父たちの学生時代(前編)
エステルは相談内容を述べる前に涙がこらえきれなくなった。
「おやおや、どうなさったのです」
「お父様にこんなご友人がいたなんて……」
(そして、私のために助言を残してくれていたなんて……)
エステルは父の心がうれしかった。
「私にはあなたにおすがりする資格がないのかもしれません。でも、公爵家の人々やサイモン様を守るためにどうか力を貸してください」
「資格がない? 奇妙なことを言うお嬢さんだ」
「でも、本当にそうなのです。実の母が急に接触してきて、でも、それを許せば周りに良からぬ影響を与えるような気がするのです」
「ふむ、ヴィルがねえ、なるほど」
エステルの言葉に侯爵は考えを巡らせる。
「母をご存じなのですか?」
「ああ、私と君のお父上だけじゃなくヴィルも学園の同級生だったからね。他に現国王陛下や王妃殿下もそうだよ」
「まあ!」
父からは聞いたことのなかった学生時代の話にエステルは驚きの声を上げる。
「ヴィルはなあ、ずば抜けて器量のいい女生徒でなあ、当時王太子だった現国王やそのほか男子生徒も心を奪われた。それだけなら、学生時代によくある話なのだが、彼女は自分の野心をかなえるためなら手段を択ばないところがあった。彼女の性格をよく知る者なら、いったい何を企んでいるんだと警戒するのも無理はない」
侯爵はかなり話し方をくずして語り始める。
「あの、学生時代にいったい何が? そもそも、父と母はどうして結婚したのですか?」
「おっ、やっぱり気になるかい? 娘としたらそうなるかもな。まあ、手短に言えば、ヴィルは当時王太子だった現国王を射止めるために、婚約者だったジョスティーヌ殿をあることないこと誹謗中傷して貶めた。もちろん、すぐ信じる者ばかりではないがやり方は巧妙でな」
「ひどい!」
「まあ、そうだな……」
「それでアザゼル、ああ、国王陛下の名前な、当時はそう呼んでいたから。彼も本気で婚約者のジョシィ、こっちはジョスティーヌ殿の愛称な、彼女を疑い始めたので、俺が独自に調査を開始したってわけだ、そこで驚くべきことが分かった」
「なんなのですか、いったい?」
エステルは前のめりにあって、ソルフェージュ侯爵の話に聞き入っていた。
「禁止薬物の使用さ、何を隠そうそれを見破ったのは俺でね。その能力を見込んで、君のお父上もなんかあったときには俺に相談しろって言葉を残したんだろうな」
「まあ……」
「つまり、俺と君の母上には浅からぬ因縁がある」
「あの、さっきの学生時代の話をもう少し詳しくお願いします」
エステルは自分の知らない両親の話をどうしても今知らねばならないように感じていた。