表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンを探索すると、いろいろな事が分かるかも。(改訂版)  作者: 一 止
第1章  初級探索者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/58

第20話  スライムはスライムでしかなく、やはりスライムなのか?

 雫斗は無事”トオルハンマー”を手にする事が出来た。元の大ハンマーからはだいぶ様変わりして以前の建設現場の道具としての姿は見る影も無く成って居る、一応ダンジョンで使う武器として作り変えられて居るので、ソコソコの値段がした。


 それでも素材の持ち込みと、ロボさんの一人前になる為の試験を兼ねて居る事に加え、装備収納を発祥させる条件を、早急に教えて貰えたことへの謝礼も考慮しての値段だそうで、本当ならその倍はするとのこと、雫斗にとってはラッキーな事案であった。


 支払いの方は済ませてある。ダンジョンカードの収納機能を発見した事への報奨金が振り込まれて居た為だ、しかもかなりの大金で引いてしまったが、しかし収納を使ってのパフォーマンスの分は含まれて居ないらしく、まだまだ増えそうだと恐ろしい事を悠美母さんから聞かされた。


 ”チームSDS”の他のメンバーにしても報奨金の多さにかなり驚愕していたが、一人だけ素直に「これで刀を打ってもらえる」と喜んでいた。百花がせっせっと金策に励んでいたのは武器の調達資金のためだった、これで少しは落ち着くかと思ったが、いつにも増してダンジョンでの鍛錬と魔物の討伐に励み始めた。


 雫斗は相変わらずスライムの討伐に余念がない、最近では時間の許す限り倒していた。新調したトオルハンマーの使い勝手はすこぶる良い、先端の重量を増した事でバランスが悪く成るかと思いきや、持ち手も太く頑丈にした事で降り抜くときのバランスも良く、防御に関しても。


 「ハンマーヘッドを軸にして、持ち手を使って相手の攻撃を防げば良い」と師匠からのアドバイスを貰って、百花や恭平と乱取りをして防御の鍛錬をしている。何と言っても一撃一撃が凄まじいので、鍛錬に付き合って貰っている彼らも気が抜けない様なのだ。


 変わった事といえば、1週間もしないうちにカード収納の覚醒の事が週刊誌にばれた。まだ”スライムバスター”の量産が出来ていなかったので、当然探索者協会の発表前だ。誰かからのタレコミらしいのだが、かなりの騒ぎとなった。


 当然発見者は誰か?とマスコミの連日の情報開示の要求に未成年であることを理由に隠し通した、したがって雑賀村はいたって平和である。しかし世間では混乱が生じた、”スライムバスター”の制作が間に合わず協会は苦し紛れに、本来は数日懸けて徐々に力をつけていき、それからスライムを100匹倒すのが本来のやり方だと、ハンマーなどの鈍器でのスライム討伐を奨励した。


 自力のある深層を探索している人たちが、数日間ダンジョンに籠って100匹のスライムを倒し、無事ダンジョンカードの収納を開放する事に成功すると、探索者協会主催でダンジョンブートキャンプと称して、3日間のツアー的な催を企画するに至った。その事業が機能し始めると、混乱も収まり事なきを得たが、暫く雫斗は発見者としてハラハラする日を送っていたのだった。


 もう一つ起こったことは、スライムを倒す花火の製作に、ほかの会社が名乗りを上げたのだ。胡散臭い会社が乱立しそうになったので協会が規制を掛けた。最初の花火製作所を入れて5社に限定したのだ。収納を覚醒させると探索者はスライムを倒すことが無くなると協会が予測した為だ、いくら倒してもうまみの無いスライムを倒し続ける探索者は確かにいなさそうだった。

 

 雫斗達にしても,花火は使わずに収納の攻撃力で倒しているのだから、その収納を使った投擲や打撃が広まると、花火を使う必要が無くなる。ただ最初の会社との商標権の書類と同じものに名前を書くとき、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。需要は有るけれどそれほど必要でもないものを作らなければいけないとは、気の毒に思えたのだ。


 今雫斗達はホームダンジョンを沼ダンジョンに変えている、無いとは思うが週刊誌の記者の無茶な取材を避けるためと、村の人達からうるさいから鍛錬ならほかでやりなさいと釘を刺されたからだ。確かに採集している人達からすると、近くで岩や壁に物凄く大きな音を立てて物を投げ付けていては迷惑でしかないだろう。


 今日も雫斗達は沼ダンジョンへと来ていた、入ダン手続きは村のダンジョン前受付で行う。それからここ迄走って来るのだ、準備運動には丁度いいランニングになった。沼ダンジョンも村のダンジョンと同じで入り口にゲートが有る、違いが有るとしたらゲートの中に緊急用の連絡装置が有るくらいだ。

 

 ダンジョンに入ると弥生が雫斗に聞いてきた「またスライムを倒しに行くの?」。最近では百花も雫斗を3階層に誘わなくなっていた。


 「もうすぐ100万匹の大台に乗るんだ、ここまで来たらとことん調べたいじゃないか?」と当然だと雫斗が言うと。

 

 「そうね、雫斗がやりたい事をしたらいいわ、でもスライムはやっぱラスライムでしかないと思うわよ」と百花が呆れたように言う。

 

 「分かっているよ何もなければ適当に切り上げるから」と雫斗は何とか気持ちを奮い立たせてそう言うと、”雫斗って結構頑固よね~”と言いながら百花達はそのまま、2階層へ降りる為の階段に向かって歩いて行った。


 皆と別れた雫斗自身思い悩んでいた、今までスライムを倒し続けてきて何のリアクションも無いのだ、最初は何かのスライムの属性スキルとかが、発現するかも知れないと思っていていたのだが何もないのだ。確かに誰もスライムだけの討伐をする人がいないわけだ。


 此の3カ月弱をスライム討伐に費やしてきた、そうして分かった事といえば苦痛の連続だったという事だけだ。今ではスライムを一撃で倒せることが出来るようになったとはいっても、自分のスペック的に何の変化も自覚できないのだからなおさらである。


 「取り敢えず、100万匹を目指して倒してみるか」と独り言を残してスライムを倒し始めた。スライムを倒すのに手馴れてきた雫斗は、収納の攻撃力を使うことなく、トオルハンマーの破壊力だけで倒していた。確かに雫斗自身ダンジョンでスライム相手にハンマーを叩き続けている為、力が付いたわけだがそれだけではない気がする、トオルハンマーにスライム特化のダメージが入っている気がするのだ。


 10万匹を倒した前後で、いきなり変わったのだ。それは雫斗の感覚でしかない為なんとも言えないが、確かに手応えとして残っている。そしてもう一つは、スライムの気配がつかめるようになったのだ。スライムを一撃で倒している現在、一番の問題はスライムを探す事にある、広間に居るスライムを殲滅するのに、数分でこなしている今の雫斗には、移動の時間さえ煩わしいのだ。


 ある日、広間を殲滅して移動して来た雫斗の感覚に、殲滅して来た数個先の広間のスライムがリポップした感覚があった。一瞬何の感覚なのか分からなかったが、それがスライムだと認識出来た瞬間その範囲に居るスライムが知覚できるようになったのだ。


 その時は小躍りして喜んだ雫斗だったが、それ以外では何の成果も無いまま今に至っているのだ。しかし良い事も有った。そのころから広間のスライムを殲滅するのに5分とかからなくなっていた雫斗にとって、広間から広間への移動がネックになっていた。


 当然通路としての洞窟を移動していくのだが、その長さが一定では無いのだ。無駄に長い洞窟も有れば短い洞窟もある、そこで雫斗は地図上で短い通路をひとまとめにしたユニットを設定して其処を回って効率化を図る事にした。


 今では、高速で移動しながらの時間当たりの討伐数が500を超えているのだ、雫斗は自覚して居なかったが、移動しながらのスライム討伐の行いは根性と肉体の鍛錬には持って来いの試練だったのだ。


 時折休憩を兼ねて移動を徒歩に変えてはいるが、雫斗自身まるで修行僧の様な、捉えどころの無い高みを目指す行いには疑問をおぼえていた。しかし始めた事を途中で投げ出すのは気持ち悪い、取り敢えず100万匹の討伐で変わらなければ終わろうと心に決めて頑張って居るのだった。



 高速で移動しながらのスライム討伐の疲労と落胆で、ダンジョンの壁に体を預けて座り込む雫斗。もう100万匹をとうに超えているのだ、もしかしてを繰り返してそこまで倒してきたが、そろそろ限界である。

 

 雫斗はずるずると壁から滑り落ちて、とうとうリックサックを枕に横たわってしまう、余程堪えたようだ。ダンジョンカードを手に出現させて隅から隅を見つめる、相変わらず自分の名前とダンジョンの到達階層のレベルだけが表示されている。

 

 代わり映えしないカードを見ていると、思わず涙が眼のふちにたまってきた、今まで自分のしてきたことが無駄だったのかと。そう思うと情けなくて泣けてきたのだ、涙越しに見えるダンジョンカードの焦点がぼやけダンジョンの天井をカード越しに見てしまう。”ダンジョン1階層の天井”!!!。


 なんだ!!。そう思って慌てて起き上がる、そしてもう一度ダンジョンガードを見つめる、やはり名前とレベルだけが表示されている、焦点を変えてカード越しにダンジョンの小石を見てみる。”ダンジョンに転がっている小石”、カードの表示が変わっている?。

 

 雫斗は小躍りしながら、カードでダンジョンの中を見て回る、”ダンジョン1階層の壁”、”ダンジョン1階層の岩”、・・・・確かに表示が変わっているのだ。暫く興奮していた雫斗は落ち着いてきた「やっぱり、これは鑑定だよな?じゃースライムとか自分を鑑定できるかも?」そう思った雫斗は、自分の手をカード越しに見てみた。


 ”出てきましたステータスっぽいの、いやステータスだよなこれ?”、強いのか弱いのかは分からないが、とにかく自分の評価だとはいう事は分かった。


 最初に、自分の名前と年齢が映し出されていて、その下に身長と体重、何故か胸囲とか胴回りの数字が映し出されている。その下にカッコつきで”身長が低い事を、多少気にしている健全な男の子”と書かれているのは、ちょっと余計だと憤慨したが。


 その下から自分の状態と評価がアルファベットで綴られていた、状態は良好で、総合力 C・体力 D・ 魔力 C・ 知力 C・ 俊敏 B・ 器用 C・ 運 C、と書かれていた。


 数値化されている訳じゃないから曖昧だけど、ある程度の目安には成りそうだった。その下には<スキル>。と<称号>の項目が書かれていた。 

 

 スキルの項目には、何も書かれていないので取得していないのか?と思ったが、意識してみていると、ずらっと出て来た。

 物理耐性 Ⅲ、 保管倉庫 Ⅰ、 空間把握 Ⅱ、 気配察知 Ⅱ、毒耐性 Ⅲ, 隠密 Ⅰ、 鑑定 Ⅰ。


 いつの間にか取得しているスキルだが、物理耐性と空間把握と気配察知そして毒耐性と鑑定以外はグレーアウトしていた。多分使ったことが無いからじゃないかと思った雫斗。隠密は何それ?って感じだし。保管倉庫に至ってはスキルを取得している事さえ分からなかった。いやスキル自体を取得していたなんて驚き以外にない。


 物理耐性と空間把握と気配察知それから毒耐性のスキルの数字が上がっている、しかもローマ数字だ、ダンジョンカードの表面に表示されている階層を示すLVと混同しないような措置かも知れなかった。雫斗はそれをスキルのランクと考える事にした。


 ”しかし物理耐性や空間把握、気配察知と毒耐性のスキルが上っているのはなぜだ?、 魔物を素手で倒していたからか” 確かにケイブバットとケイブラットは手刀と蹴りで倒していた、物理耐性がランクアップしていたとすれば、それしか思いうかばなかった。空間把握に至ってはスライムの存在を認知できたことに要因がありそうだ。


 気配察知もダンジョンで周りに気を付けながら、移動と討伐を繰り返していたからスキルのランクが上がっているのかもしれない、流石に最初からⅡだったわけでは無いだろう、それを考えると毒耐性が上がった訳も予測できる。


 考えてみると、ケイブスネークの毒対策で毒消しのポーションを使った事が有るのはかなり前のことだ、てっきり強くなって毒を受けることが無くなったのかと思っていたが、毒は受けていて、知らないうちに毒耐性のスキルを取得していて、知らずに使って居た事で、毒耐性のレベルが上がったと予測できる。


 取り敢えず取得している保管倉庫だ、どうやって使うのだろうと考えた。落ちている小石を手に取る、そのまま収納すると何時もの装備収納に入っていく。もう一つの小石を手に持ち、収納する時のイメージで、もう一つの入れ物を頭の中で想像して、その中に収納する事を考えた。


 小石が消えた、装備収納とは別の入れ物にちゃんと入っていた、あっさり出来た事に呆気に撮られるも、小躍りしそうになるのを抑えて今度は触らなくても保管倉庫に仕舞えるかを試す、・・・出来ました!今度は踊りまわって喜びを表現した。誰も見て居ないから構わないのだ。


 ダンジョンカードを出して、もう一度自分自身を鑑定してみた。ステータスには変化はなかった、しかしスキルの項目を見ると。


 物理耐性 Ⅲ、 保管倉庫 Ⅲ、 空間把握 Ⅱ、 気配察知 Ⅱ、 毒耐性 Ⅲ, 隠密 Ⅰ、 鑑定 Ⅰ。


 保管倉庫のレベルが、いきなり二つ上がった!、 訳が分からずカードを裏返してみる。そこには、たくさんの文字列が並んでいた、よく見るとログっぽい物が書かれていた、つまり自分の討伐の記録だ。

 

 最後の方には鑑定の覚醒した事の確認と、保管倉庫のランクが二つ上昇して終わっていた。


 ”いつの間に保管倉庫のスキルを所得したのか?”と考えると、いきなりスクロールして、<スライムを10万匹討伐、スライムの固有スキル、物理耐性 LV1、保管倉庫 LV1の取得>と出て来た。


 あまりの事にパニックになりかける雫斗は、此処はまだダンジョンの中であることを思い出した。一階層とはいえダンジョンの中でぼんやりしていると危険な為、急ぎダンジョンを出てゲート内のスペースで調べることにした。

 

 ゲート内のスぺースには椅子がないので直に座り込みカードのログの検証を始めた。まずは鑑定が発動した時の条件は、<スライムの1000253匹の討伐、カードでの鑑定の触発の確認>と出ていた。雫斗が鑑定スキルを発動させたのは100万匹のスライムを倒して、それからかなりのスライムを倒してからだった、キリが悪いので100万匹プラス、ダンジョンカードをかざして対象物をカード越しに見てみる事が、鑑定の発動条件かもしれないとタブレットに書き込む。


 保管倉庫に至っては、スキルが発現したのが10万匹の討伐で、30万匹の討伐でランクが一つ上がり、90万匹の討伐でランクがⅢまで上がっていた。ただ100万匹以上倒してもランクⅣに上がっている気配がない事から、もしかすると3倍のスライム討伐でランクアップするのかもしれない、それならランクⅣにするには240万匹のスライム討伐となる、それとも打ち止めに為るかもしれない、それを考えると気が遠くなるが、目標には成りそうだった(やる気満々だった)。

 


 しかし討伐した数で固有スキルの取得とランクアップができることが分かった。しかも保管倉庫のランクⅠ、Ⅱ、Ⅲの取得条件が分かった事は大きい、何にせよスキルスクロールなりスキルオーブはまだ見つかって居ないのだ。もしかすると深層に在るのかもしれないし、此処は高レベルの探索者に期待するしかない。


 物理耐性が突出してランクが上がっているのは、無意識に使っていたからだと思う、つまり保管倉庫や鑑定も使い続いていればレベルが上がる可能性があった、とはいえスライムを倒せば無条件で保管倉庫のレベルが上がるのだから、これはスライムの討伐ラッシュになりそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ