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第二話、ラブパワーの芽生え

ダンジョンの薄暗い通路に、魔狼の群れが唸る。リリアナ・ヴェルモンドは剣を握り、鋭い動きで一匹を斬るが、数が多すぎる。「くそっ、このままじゃ…!」 額に汗が浮かぶ。モブ貴族ユウトとして転生した悠斗は後方で叫ぶ。「リリアナ様、右端の魔狼がリーダー! そこを!」 ゲーム『ロイヤル・ブロッサム』の知識を活かし、敵の弱点を指摘。リリアナは一瞬彼を睨むが、指示通りリーダーを斬り裂く。魔狼の群れが散り、静寂が訪れる。


「なぜ助けた?」 リリアナの声は疑念に満ち、鋭い瞳がユウトを射抜く。ユウトは穏やかに笑う。「あなたが死ぬ運命、嫌なんです」。その言葉に、リリアナの胸が熱くなる。彼女の剣が突然、ほのかに光を帯びる。ゲームの隠し設定「ラブパワー」が、ユウトへの小さな信頼で発動したのだ。剣の速度が目に見えて速くなり、次の魔狼を一閃で仕留める。「何、この力…?」 リリアナは戸惑うが、ユウトは知っている。愛情が彼女の力を引き出すのだ。


夜、ダンジョンの外で焚き火を囲む。リリアナはユウトに問う。「なぜ私を信じる? 私は貴族社会で嫌われ者だ」。彼女の声は冷たく、だがどこか脆い。ユウトは静かに答える。「ゲームのあなたは、家族を守るために冷たく振る舞った。それを知ってるから」。リリアナの瞳が揺れる。彼女の心に、ユウトへの信頼が芽生える。ラブパワーがさらに強まり、彼女が試しに放った魔法が小さなハート型の炎を生み出す。「…バカらしい」と呟きながら、リリアナは頬を赤らめる。だが、遠くで新たな魔物の気配が迫る。リリアナは剣を握り直し、ユウトも補助魔法の準備を始める。二人は肩を並べ、ダンジョンの闇へと再び踏み出す。


**END**

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