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ダンジョンを探索すると、いろいろな事が分かるかも。(改訂版)  作者: 一 止
第1章  初級探索者編

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第11話  検証は、健康に良いと、思いたい。

 部屋へと戻って来た雫斗は、ベッドに倒れ込み食事の時、どうしてあんな事を話してしまったのだろうかと、赤面しながら枕に顔を埋めていた。


 「はぁ〜〜、あああァァ〜何を話したんだぁ~~~。どうした雫斗おおぉぉ、お前はそんな人間じゃ無いはずだ、地味に目立つ事無く、なんとなく、ふつぅ〜〜に生きていくはずじゃなかったのかぁぁ〜」と恥ずかしさで暫く悶々と、ベッド上でゴロゴロと悶えたいたが。


 "まあァーいいや"とサッサと立ち直り机へと向かう。パソコンを立ち上げて今日ダンジョンでして来た事を、スマホを見ながら時系列でまとめていく。気持ちの切り替えの速さは、雫斗の特技の一つなのだ、周りを気にしないともいえるが。そんなことはどうでも良い、取り敢えず今は検証が大事だ。


 1. スライムを花火で爆破(1匹)。


 2. 同じくスライムを次々爆破。最終的に約100匹の以上の討伐。


 雫斗は次を書き出そうとして、置いて行かれた事を思い出した。頭をブルブル振ってその出来事を振り払う、次だ次と気持ちを落ち着けて。


 3. ダンジョンカードを使った収納の発現、付箋紙使用。


 などなど書き連ねて、最後に小石を山積みして締めくくった。


 "こうして見ると触れていないと使えないのは不便だよな〜、スキルって訳でもなさそうだし”と考えてダンジョンカードを出して手に取りジーと眺める、相変わらず雫斗の名前とレベルだけ、裏返しても何も書かれていない。


 そのレベルには3と書かれている、父さんたちに連れていかれて3層迄到達した証だ。


 そのカードを見ながら、多分収納はカードの機能の一部なんだろうなっと朧気ながら考えた、では何故今まで誰も使えなかったのか?、考えながら、パソコンの画面を見ている、すると一つの文字列だけが目に入る、まるで答えを示すかのように。


 【最終的に約100匹以上の討伐】


 これか!!、雫斗たちは花火で倒したから、スライムを1時間で100匹以上は倒せたが、他の手段となると、どれ程かかるのか見当もつかない、雫斗は明日の予定をスマホに書き出していく。


 1つ、スライムの討伐数が条件になるなら、他にもあるかも知れないから、取り合えず一日100匹以上を討伐することを目標にする、(花火を使えば余裕だ)。


 1つ、爆破以外でのスライム討伐の試行と書いて方法を考える、打撃に強いスライムだけど、その打撃を使った討伐を避けていいのだろうか?。 


 ふと何かの映像で見た事を思い出した。何処かの建設現場で、目印の杭を大きなハンマーで叩いて埋めていたのだ。


 最初、杭を軽く叩いて先を埋めて動かなくする、するとおもむろに両足を広げて体を保持すると、大ハンマーを杭の頭めがけて力の限りに打ち込む、振りかぶっては打ち込むのを繰り返して、杭を地面に埋め込んでいたのを思い出したのだ。


 よし試してみるかと、スライム討伐の試行と書いたその後に、”大ハンマーで打撃、回数を数える”と書き添える、ぶん殴るなら纏わり付かれる心配もないし。


 1つ・収納内の時間の経過?と書いて。今試せそうだと思い立ちストップウイッチを探し始める。机の引き出しの中を''ゴソゴソ'' 押入れの物入れの中を''ゴソゴソ'' あちこち探し回って、ようやく本棚のガラクタを入れたカゴの中で発見する、多少汚れているがゼンマイ式だから大丈夫だろうと、綺麗に拭いてゼンマイを巻く。


 試しにスタートして見る「チッチッチッ」と時を刻む、大丈夫そうだ、ゼロに戻しスマートフォンを机の上に置く、スマートフォンのアプリのストップウォッチを起動してタイマーを5分にセットして右手にストップウォッチを握る。


 左手の人差し指でスマホのタイマーボタン、右手でストップウォッチのスタートボタンを同時に押そうとして机の上を見るとスマホが無い、焦って辺りを見回して探すも、見当たらないスマホは何処だと考えると、頭の中にスマホとストップウォッチのイメージがあった、無意識に二つとも収納してしまった様だ。


 収納から取り出して集中しながらスイッチオン、今度は成功してスマホとストップウォッチを見ながら5分待つ、・・・・5分後スマートホンとストップウォッチが同時に大きな音を立てて時間を知らせる、ストップウォッチは使える様だ。さすがゼンマイ式だけはある、頑丈な作りをしている。


 さて検証だ。もう一度タイマーをゼロにセットしてスイッチオン、即ストップウォッチを収納する。


 5分後、スマホのタイマー音と同時に、収納したストップウォッチが盛大な音を立てる、機械式の為音量の調整なんかできるはずも無く、最大音量が雫斗の頭の中で鳴り響く。


 「ぐおぉぉぉ~~!」盛大に椅子から転げ落ちて悶え捲る雫斗。暫くしてようやくストップウォッチを収納から出して止めると一息つく。前にダンジョンで同じことをしたのに懲りない人である、


 今度は、逆にしてスマホの収納を試みる、又頭の中で轟音が鳴り響くのは勘弁なのでスマホのタイマーをベルの音からバイブに変えて収納する。


 ラノベで定番の収納の時間遅延が出来ないかと思い、収納する時に時間を''二分の一''と念じながら収納してみる、5分後収納したスマホの振動を感じたので、ストップウォッチを止める、感覚の中で振動を続けるスマホを取り出してタイマーをとめる。


 大きな差はない、どうやら収納の中と外では、時間の遅延は無いようだ。


 パソコンに書かれている、''収納内の時間の経過?''のうしろに(済) 時間の遅延無しと書き足す、後は無いかなと考えて。


 1つ・収納の限界量、と書いて今日出来なかったことを思い出す、どれだけ収納出来たのか見たくて、ダンジョンの壁のわきに、小石を出したのだが、運悪く百花達に見つかったのだ、収納が出来ることは隠せたが、未だにどれ位の重さ迄入るのか、正確な数字が分からない。


 限界量のその後に、体重計、小石を乗せるための籠、と書き出す。後は何かないか?と思いながら。


 1つ・収納が発現するときのスライムの討伐数。と書いて、これは百花達に手伝ってもらわないと出来ない、明日お願いしようかと思ったときダンジョンに置いて往かれた事を思い出した。


 ”これは来週だな”と書き足しあっさりと保留にした。しかし雫斗は忘れていた、収納があることを話さず、後回しにされたと知った時の百花が、めちゃくちゃ怒る事を。


 その時雫斗は考えもしなかったが、オークと対峙した雫斗に対して百花が鬼のような剣幕で怒っていたことを考慮すれば、彼女に隠し事をした事がばれた時どのような結果になるのか容易に想像できる。雫斗の首が無事に残ることを祈りたい”南無阿弥陀仏”。


 こんなものか?、とスマホを眺めながら明日の検証計画を見ていたが、良し明日やることは此れだけで良いと決めた。


 後は”収納の呼び方だよな~~”と名前をどうしようと考えてみた、”ダンジョンカードの機能の一部なら、スキルじゃないよな~?触って無いと使えないしなぁ~~?”とあれこれ考えていたが、武器を”パッ”と出して魔物に切りかかる場面や、盾を”スッパ”と装着して攻撃を防ぐ場面を想像して、装備を出し入れする空間か・・・。


 よし!!!、これにしようと、気合を入れておもむろにパソコンに書き込む


 ”命名!、装備収納”この時は我ながら良く思いついたと思っていたので満足して、後は学校の勉強を始めたのだった。


 雫斗は翌朝目覚めると、学校に行く準備をして階下に降りていく。


 「おはよ〜」とリビングに入りながら声をかける「あら、おはよう、タブレットは玄関の靴箱の上に置いてあるわよ」と食事をしながら悠美が話す。


 香澄は食事の真っ最中で、クロワッサンを両手に持ってリスの様に少しずつ齧りながら、サラダの上にあるトマトを睨みつけている、香澄はトマトが大嫌いなのだ。


 悠美は隣で食事をしながら、香澄の食事を手伝っていた、何も言わないのは諦めるのを待っている様だ。


 雫斗は「うん、分かった」と答えて、玄関の脇にある洗面所に向かう、靴箱の上に確かにタブレットと充電器が置かれていた。


 近づいて触れてから収納してみる、当然今はまだ雫斗の所有物ではないから収納出来ない、その事を確認して洗面所へと向かった。


 雫斗がリビングに戻ると、まだ香澄はトマトと睨めっこをしていた、席に付き悠美を見ると、肩をすくめて笑っている。


 今日の朝食は、パン(クロワッサン)と、ベーコンとアスパラとコーンを炒めた物の隣に、目玉焼きが乗っていた、そしてレタスをちぎったサラダの上に、トマトが"どーん"と乗っている。


 雫斗は、ドレッシングをサラダにかけると、トマトをパクっと食べて、美味しそうな表情をする。


 それを見た香澄は、諦めたのかクロワッサンを置いて、フォークでドレッシングのついたトマトをぶすっと刺して口に運ぶ、無表情で口を動かす香澄を見て、その表情のおかしさに雫斗は「ぶほっぉ」と軽く吐き出す。


 食事を終えた雫斗は「行ってきます」と言って、靴箱の上にのタブレットと充電器をカバンに入れて玄関を出る。


 「行ってらっしゃい」と送り出す悠美は、香澄を保育園に連れて行く準備をしている、保育園は村役場に隣接しているので一緒に行く事になる、ちょっとしたお散歩だ。


 雫斗は通学の途中、百花と百花の妹の千佳が、仲良く手を繋いで歩いているのを見かけた、足速に近づいて声をかける。


 「おはよう、相変わらず仲がいいね〜」百花が振り向いて雫斗を確認すると。


 「当然よ!、私たちは姉妹よ。仲が良いのは当たり前よ〜」と言った後に「ねぇ〜、千佳?」と妹に同意を求める。


 ブスッとした表情で前を見ていた千佳が、姉を見上げて「ふん!」と顔を背ける。


 「まあぁ!、まだ剝れているの?」と百花が千佳の後ろに回り脇腹を''ワシャワシャ''とくすぐる。


 最初「キヤハハハハッ!」と身体をくねらせて喜んでいたが、剝れているのを思い出して、雫斗を盾にして怒りを露わにする、「あんな何かの脳みそみたいなもの食べさせるなんて、人間じゃ無いわ。人でなし!!」と姉に抗議の言葉をぶつける。


 「まぁ!、カーリーフラワーは栄養があるのよ、好き嫌いしていると大きく育たないわよ」と百花が言うと。


 百花の胸をチラッと見て千佳が一言「育っていないじゃ無い!!、嘘つき!!」と叫ぶ。


 一瞬、何を言われたのか分からず戸惑った百花だが、自覚があるのかハッとして自分の胸を抑えると、真っ赤になりながら叫ぶ。


 「ま~~~!!。・・・なんて事を言うの、この子は!」と百花がくすぐり攻撃を再開しようと千佳を追いかける、すると千佳は雫斗を盾に逃げる、自然と雫斗を挟んでの鬼ごっこが始まる。


 当の雫斗は、百花姉妹の喧嘩の内容を聞いて、多少千佳の意見ももっともだと思いはしたが口に出しては言わなかった、しかし今朝の香澄の嫌いなものを食べていた表情を思い出して、我慢できずに思わず吹き出して大笑いを始めた。自分達が笑われていると思った、百花姉妹は怒りの矛先を雫斗にむける。


 「女の子を笑い者にするなんて!、失礼よ雫斗!!」と顔を赤らめて百花が言うと「そうだよ〜、雫ちゃん失礼だよ〜」と千佳も同意する。


 「ごめんごめん、千佳ちゃん達を笑ったわけじゃ無いよ、千佳ちゃん達の話を聞いて、今朝の嫌いなトマトを食べている、香澄の顔を思い出したんだ」と雫久が弁解しながら、千佳の顔を見て、吹き出しそうになるのを我慢していると。


 「もう!!、雫ちゃんダメなんだからね!」と千佳が顔を赤らめながら雫斗の手を取り、ズンズンと歩いて行く、千佳に引っ張られながらも素直に付いて行く雫斗を見て、百花が可笑しそうに笑いながらついて行く。


 雑賀村の小学校と中学校は同じ敷地の中にある、生徒が少ない事も有り同じ校舎を使っているのだ、その校舎はこぢんまりとした2階建ての建物で、1階は小学生の教室で2階を中学生が使っている。 


 校舎は1階と2階ともに、教室は2部屋しかなく、1階の小学生は高学年と低学年に分かれて一緒に学んでいた。


 中学生も、人数が少ないので一緒の教室で学んでいる、ただ高校に進学する受験生は別の教室で進学する学校に合わせて個別指導を受けていた。


 受験生以外の1年生と2年生は、まとめて同じ教室で学んでいると言う訳だ、この時代知識を得る為だけならインターネットで事足りる、しかし幼い頃から一人で学んでいるとボッチの引き籠りに成りかねない。そこで学習としてではなく人との付き合い方、友達との関わり方を、学校でともに学ぶのだ。そうはいっても雑賀村の子供たちは、るで家族のような付き合いをしているのが現状では在るのだが。


 雫斗達が校舎に入ると、それぞれの教室へと向かっていく「雫ちゃん、お姉ちゃん、またね~~」と言って千佳が、ランドセルを揺らしながら走って行く、「おう!、またな~~」と雫斗が返事を返しながら見送っていると。


 「何見てるのよ?」と少し怒った口調の百花さん、「百花もあれぐらいの頃、可愛げがあったな~と思って」と雫斗が答えると。


 軽蔑のまなざしで一言「変!態!」と言い残して、階段を上がって行った。異性からのその言葉は、結構な破壊力があり、ショックを受けた雫斗はしばらく立ち尽くしていた。


 立ち直った雫斗が教室に入ると、百花が下級生にせがまれて、一昨日の武勇伝を披露していた、さすがに何度も話していると堂に入るもので、コミカルなジェスチャーも交えて笑いを誘っていた。


 それを横目で見ながら雫斗は席に着く、恭平と弥生はまだ来ていないようだ、ホームルームまでの時間が有ることを確認してタブレットを取り出す。


 タブレットの電源を入れて、設定をしていると声を懸けられる「少し話しても構わないかい?」野島 京子が芳野 冬美を伴って話しかけてきた、野島 京子も芳野 冬美と同じく、探索者協会でバイトをしている。


 「何ですか?野島先輩」と雫斗は顔を上げて聞いてみる「昨日の報告書を読んだ、あの方法で私たちでも、スライムを倒せるの?」と野島先輩が真剣な顔で聞いてきた。


 雫斗が報告したのは猫先生だけど、どうして知っているんだ?と不思議そうな顔をしているのを察して、芳野先輩が「ああ、協会の雑賀村支部で起こったことは、朝一で職員全員にメールで通知されるのよ」。


 「そうそれを読んだ」と野島先輩が話す「そうですか、討伐ですけど、・・出来ます、むしろ出来ない方がおかしいいです、やろうと思えば、うちの香澄でもできます」と太鼓判を押す雫斗。


 「何でしたら討伐付き合いますよ?」と雫斗が誘うと「いやそれはいい、協会の職員が正式発表前に勝手に行うと懲罰の対象なんだ、発表後にお願いしてもいいかい?」と野島先輩、承諾すると嬉しそうに離れていった。


 「京子、魔物にトラウマが在るのよ、カード取得の時、思いっきり蝙蝠に嚙まれちゃてね、あなたも経験あるでしょう?」と芳野先輩が言う、雫斗がぶちのめされたのは、蝙蝠にではなく百花の木の棒なんだけど、間違った情報を百花は伝えている様だ。


 「ありがとね~、発表が済んだら私もお願いね(^^♪」、と芳野先輩が言い残して去っていく、百花の野郎(女の子だ)なんちゅう情報を流しているんだ、と憤りを感じないでもないが いまさら言っても始まらないのでタブレットの設定に戻っていった。


 放課後、雫斗は売店に寄って必要なものを買い求めてきた、ついでに口座からいくらか現金を引き出す。


 家に帰ると、誰も居ないが声を懸けながら家に入る「ただいま~」、高崎家の決まりである、部屋に入るとパソコンで、母親からもらったタブレットの中古での売買価格を調べる、適正な買い取り金額に少し色を付けて、キッチンのテーブルの上にメモを添えて置く、メモには ”タブレットの代金です、少し多いですが検証の為、貰ってください。”と書いた。


 パンパンと柏手を打って、頭を下げる「お願いします」、そのまま自分の部屋に戻り、机の上のタブレットを見る、今朝は収納できなかった今はどうか?、深く息を吸ってタブレットに触れる。


 収納出来ました、その瞬間ガッツポーズをする、適正価格で所有者の変更が出来ることが分かったのだ「よっしゃー!」とエアー気勢を上げて、購入してきたものを見る。


 まずは体重計、普通の物を買ってきた平べったい体重計、収納する。籠、丈夫そうな物を買ってきた収納。水中花火、今日も2箱貰ってきた収納。最後に武器・・・大ハンマー、黒光りする鉄の塊を見て気持ちが入る、”よし決めた、武器に名前を付けるのは、高崎家の家訓とする、・・今決めた”。


 固いハンマーヘッドを撫でながら目をつぶる(変態やん)。


 暫くしてかっと目を開き、叫ぶ(んだつもり)「そこもとの名を”トオル・ハンマーと命ずる、厳かに拝命せよ”、・・・」。


 別に、某アニメの要塞の主砲とか、雷神様の太鼓とかではない、ハンマーの名前が”徹る”なだけである、突き抜けるの意味を込めて付けたつもりであった。


 雫斗は芝居じみた名付けの、パフォーマンスの後の沈黙に耐えきれず、すぐに収納して出かける準備をする、着替えとタオルを多めにリックに詰める、買ってきたペットボトルの水とサンドイッチ、今日はおにぎりも、すべてをリックに入れて出かける。


 玄関を出ると海慈父さんと良子さんに出くわした、「おう、今日もダンジョンか?気を付けてな」と海慈、雫斗の出で立ちを見てそういうと。「いってらっぁシャイまぁせ」と良子さんが声を掛けてくる。


 今まで畑で作業をしていた様だ、昼間は香澄が保育園に行っているので良子さんの仕事は海慈の手伝いとなる、当然働いてもらっているので給金は高崎家から支払われる。


 かつて良子さんは自分の主人となるべき人を探して放浪をしていた、自由ゴーレムで2年前に雑賀村に辿り着いた。


 どういゆ訳か、香澄を一目見るなり香澄のしもべとして仕えたいと雫斗の両親に直談判をして来たのだ。いくら人に危害を加えることは無いといわれているゴーレム型アンドロイドとはいっても、幼い香澄に近づけさせるわけにも行かず、最初悠美たちは拒否していたのだけど、高崎家の家の前に二週間近く居座られて根負けしてしまったのだ。


 当の香澄が良子さんを怖がらずになつき始めたのが決め手となったのだが、良子さんが香澄に使役される事については、幼い香澄が分別の付く年頃になってから、改めて決めましょうと言う事に為ったのだ。


 「行ってきます」雫斗はそう言って歩き出す、ダンジョン前で受付を済ませて1階層の奥を目指す、歩きながらも目に付いたスライムを爆破しながらも収納に小石を入れていく、収納から出したのは水中花火と体重計だけである、籠とハンマーとタブレットはかさばるので収納に入れている、後は一杯になったら一緒に測ればいいかと思ったからだ。


 今日のノルマのスライム100匹を爆破して、収納も一杯になったのでいよいよ計測タイムだ、バッグから体重計を出し、籠にトオルハンマーとタブレットを入れて測り記録する、測り終えたハンマーとタブレットをわきにおき、後は籠を乗せた体重計のメモリをゼロにして、ひたすら小石を計っていく、方法は収納した籠に小石を詰めて、出す測る記録する小石を捨てる、を繰り返した。


 結果は、125キロ、雫斗の体重の約2倍、結構な量が入るみたいだ、此れなら使い勝手が良い。


 さて、いよいよ最終兵器トオルハンマーの出番だ、体重計とタブレット、籠を収納するとスマホで時間を確認、後はスライムを探すだけ、この広間に残っているスライムは6匹程。


 最初のスライムに狙いをつける、大きく足を広げて斜めに構え、ターゲットに狙いをつけて後ろから半円を描くように振り抜く、”グワッシャ”命中、すかさずハンマーヘッドを引き込んで最初構えた姿勢に戻りそして振り抜く、”グワッシャ”命中、その工程を続ける、”グワッシャ”当たり、”グワッシャ”当たり、”ボグァ”外れ ”グワッシャ”当たり、”グワッシャ”当たり ”ボグァ”外れ。


 当たりと外れを繰り返し、25回目の振り抜きでスライムが弾けた。


 「はあはあはあ・・・、これ・・を・・つづけ・・はアははあ・のはしんど・・いぞ・・はあはあはあ・・・」。


 水を飲み、タブレットに記録して次のスライムへ向かう、「ヲォルリヤァー」、当たり、当たり、かすった 当たり 外れ、・・・スライムを殴り続け、4匹目で力尽きた。


 仰向け倒れこんだ雫斗は、呼吸を整えながら今更ながらに自分を罵倒していた。”誰だ、こんなこと、考えたのは?”(お前だ!)このハンマーで一日100匹を倒すなんて、無理、絶対無理、神に誓って無理”。


 スライムを倒すための打撃回数は平均26回、ミスも合わせると30回近くにもなる、呼吸を整えて冷静になると、ミスを減らせば打数も減るし効率よく叩けば、ダメージも多くなるんじゃないかと思い始めた。


 それに、これだけ動けば力も付くし、持久力も上がるだろうし、何と言ってもスピードを上げれば素早い動きにも拍車がかかるかもしれないと思い直して。


 ”よし、まだ始めたばかりだし、もう少し頑張ってみよう”と雫斗は考えた、前向きである、確かに此れだけ動くだけでも体が出来上がりそうだ。


 そんな事を考えながら、雫斗は出口に向かって帰って行くのであった。



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