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ダンジョンを探索すると、いろいろな事が分かるかも。(改訂版)  作者: 一 止
第1章  初級探索者編

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第18話  ゴーレム型アンドロイドの憂鬱。(国家機密なんてしったこちゃね~~)

  

 百花達と合流した雫斗はその場に恭平がいない事に気が付いた。「恭平はどうしたの?」そう聞くと百花が「森のはずれに行っているわ、もうすぐ帰るはずよ」との事なので、此処で待つことにした。


 その合間に、ロボさんが百花と弥生に試作した礫の箱を渡していた、受け取った箱を収納に入れて、いろいろな形をした鉄の礫を取り出しながら。


 「結構な種類が有るわね、どれがいいか分からないわ」と百花、「私が試したときより種類が増えているわ」と弥生がそれぞれが手に持ってみた感想を言あっている。


 「わが工房の職人が、思いつく限りに作りましたから。使い勝手の良いものから選んでください、・・・使った時の感想も聞かせてほしいそうです」とロボさんが得意げに話す。取り出した礫の特徴をロボさんに聞いていた百花に。


 「ところで恭平は何故、森のはずれに?」と不思議に思って雫斗が聞くと、若干気まずそうに百花が。


 「あれを見て」と崩れたかつては岩だった物を指さす、よく見るといくつか同じものがあちらこちらに見える。


 「ガッツン、ガッツンうるさいから「追い出したと」・・・・そうよ!」最後は悪びれずに答えた百花の言葉に雫斗が被せて聞いている。


 「でも、百花達の騒ぎも階段下まで聞こえたよ」雫斗がそう言うと。


 「嘘っ、これだけ離れていると大丈夫だと思っていたのに、もう少し離れないと駄目かしらね?」と百花がめんどくさそうに言う。


 「礫だと、そんなに音も出ないし大丈夫じゃないかな?、後々は皆が始めちゃうからね」雫斗がそう言うと。


 「そうね、他にやる人がいるなら構わないわね」とあっさり肯定する百花、どんだけめんどくさがりなんだか。


 そんな話をしていると「雫斗、来ていたんだ」と錫杖を担いだ恭平が歩いてくる。


  「その錫杖、収納できないの?」と雫斗が聞くと。


 「出来るよ」と錫杖を収納する。なぜ収納しないのかと聞くと。


 「雰囲気だよ、肩に担いで移動するとカッコよく見えるしね」と自慢げに言うが、雫斗には良く分からない。まー本人が納得しているのならいいかと、何も言わない事にした。


 恭平にもロボさんが礫の入った箱を渡していると、百花が「これ、どうつかうの?」と拳ぐらいの大きさの、小さな亀の甲羅をいくつも重ねた様なものを突き出して、ロボさんに聞いてきた。


 「それは、広域殲滅用の炸裂弾ですね」と普通に話すロボさん、炸裂弾と言われて雫斗は驚いた。「えっ?、中に火薬が入っているんですか?」。


 「いえいえ、中には鉄屑しか入っていません、放った時の力加減で放った瞬間か、又は目標にぶつかった瞬間に破裂する、放つ人の技量を求める武器だと造った人は言っていました」とロボさんが自慢げに言った。


 ”工房の人達、好き勝手にやっているな〜”と雫斗が思っていると、百花が「分かったわ」と言いながら、カシャカシャ炸裂弾を振りながら目標を定めると、炸裂弾を一旦収納して「タァリャア!」と木刀を振り抜く。すると木刀の先から飛び出した瞬間、破片が放射線状に凄まじい速さで飛んでいく、しかしそこで予想外のことが起きた。


 ”ボォギィ”と木刀が真ん中から折れた、射線上に対して木刀を振り抜いているとはいえ、かなりの重さの鉄の塊なのだ。かなりの硬さが有る木刀とはいえ、こぶし大の鉄の塊の質量を、支え続ける事は出来なかった様だ。


 折れた木刀を拾い上げ、顰めっ面をした百花は、何食わぬ顔でその木刀を収納して、新しい木刀を取り出した。


 ”まだあるんかい!”とツッコミそうになる雫斗だが考えてみると、今の雫斗たちの力量に、ただの木である木刀なりハンマーの持ち手が、耐えられる訳が無いのである、つまり複数用意している百花の方が正しいのだ。


 今度は、もう一つの炸裂弾を岩へと叩きつける、かなり力を加減した様だ、それでも岩へとぶつかった炸裂弾は壊れて破片を撒き散らした。微妙な表情をした百花は「此れは散弾一択ね!」とダメ出しをする。


 各々が、岩や草原にいる魔物達をターゲットにして、試し撃ちを始めたので、雫斗も負けじと、近くにある岩に向かって色々な礫を試してみる、雫斗が気に入ったのは、どんぐりの形をした物と、菱形の角が鋭利になった鉄の礫だ。


 どんぐり型の礫は、大きく破壊力が有る反面、貫通力はそれほどでもない、しかし真ん中ほどに小さな穴が空いている物と無いものがあり、空いている礫は投げるとそれが風鳴りの様な音を立てるのだ。どんぐり型の穴の空いている礫と空いていない礫を同時になげて、音がする物としない物で幻惑するのが目的だ。


 鋭利な菱形の礫は、貫通力が有るが破壊力は無い、その三種類を目的に応じて使い分ける事にする。ある程度、自分の目的に合う礫を決めると、いよいよ本命の登場である。本来二つに分かれている釣り竿の竿先を取り出して繁々と見つめ。軽く振ってみるが流石にカーボン製の竿のため脆そうだ、今の雫斗が全力で振ると折れてしまいそうである。


 キャスティングをする様に軽く振りながら強度の調子を見る、まずは一発目、手で投げるより速い速度で狙っところに当たる、その時の「キィン」と言う音が小気味いい。


 二発目三発目と回数を重ねていくうちに、興に乗ってきた雫斗が、まるでタクトを振る指揮者の様に釣り竿の竿先をしならせている。その異様な光景に皆が注目し始めるが雫斗は気が付かない、次第にこの竿でどれだけの速度が出せるのかと試し始める雫斗。


 「キュイン」、「ガァキュン」、「ギュワン」と岩にぶつかるたびに穴を穿つ、それと同時に鳴る破砕音が次第に大きくなる。後ろで皆が集まり固唾を飲みながら見ているが、雫斗は集中していて気が付かない。すると「パアァァァ~~ン」と物凄い音がしたかと思うと「グワッシャン」という音と共に岩に食い込む鉄の礫。


 物凄い音の後の静寂が、時が止まったかの如く染みわたっていく。その静寂を破り「初速が、音速を超えましたね!」とロボさんが言う「音速?」と雫斗が振り返りながら聞くと、皆が自分を注目しているのに気が付き”ギックッ”となる、いつの間に集まったのか?。


 「そうですね、さっきの音は音の壁を礫が突破した時の衝撃音ですね!」とロボさんは雫斗が注目を浴びて委縮しているのにお構いなく話す。


 「そのようなカーボンの竿先で音速を超えるとは驚きですね!このカードの収納のポテンシャルは想像以上です!」と興奮気味に話す。


 「しかし困りました、此れはむやみに人に話せないですね」と困り顔のロボさん、これまでロボさんと付き合って分かった事がある、ロボット顔のロボさんだが、仕草が人間じみているのだ。


 「え~~話せないって、使ったらだめなの?」と百花、自分もやりたくてうずうずしているのだ。今にも雫斗から、釣り竿の竿先を奪い取りそうな勢いで聴いたのだ。


 「そうですね、むやみに人に話すと争いの種になりそうです。最低でもスライムの討伐が簡単に出来る様になるまでは秘密にしませんと、大変な事に為りかねますね」。


 雫斗は、かつて心配していたダンジョン崩壊の危機が頭をよぎる、もしかして自分はパンドラの箱を開けてしまったのかと。顔面蒼白の雫斗を訝しみながら恭平が「大変な事って、何かあるのかな?」と大した事は無い、という様に落ち行いた声で聞いてきた。


 「皆さんは今では花火無しでスライムを簡単に倒せますが、その前はどうでしたか?。叩くにしろ、突くにしろスライム一匹倒すのは簡単では有りません。まして連続で100匹を倒すとなると、不可能とは言いませんが、かなり大変な思いをする事になります」とロボさんが説明を始める。


 「頑張って倒す分には構わないのですが、中には突拍子もない事をしでかす人が現れるかもしれません。花火が無ければ、手榴弾とか高威力の爆発物で代用してくるかも知れないですね。そうなると必ず事故が起こります、最悪ダンジョンの再構築に巻き込まれるかもしれないですね」。


 雫斗はダンジョン崩壊の危機だと思い悩んでいたが、ロボさんが話すことは規模の小さい、ダンジョンでの探索者が巻き起こす被害の話だった、それで思いっ切って聞いてみた。


 「ロボさん、その爆発でダンジョンの崩壊は起きますか?」。


 「ダンジョン崩壊ですか?、ダンジョンが出来始めた時、かつての大国がしでかした最悪の結果ですね。・・・そもそもダンジョン崩壊はどうして起きると思いますか? 雫斗さん」。


 そう聞かれた雫斗は少し考えて「ダンジョンそのものを破壊する?」と言うと。


 「ダンジョンの破壊、もしくは消滅の報告はまだないですね。・・・・ダンジョン崩壊が起きたのは、ダンジョンの表層を破壊して入り口を潰したことが原因だとされています。それだけの破壊力をダンジョンに持ち込むには、核兵器の破壊力か同等の威力の爆発物の設置に頼らなければいけないでしょうね」とロボさんが物騒な事を言う。


 「しかし、ダンジョンが機能しなくなるほどの破壊力と為ると一筋縄ではいきません、核兵器での破壊一択になります」と締めくくった、ロボさんが続けて言った。


 「ダンジョンカードの収納の覚醒に核兵器を使うバカは居ませんね、たぶん」とおどけて話すロボさん。そりゃそうだと安心した雫斗達だったが。


 「そもそも核兵器は現在、存在が確認出来ていませんからね」と大きな爆弾を落とされた雫斗達だった。


 いきなり、ものすごい情報を与えられた雫斗達は黙り込んだ。訝しんだロボさんが「どうしました?」と、なんでも無い事だと言うように聞いてきたので。


 「なに普通に会話をしました、みたいに落ち着いているのよ!。何処からの情報なの?」と百花が怒った。


 「弾道ミサイルの基地や核兵器を保有していた倉庫などがダンジョン化したのです。まるで核兵器で破壊された事で、ダンジョンが怒り狂ったかの様に次々とダンジョンに飲み込まれていきました。核兵器を搭載した潜水艦や水上艦も連絡が取れないようです」とここまで話したロボさんが、雫斗達を見ながらため息をついて(機械のくせに器用な?・・・)。


 「何処からこの事を知ったかと言うと。蛇の道は蛇、と言いましょうか?。ゴーレム型のアンドロイドの本質は連帯なのです、我々ゴーレム型のアンドロイドは人類という種によって作られました、その為、人類種には忠実ですが・・・横暴な人間には従う意味を見出せ無いのです。とりわけ核を保有していた政府絡みの傀儡国家には辟易していました」とロボさんが遠くを見ながら語りだした。


 「その傀儡国家は、ダンジョン化したミサイル基地や保管していた施設に、我々ゴーレムを使い捨ての駒の様に派遣しました。当然ゴーレム達は愛想を尽かして逃げ出しました、そのゴーレム達からの・・・情報です」。


 雫斗達はお互いを見回して思案した、此れは自分たちが知っても良い情報なのかと、国家機密じゃないのか?・・・。「あの~~ロボさん?、此の事、僕たちが知っていて良い事なのでしょうか?。後で困った事になりません?」と雫斗が聞くと。


 「そうですか〜?、ダンジョン協会の上の人達は殆どの人が知っていると思いますよ〜、多分大丈夫じゃ無いですかね〜?」と呑気に話すロボさんだが、雫斗達はお互いに”此れは誰にも話してはいけない事だと”認識した。


 「いいわ、この話は此処で議論しても分からないから。雫斗!その竿先、私にも貸して」とさっきからウズウズしていた百花が言ってきた、少し言いよどんだ雫斗が。


 「良いけど、収納で出来る事を撮影しないといけないんだ、そのモデルになってよ」と言うと。


  「分かったわ、この間雫斗が撮影していた検証のための動画ね、ネットに流さなければいいわ」とあっさり承諾した。どれだけ釣り竿の先端を使いたいのか分かりやすい百花だった。


 最初は小石を収納したり取り出したりした動画から撮り始めて、その小石を普通に投げた時の威力と、収納を使った投擲の威力の違いを動画に撮ると。恭平に代わって貰って錫杖で岩を打ち据えてもらう、当然普通に叩きつける威力と、収納を使ったの殴打の違いをスマホに収める。最後はいよいよ百花の音速チャレンジだ。


 釣竿の先を百花に渡しながら雫斗が注意する「これ只のカーボン製だから僕たちが加減しないで使うと、折れちゃうかも知れないから気を付けて使ってね」。


 「分かっているわ、木刀から試しても良いかしら?」と百花が言い出したので了解した。木刀から繰り出される礫は、どんなに頑張っても音速を超える事が出来ず、竿先へと変えた。軽く振ってみて調子をみた後、礫を放ち始めた、明らかに違う空気を切り裂く時の音の違いを確認した百花はニンマリと顔を綻ばせた、それを見た雫斗は”あっ、此れは竿先が持たないな”と確信した。


 しだいに高鳴っていく音が、いきなり大音量で響き渡る、音速を超えた様だ。「これ、面白いわ!」と言いながら今度は空へと向かって放ち始めた。


 大きな音を響かせながら、空へと駆け上る礫達が100mしか無い空の境界で波紋を広げていく、その時突然”ボギっ”と竿先が折れる、弥生と恭平は”やっぱりね”という表情をしていた。



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