っていたけど、本当だった」と嬉しそうに言う。どうやら持っていないみたいだ。取り敢えずダンジョンから出ることにして一緒に来るように促す。


 ダンジョンの入り口には百花達がなかなか出てこない雫斗をイライラしながら待っていた。


 「何をしていたのよ?心配して探しに行くところだったじゃない」と凄い剣幕で怒る百花に、びっくりして尻尾を膨らませて警戒するミーニャ。


 雫斗は百花の姿と入り口が何時もの様に存在していることに内心ほっとしていた、ミーニャの話を聞く限りどうやら別の世界と繋がったようだ。


 一時的につながったてミーニャが運ばれて来たのかは分からないが、ミーニャ自体この世界の住人ではない事は事実だ。


 雫斗の後ろから現れた黒い猫、いや猫というよりクロヒョウの子供の佇まいで、威嚇している姿は野生そのものだ。


 ミーニャを目にした百花が歓声を上げる「ま~~、なにこれ可愛い。雫斗何処で見つけたの?」物おじしない百花が近ずくと


 「誰だ?・・近づくじゃない!!近づくとケガするよ」と牙をむきだして爪を出して威嚇するミーニャ。


 「待て待て、ミーニャ。その子は僕の知り合いだから大丈夫だよ、そんなに怒らないで。百花もむやみに近づかないで」とミーニャをなだめると。


 「雫斗、何”にゃーにゃ”言ってるの。その子どこの猫なの?」と弥生が言う。そこではたと気が付いた。異言語習得の事を、雫斗はミーニャと普通に話している気になっていても、百花達には”にゃーにゃー”言い合っている様にしか聞こえないらしいのだ。


 「ミーニャ、ちょっとついて来て」とミーニャを連れて池のほとりに降りていく、ヘドロの波で酷い有様だった池のほとりはきれいに整備されて元の公園によみがえっていた。


 「あっ、いたいた。」池のほとりに居るスライム様を見つけた。雫斗はスライムバスターを一本出してミーニャに渡す、器用に二本足で立ってスライムバスタ(花火)を手に持ったミーニャに”あらっ、かわゅい”とハートマークをまき散らす百花を無視して。


 「今から火をつけるからびっくりしちゃだめだよ。最初にシユウーって音がして炎が出るけど、しばらくして黄色い煙が出たらスライムの上に落としてね」と此れからやることを説明する。


 「これにひがつくの? その丸っこいのがスライム? 煙が出てきたらその子の上に置くの?」と自信なさげにミーニャが話す。


 「まだたくさんあるから、一回や二回の失敗は大丈夫だよ」と雫斗。他の面々は後ろで黙ってみている。


 「うん、わかった。やってみる」とけなげに承諾するミーニャ。雫斗はスライムバスターの先に指先を近付けると指先からライターの様な火が出る。ちなみに雫斗はカメレオンサラマンダーの群体を倒して火魔法のスキルを習得済みだ。試練の間の死闘のおかげとはいえ、その時は勘弁してくれと思ったのは内緒だ。


 火の付いたスライムバスターを頃合いを見てスライムの上に落とすミーニャ、暫くすると飲み込んだスライム様が破裂して光に還元されていく。


 後には小さな魔石とミーニャの手にはダンジョンカードが現れる。雫斗は小さくガッツポーズをする。


 保管倉庫からスキルスクロールを取り出して、ミーニャに手渡す「使うって強く思って御覧」スクロールを持ちながら「異言語習得?」と聞いてくるミーニャ。スキルはスクロールに限らずオーブでも触るとどんなスキルか認識できる。


 「そう、帰れるようになるまで、暫くはこっちで暮らすことに成るからね。言葉が分からないと不便だし」とほほ笑む雫斗。


 安心したのかミーニャが持つスキルスクロールが光へと還元されてミーニャに取り込まれていく。


 「どう?変わったことは無い?気分はどう?」と雫斗が日本語で話かける。最初は不安そうにしていたミーニャが「ううん大丈夫、変なとこは無いよ」と日本語で答えた。どうやら成功したみたいだ。


 成り行きを見守っていた百花が「どう?終わった」と聞いてきた。雫斗の意図を組んで終わるまで我慢していたみたいだ。


 「ななな、言葉が分かる」と驚くミーニャ。「そういうスキルだからね。さあ~、お互いに自己紹介しょう」と百花達を促す。


 「私は百花。ミーニャっていうの?よろしくね」といいながら百花が近づいてくる。


 「百花。ペットじゃないんだから、むやみに触っちゃだめだよ」と手をワシャワシャさせながら近づく百花にくぎを刺す。「うっ!」百花が正気を取り戻して止まると。


 「私は弥生、雫斗の友達よ。よろしくね」と何気に無害をアピールする弥生。ミーニャはすくっと立ち上がりお辞儀をして「ミーニャです、よろしくお願いします」と可愛げに挨拶する。


 ”く~~かわいい”と肩を抱いて悶える百花を無視して「僕は恭平、雫斗のパーティーメンバーだよろしくね」と恭平。


 一通り挨拶を済ませると百花と弥生がミーニャを囲んで女子会を始める、ミーニャの仕草から女の子と決めている雫斗だが確信は無い。後で男の子だったら謝って置こうと、あたふたと百花と弥生の質問攻めに対応しているミーニャを眺めていると


 「どうしたんだい?あの子。ダンジョンに居たみたいだけど、モンスターって訳でも無さそうだし」と恭平が聞いてきた。


 「さっきの地震は覚えている?」と雫斗が聞くと。「ああ、凄い揺れだったね。まるでダンジョンが震えているみたいだった」と恭平が思い出しながら答えた。


 「彼女が原因で揺れたのか?揺れが原因で彼女が現れたのかは分からないけれど。別の世界とつながったみたいだね、ミーニャは別世界の住人だよ」とこともなげに言う雫斗。


 「おいおい、平気な顔で言うけど、大事じゃ無いか?」と恭平。


 「どっちにしても今日はもう調べようがないよ。報告だけして明日は皆で相談だね」ともう帰る気でいる雫斗だが、恭平は心配で聞いてきた「ダンジョンのゲートは大丈夫かい?」。


 「ダンジョンの入り口から魔物が出て来たことは無いからそれは心配していないよ、問題はダンジョンの中で別の世界と繋がっている事だけど。そんな事今まで聞いた事が無い。どっちにしても僕たちだけでは対処できないし、大人に丸投げだね」と恭平の心配をよそに僕たちは関係ないと主張する様だ。


 「あの子はどうするんだい?」と恭平が聞いてくると。


 「決まっているよ、僕たちの家でしばらく面倒を見るよ。ミーニャのお兄ちゃんになったからね」とニマニマして雫斗が言う。


 恭平は百花と変わらないじゃんと思いながらも、少しうらやましい気持ちが湧き出ていた恭平だった。



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