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ダンジョンを探索すると、いろいろな事が分かるかも。(改訂版)  作者: 一 止
第1章  初級探索者編

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第27話  ダンジョンの恩恵は世界の安寧へと導くのか、はたまた疑心暗鬼の温床になるのか?(その1)

 こんにちは、イチトマルです。もうすぐ1000PVに到達しそうです。この作品を読まれている皆様に感謝を。

 雫斗は、隠し通路の発見と【叡智の書】を取得したことは、メンバーの皆には内緒にして帰宅した。昨日の今日でまた発見した事を伝えるのに気おくれした事と、鑑定をカードを介さず使える事が出来た経緯を、うまく伝えることが出来そうになかったからだ。


 隠し通路にしても奥にあるドアにしてもどう説明したらいいのか皆目見当もつかないのだ、それならいっその事、全部検証してからまとめて説明した方が良いかもしれ無いと思ったのだ。【叡智の書】からうまい説明を引き出せるかもしれないと思ったのも事実だが、取り敢えず黙って居ることにした。


 夕食も終わり、勉強も一段落していよいよ検証で有る。そのことを考えると勝手に頬が緩んでくる。心を落ち着けて保管倉庫から【叡智の書】を取り出す、タイトルは見た事も無い文字で書かれているが、スキルのおかげで確かに読める。


 本の中央にはひげを蓄えた男性の顔が描かれていて、結構リアルな写実になっている、高ぶる気持ちを抑えて、最初のページをめくる。


 最初のページには作者がこの本を作った経緯と使い方が書いてある、どうやら本の中身を見る為には契約の儀式が必要みたいだ。


 試しに他のページを見てみると全部白紙だった、その時の雫斗は気がせいていて一瞬だけ罠の気配を感じたが、儀式事態簡単だった事も有り注意することが出来なかった。


 その儀式とは、・・・自分の血を一滴、表紙に書かれている顔の口元に押し当てるだけと書いてあった。物は試しと親指に画びょうを刺して血を少し出すと表紙に書かれている顔の口元に押し当てた。


 「ペロリ」。雫斗の背中に冷たい衝撃が走る、一瞬で飛びのき本との距離を開ける、指をなめられた気がしたのだ。注意深く【叡智の書】を見ているが、変わったところは無い。・・・いや、表紙に書かれている顔が雫斗を見ていて、なぜか目が笑っている気がする、暫くすると本の中央から光があふれだし瞬く間に強い光で見ることが出来なくなってきた。


 光が収まっても視力が戻らなくてしばらく無防備の状態が続いた、ほんの数秒間の出来事だが、雫斗には長い時間に感じられていた。


 机の上には相変わらず【叡智の書】が鎮座している、変わっている様には見え・・・・いや顔が立体的に浮かびあがっているのだ。


 その顔は雫斗を見据えていた、おかしなものを見る様に若干目元が緩んでいる気がしたが。「うっわ。なにこれ、気持ち悪い」動揺した雫斗は声に出して今の気持ちを吐き出していた、驚いた事を隠す意味もあったのだが、返事があるとは思いもしなかった。


 「我に対して気持ちが悪いとは、大層ぞんざいなご主人も在ったものだな」喋ったのが本だと気が付いた雫斗は驚きと共に唖然としてしまった。つまり警戒心を解いてしまったのだ。


 


 「え~と、話をしているのは本さんですか?」と雫斗は気が動転して良く分からない事を聞いてしまっていた。


 「我が名は、本などと言う陳腐な名ではない。失敬な主人であっても主には変わるまい、教えて進ぜよう。ダンタモルア・スマアセント・ド・ピニエラルソン・ヨアヒムと呼ぶがよい」雫斗は名前を言う前の言葉は理解したが、あまりに長い名前で呆けてしまった。


 「へっ?・・・ダンタモ・・・すみませんもう一度お願いします」。


 「・・・・覚えられないのであれば、ヨアヒムで良いぞ。又はグリモアールと呼ぶがよい」【叡智の書】の表紙の顔が真面目そうに、そう言ってきた。疑問に感じた雫斗は驚き”えっ?グリモアールって魔導書の総称じゃ無かったか?”そう考えた時。


 「魔導書とは魔術に関するあらゆる分野の総称だな。我の名に相応しかろう、グリモアちゃんでもよいぞ」。雫斗は最後の言葉でずっこけった、その拍子に完全に警戒を解いた、茶化して来る相手に、緊張するのが馬鹿らしくなったのだ。


 「グリモアちゃん、君とコントをしている暇は無いんだけれど?」そう言って雫斗は少し怒っているぞ~と気持ちを伝える。するとグリモアちゃんは目玉をグルグルさせて居たが、しばらくして。


 「コントとは、笑いを伴う寸劇、又は風刺や社説を機知に富んだ言い回しで、短い物語にしたものだな。ふむ!この世界の道化師は多岐にわたるのだな?」。 ”おお~、叡智の書の名前は伊達ではない様だ。地球の事なのに的確に指摘してくる”と雫斗は感心して聞いてみた。


 「流石だね、何処からの情報なのかな?」何気なく聞いた事だが、帰って来た答えにげんなりした。


 「ふふふふ。契約者の知識を拝借するなど、我に掛かれば造作もない事。しかしインターネットなる物の使い勝手の良い物よ、おおおおお~知識が流れ込んでくる~~」と恍惚の表情で言うヨアヒムに若干引き気味に「カンニングかよ、考えている事を覗かれるのは嫌なんだけど?しかし、何処からインターネットに繋がってるの?」と雫斗、するとヨアヒムが考え深げに。


 「思考とは己を昇華させる行為に他ならぬ、鍛え抜かれた心を他の者が覗き見ることなど、たとえ神であろうとも出来ぬものよ。しかしお主の様な精神の未熟な者には出来ぬことだな。わが主よ、契約者として忠告しよう。心を鍛える事だな、こう些細な事で動揺している様では、邪な考えが駄々洩れだぞ。・・・インターネットなる物には、ご主人のスマートフォンから繋がる事が出来るでは無いか」と自分のスマホが勝手に使われて居るのだが、その時は考えている事が全て知られて居る事に動揺してスルーしてしまった。




 しかし的確な忠告ではあるが、雫斗は素直になれない気持ちになる、叡智の書のイメージが、顔の浮き出たおっさんを別にしてもかなり違うものに感じたのだ。


 「え~と、ヨアヒムさん?。僕の考えている叡智の書と大分ギャップがあるんだけど」と疑問を口にする雫斗。


 「ふむ、まずはその溝から埋めねばなるまい。なんでも聞くがよいぞ、主よ」とドンと来いと強気の叡智の書。


 「すべての事柄がその本を読めば分かると思っていたんだけど、どうなの?」と雫斗が聞くと。


 「我の本質は知識の探求と蓄積では在るが、知りえた事を無条件でホイホイ伝えているのであれば、主の為には成らぬ。その為わが本の中身は白紙となっている、主が経験した事柄の補完と記録が我の役目と心得ておる。其方が経験したことで疑問に思った事はなんでも聞くがよい、素直に答えるとは限らんが、我は契約上嘘は付けん」と悪戯っぽく答えるグリモアちゃん。


 いちいち癇に障る言葉に少しイラつきながら、雫斗は今日の出来事を聞いてみた「昨日取得した鑑定だけど、LVアップしたわけでも無いのに、今日急に変わったのはどうしてだい?」。


 「鑑定のスキルは、物の実体を知りえる事が本質と言える、したがって探知系のスキルとは相性がよい。気配察知と結合して状態が変化しただけであろう、その証拠に情報の深遠は変わらぬ」雫斗が思っていたこと大差は無いが、確かに確証を言われて安心はする、しかしこの胡散臭い、オッサンじみた性格の叡智の書の精はいまいち信用が出来ない。ここはヨアヒム自身の言うとおり検証の補完的な使い方が無難だろう。


 「情報の深遠と言う事は、鑑定のスキルのランクが上がると知る事柄が増えるって事?」と雫斗が聞く。


 「当然である。ランクアップとは一段上に昇格するのと同じであるからな、ランクが上がっても何も変わらなければ意味が無かろうに」とヨアヒム。いい加減頭にきてゴミ箱にでも放り込みたい衝動に駆られる、気持ちを落ち着けて雫斗は今日一番気になることを聞いてみた。


 「ダンジョンで隠し通路を見付けたんだけど、あれで打ち止めかな?」ちょっと不安そうに雫斗が言う、ドアに浮かんだ文字を読んだわけでは無いため、確証はないがお宝が良かったこともあり、一番の不安はもう出現しない事である。


 「その道は、昇華の路と呼ばれておる。己が躍進するのに必要と感じた事を実態化出来るやも知れぬ可能性を秘めた経路である故。その事からただの一度ということはあるまい」とヨアヒム、しかし彼が言うことは、確証なのか、惑わせて居るのか、いまいち信用出来ない言い回しをして来る、要するにまた探せば見つかる可能性があると言っているのか。


 「ふぅん、そうかまた見つかるのか。明日探してみて見つかったら、今度恭平達も誘ってみよう」と雫斗が独り言を言うと。


 「それはおススメ出来ぬやも知れぬ。本来自己を強化又は進化させることに於いて、他の介入は不適切である、よって複数人では路は開かれぬものと心得よ」と言うヨアヒムの言葉に雫斗は唖然とした。


 「じゃーパーティを組んでいたら見つからないって事? 待てよ、今日はパーティを組んでいたっけ。そうか、一人だったから隠し通路?昇華の路だっけ、その道が発見出来たって事か、見つけられる条件って、やっぱり鑑定スキルの取得かな?」そう聞いてきた雫斗にヨアヒムが答える。


 「スライムの100万匹の討伐は最低条件ではあるな、その恩恵で鑑定のスキルが付いてくる。そもそも各々が試練を克服するのに条件が同じわけが無かろうに。個々の進化の道筋に近道や定石など無きに等しい、其方たちがダンジョンと呼ぶ深淵の試練に挑みし時から常に試されていると心に刻むがよい」そう言われた雫斗は思い悩む、条件が同じなら雫斗がやって来た事を伝えれば済むのだが、其々に条件が違うとなればどう伝えれば良いか雫斗は分からなくなってきていた。


 不安そうな雫斗を気遣って、ヨアヒムが言う「主人よ、どの道、深淵の試練に挑みし者はそれ相応の力を示さねば、深淵の試練に認められはせぬ。其方が道を示すだけでも攻略の糸口には成ろう」確かに知り得た事を其のまま伝える事しか出来ることはなさそうだった。


 雫斗はもう一つの疑問を聞いてみた「昇華の路の奥にある扉は、やっぱりワープゲートなのかな?。しかも出口が複数有るみたいなんだけど」。


 「扉の転送される場所は、主人が次に邂逅した時の為にとっておくが良い。我とて主人の楽しみを奪う程、無粋では無い」ヨアヒムはそう言うが、雫斗にしてみたら、正解を聞いた方が楽で良かったのだが。そうはいっても、この臍曲がりのおっさんが、正直に話すとは到底おもえなかった。


 そういえば、ヨアヒムがダンジョン、つまりヨアヒムの言う深淵の試練が認めるとか言って居たのが気になった。その事を聴こうとした時、接触収納に仕舞ってあったスマホが時を教える、当然バイブであるもう頭の中で鳴り響く音にはこりごりだ。今日の雫斗は【叡智の書】を調べる事に期待が大きかったこともあり時間を忘れそうだと用心してタイマーを掛けていたのだ、残念なオッサンのせいで期待外れには終わったが、知りえた事はかなり大きい。


 「悪いヨアヒム。もう寝る時間だ」慌てた雫斗はスマホのタイマーを止めると、さっさとベッドへと入り寝息を立てる。高崎家は自衛隊にいた父親の影響か寝起きがすこぶる良い、眠った雫斗に机に上に置いていかれた【叡智の書】は一言。


 「我を放置プレイとは。中々やるではないか、わが主よ」。



 ダンジョンを出て、雫斗たちと別れた百花と弥生が話しながら歩いている。どうやら雫斗の様子がおかしい事に気が付いた様だ、感の鋭い女の子たちである。


 「今日の雫斗、少し変だったわね。何かあったのかしら?」と百花が言う。


 「そうね、同じことが前にもあったわね、何か見つけたんじゃない?」と弥生は雫斗が接触収納を取得した時の事を指摘した。


 「あの子も懲りないわね。どうせ後から皆に話す事に成るなら、最初から話せばいいのに。何を考えているのかしら」と百花がダメ出しをする。


 「どっちにしても、雫斗の事だから隠し通すことは無いでしょうけど、気に入らないわね。いつか締めないといけないわ」と百花が物騒な事を言ってくる、そうなると雫斗に逃げ道は無いので、弥生がフォローに回る。


 「昨日の今日で、見つけた事を話すのに気後れしたのかもね?。どっちにしても何れ話すでしょうし、許してあげなさいよ」言われた百花も考えを改める。


 「そうね、今回は見逃してあげるわ。それにしてもスライムを10万0匹の倒すのって結構な苦行よね、倒しきるのに一体いつになる事やら、じゃーまた明日ね。」と言って百花が家の方角へとわき道を逸れていった。


 「またねー」一人になった弥生は少し考えた、何故スライムなのだろうかと、一階層にいる魔物ではあるが襲われる心配のない魔物の筆頭なのだ。襲われる心配がないとはいえ事故は起こる、纏わり付かれてけがをする人が年間で言えば数名ではあるが出る事はある、しかし亡くなった人がいるとは聞いた事が無いのだ。


 無視をすれば問題ない魔物が、重要な位置を占めていることに違和感があるのだ。100万匹という相当な数を討伐することに、嫌気がさしている事も有るが他の魔物でもいい様な気がしているのだ。しかしスライム10万匹で鑑定のスキルが覚醒する可能性があるなら倒すしかないのである。


 そんなことを考えながら家に着いた弥生は、珍しく早い時間に京太郎お爺さんが家に帰っているのに気が付いた「ただいま~。あらお爺ちゃん今日は早いのね」。


 「ロボのやつがおらんからな、やつに捕まると簡単には開放してくれんからな」と少し嬉しそうに話す、なんだかんだ言っても自分の技術を受け継ごうとして来る人に、教えることが嬉しい様だ。


 「そのロボさんからは、連絡は有ったの?」と弥生が気にした様子で聞いてきた、やはり何処に行ったのか気になるようだ。


 「おお~連絡があったぞ、明日の昼前には帰って来るそうだ」京太郎爺さんが嬉しそうにそう言うと。


 「向こうの会社とは守秘義務契約をしてきたようだ、保管倉庫に10tは入ると言っておったぞ。明日は持てるだけ荷物を持って来て、残りを運んでくるには数日かかるみたいだな、陸送だとやはり時間が掛かるからな」それが陸の孤島と言われている雑賀村のマイナス点で、人員や軽量の荷物はドローンでの空輸で行えるため不便は感じないが、重量物の輸送が難点だった。


 しかし保管倉庫に荷物を積んで空輸が出来るとなると話は変わってくる、後は保管倉庫のスキルがランクアップした時どれ程の重量迄詰めるのかが問題となって来る。


 「そう、明日帰って来るの。う~~ん、じゃー明日は無理かな重力兵器は?」弥生と百花の一番の問題点は、打撃武器の調達である。岩に擬態する魔物の話を聞いた事で、注意して見ていた事も有り気配察知のおかげかは分からないが、怪しい岩がいくつか有ったのだのだ。泣く泣く諦めたのだが、よくよく見て核心を掴んだのだ、こいつはベビーゴーレムが擬態している岩だと。


 残念そうに言う弥生を気遣って京太郎爺さんが「明日は無理じゃろう。帰ってきていきなり制作できるとは思わんが、しかしロボの事だから分からんぞ。とりあえず明日聞いてみんことには何とも言えんな」と期待はするなと言う。


 「分かったわ、でも残念ねいくつかベビーゴーレムが擬態した岩を見つけたんだけど。仕方がないわね、気長に待つ事にするわ」と達観したように言う弥生。


 「そういう事だな、慌てても良い事は無いからな」そう言われた弥生は納得して自分の部屋へと入って行った。

 この作品を書き始めてもうすぐ3年になります。泣かず飛ばずの作品で自信を失い掛けて居ましたが、この1週間で1000pVを達成しそうで安心しました。既存の作品に手を加えただけのものでは在りますが、これ程多くの皆様に読んで戴けているという事実に感激している所です。


 取り敢えずは第1章の完結に向けて頑張ってみようかと思っています。本当に有難う御座いました。


  一 止

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