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ダンジョンを探索すると、いろいろな事が分かるかも。(改訂版)  作者: 一 止
第1章  初級探索者編

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第19話  相棒との再会は 新たな試練(試鞭)の始まりなのか?

 唖然として折れた竿先を見つめる百花、雫斗は予測して居たとはいえ 無残な結果に落胆は隠せない「ごめん、折れちゃった!!」と百花。


 悪気は無いのである、強いていえば今の百花や雫斗達にはカーボン製の竿先は強度不足なだけなのだ、それを考えるとネットで注文した短鞭は強度的に大丈夫なのか疑問が残った。


 「いいよ、まずその竿先では強度的に持たない事は織り込み済みだし、だけどな~。父さんから貰ったその日に、壊れてしまうとは思わなかったよ」としょげ返る雫斗に、何を思ったのか百花が「これあげる!」と渡してきたのは木刀と飴玉数個と、トレントモドキの魔晶石だった。


 百花なりの謝罪なのだろうが、”その飴玉は自分が上げたやつじゃん”と思ったが、さすがに要らないと突っぱねる事はできないので、今度何か検証する時に付き合ってもらうことでいい事にした。


 そのやり取りを聞いていたロボさんが「どんな武器を想定してその釣り竿を持ってきたのですか?」と聞いてきた。


 「鞭なんだ、一応革製の物を注文したんだけど強度が不安だよね?」と雫斗が言うと「確かに鞭の類では金属は使えませんね、柔軟性が求められますから」と残念そうなロボさん。


 竿先が壊れた事も有り雫斗とロボさんは帰ることにした「僕たちは帰るけど百花達はどうする?」と聞くと、百花達はもう少し収納の攻撃力を試したいからと残ることにした様だ。


 ダンジョンの入り口に向かいながら、ロボさんと二人で短鞭の強化について話し合う、細いワイヤーをメッシュ状に編む案や強度のある鋼を細く束ねて皮で編み込むなど色々な事を話したが、遣ってみない事には分からないと言う事で、注文した鞭が来てから考えることにした。


 雫斗は家に帰る前に、採掘した鉱石を鍛冶工房に下ろすために工房へと向かっていた、当然ロボさんと一緒だ。そこで”トオルハンマー”の改造について話あっていた。ロボさんの不安材料はハンマーヘッドの重さだ、そのままダンジョン産の魔鉄鋼で持ち手を付けたしても良いが、もとは建設で使う道具でしかない、どうせならそのハンマーヘッドに魔鉄鋼を継ぎ足して質量を増やし破壊力を上げてはどうかと提案されたのだ。


 攻撃力が上がるというなら雫斗に不満は無い、快く承諾した。工房で功績類を換金してもらう、”トオルハンマー”が仕上がるのは4・5日後というので、出来上がったら連絡をもらう事にして雫斗は家路につく。


 その夜の夕食の後、母親の悠美に報告を兼ねて収納で出来る事を録画した動画を見せる。


 「あら?百花ちゃん良く承諾したわね」と不思議がっていたが。


 「竿先を使った投擲を交換条件にしたら、即答で承諾したよ。協会の人以外の閲覧は禁止だって」と雫斗が言うと納得していた、最後は竿先が折れるところで終わって、父親の海嗣が複雑な顔をしていたが何も言わなかったので、スルーする事にした。


 「これで終わりなの?」と悠美がスマホの動画を、自分のタブレットに移しながら聞いてきたので。


 「後、収納したポーションや飲み物も収納から直接飲む事が出来るよ、練習しないと大変な事になるけど」と言葉を濁す雫斗。


 動画を移し終えたタブレットに、書き込みながら悠美が聞いてくる「大変なことって、どうなるの?」雫斗は話す内容を考える、下手に話すと自滅しかねない。


 「飲み込める量を超えると吹き出してしまうんだ、最初は量の少ない、栄養剤みたいな物から試した方がいいよ」。思い出して、笑いを堪えるのに必死な雫斗を不思議そうに見ながら。


 「そうなの?」と追及してこなかったのは有り難かった。「他には?」と聞かれた雫斗は。


 「体に付いた汗や泥などの汚れも収納出来るね、ただ気分的な物だけど、収納の中にその汚れが認識できるんだ。すごく気持ちが悪い」と身震いする。


 「それから、これが本来の使い方だと思うけど装備の出し入れだね」と立ち上がり、百花達にみせた鍋の蓋と木刀を使った、チャンバラ踊りを披露して、最後に高速着替えで幕を閉じた。


 「分かったわ、あなた達が常識はずれだって言う事が」と悠美母さんがため息を付きながらその日は終了したのだった。


 翌日の放課後、雫斗は敏朗爺さんの家に来ていた。色々な武器に詳しい敏朗爺さんに、鞭の事を聞くためである。


 「またおかしな事に興味を持つ物だの、確かに一本鞭を振るうと先端の速度は音速を超えるが、重さが無い分破壊力は期待できんぞ」と敏郎爺さん。


 「別にそれで魔物を倒す訳じゃ無いんだ、どうやって使うのか聞いてみたくて」と雫斗が言うと、少し考えて奥からジャラジャラした物を出してきた「九節鞭と言う、見ての通り棒状の鎖だな。持ち手と反対の先端に錘がついておる」5・6センチ位の金属の棒状の先端が輪になっていて、それが繋がっていた。


 「使い方は先端の錘を振り回して敵を寄せ付けず、隙を見て一撃を入れ、また振り回すのを繰り返す。鞭とだいぶ違うが、どの道振り回して覚えるしか無いからの、ただ先端の錘のせいで速度は期待できんがの」と付いてきなさいと外へ出た、基本的な動きと型を軽く見せた後。


 「鞭も同じで しなる事を利用して威力を上げる。また関節があるため巻き込んで打撃を通すこともできる」と標的を模した木の杭に叩き込む。


 前から後ろに振りかぶったかと思うと、すかさず木の杭に叩きつけると同時に引き込む。そうする事でしなりが生じ、先端の錘が唸りを上げて木の杭にめり込む。引き込む動作をそのまま続けて錘を引き抜くと、その勢いでそのまま背後へ回して、横から叩きつけると木の杭を巻き込んで先端が正面で弾ける。確かに重さがある分破壊力はあるが音速を超えるスピードは無い。


 「やって見ろ」九節鞭を渡された。最初はゆっくりと自分を中心に八の字を描くように重りを振り回す、右前方から背後に回った重りが後ろから頭上を越えて左前方へ、それからは左右左と繰り返す。慣れてくると敏郎爺さんがやっていた型をなぞる。


 ひじや手で九節鞭の先端の重りの動きを変えながら、歩法を使って移動する。まるで周りを囲まれた状態から、起死回生の一撃を見舞うその時を待っていたかの様に木の杭に放つ。”ガシン”という音と共に重りがめり込む、すかさず引き抜き、また振り回しながら移動する。それをしばらく繰り返す雫斗。


 その様子を呆れた様に見ている敏郎爺さん、自分が長年かけて習得してきた技を、あっさりと物にしてしまう事に。これもダンジョンの恩恵の一つだと言ってしまえばそうなのだが 割り切れない感情が有るのも事実だ。しかし年を取った自分たちが、こうして元気に動けているのもダンジョンの恩恵だとしたら、確かにいい事なのだろうと納得してしまうのだった。


 暫く九節鞭を使って木の杭相手に練習をしていた雫斗が、九節鞭を持って敏郎爺さんに聞いてきた「これいい武器だね、通販で買えるかな?」と聞いてきた、敏郎爺さんは、笑いながら 。




 「わしは使わんからお前にやるよ、大事に使いなさい」というので思わず。

 「じゃー誓約書を書いてもらっていいかな?」と言ってしまってから気が付いた、またやってしまったと。


 「誓約書?。なんじゃそれは?」と敏郎爺さん、知らないからそう聞くのは当たり前だが、収納のことはあまり話すなと言われている手前どうしようか考えたが、どうせいつかは分かる事だからと話すことにした。


 「えーと、このダンジョンカードの機能の一部で、触れている物が自分の物だと収納できるんだ」と雫斗はダンジョンカードを出してから木刀、体重計、籠、鍋(蓋つき)、折れたハンマーの持ち手を次々収納から出して見せた。


 あんぐりと口を開けて、次々と手品の様に出てくる物を見ていた敏郎爺さんが我に返ると「たまげたの~、カードの機能の一部というと誰でも使えるのかの〜?」と聞いてきた、そこで雫斗はこれまで分かっている事をかいつまんで話した。


 「本来なら一週間ぐらいかけて、スライムを倒しながら力と経験値みたいなものを身に付けてからスライム100を匹を倒して収納の覚醒を促すのが基本なんだと思う」そう雫斗が話すと「成る程のぉ〜、確かにいきなりスライム100匹を倒すのはしんどいのぉ〜」と敏朗爺さんは納得した。


 家へと入り九節鞭を雫斗に譲る事を紙に書いて出てきた。


 「これでいいかのぉ?」雫斗が受け取り内容を読んだ後「うん、大丈夫」と言いながら九節鞭を収納へと仕舞うと、それを見た敏朗爺さんが「確かに所有権が移っておる」と呆れた様に言う。


 本来の目的とは違うがよき収穫を携えて、ダンジョンへと向かう雫斗。昨日ネットで調べて分かった事は、鞭は武器ではなく馬や家畜を誘導するための道具でしかない、叩くためではなく、あの音速を超えた時の大きな音で脅かして、移動させる為に使われていた様だ。


 昔は奴隷や犯罪者への罰として使われた事もある、殺傷能力は無いが、確実に痛みを伴う鞭は使い勝手が良かったのだろう。映画やドラマで主人公が鞭を武器の様に使っていたイメージがあった雫斗は”やはり収納を使った礫の発射機として使うしか無いか?”と思い始めていた。 


 短い短鞭は取り回しがいいので中間での連続の投擲に、一本鞭は最もスピードが出そうなので長距離の狙撃用に、そして九節鞭は短距離での防衛と攻撃にと使い分けようかと考えていた。


 その後ダンジョンに入り1階層の入り口から少し離れた広間で、日課のスライムの討伐をはじめる、”トオルハンマー”が無いので投擲で倒そうと思ったが、九節鞭を思い出した。取り出して 軽く型をなぞる、歩法で移動しながら収納に入れたり出したりを繰り返す、もし誰か見ている人がいたなら、おかしな踊りを踊っている危ない人だと思った事だろう。


 振り回しながら収納への出し入れに慣れてくると、収納から出す時に加速させるイメージを加えていく、段々と速さが増していくおかしな踊り、そのなかで空気を切り裂く鋭い音が混じり始める。


 手応えを感じた雫斗は九節鞭でスライムを倒してみる、頭の中で九節鞭がしなっていくイメージで最後の瞬間に解き放つ、”バシッ”と鋭い音と共にスライムにぶち当たる九節鞭の重り。当たった瞬間に収納して、しならせるイメージを繰り返していく。最初は4・5回で倒せていたスライムが、慣れてくると1回か2回で倒せるようになってくる。


 日課にしているスライムを100匹倒した雫斗だったが、時間が有るので、そのままスライムを倒してみることにした。合計で148匹、1時間半で倒した数にしてはいい方だと思った。


 考えてみると、先週の土曜日にハイゴブリンとハイオークとオーガに遭遇してから、まだ1週間しかたっていないのだ。その間に起こった怒涛の展開に、自分でも呆れてしまう。


 翌日の土曜日に注文していた鞭が届いた、開封して並べてみた。短い短鞭、騎馬鞭ともいう、持ち手から先の方へ細くなっている、その先は平たい皮が付いていて、馬を傷つけることがない様になっていた。


 一本鞭、持ち手から4メートルほどの長さでだんだん細くなるように、皮を編み込まれていた。


 最後に九節鞭を並べて、考える!名前をどうするかと。おなじ鞭なので兄弟として名前の頭に一条を与えて、最も短い鞭は騎馬鞭だから”一条短馬”にした。


 一本鞭は長くて音をだすので”一条長鳴”。最後の九節鞭は鋼を使っているので”一条鋼勢”とした。


 相変わらず名前を付けるのが下手な雫斗だった。

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