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【4枚目】デビュタントのドレスがありません。助けて!ダマえもーん!


「やーん!!遅刻遅刻ぅー!!!」


食パンを口にセットした私は今日も曲がり角に向かってダッシュする!


 最近風魔法を使って微妙にスカートと前髪が捲れないようにコントロールする事が出来るようになってきた。


(えへへ!私は『疾風のパン食い競争』!)


 なんだかんだ皆に付けてもらった二つ名に大満足している私である。


 すると、今日も後ろから走ってきた馬車が隣で停車して、男の人が降りてきた。

(はぅ…!ハリス・パディントン様!)


「…貴女はいつも同じパンを咥えている。何故だ?それは平民の日常食、食パンだろう。」

不思議そうな顔をして尋ねてきた。


「おはようございます!素敵な出会いの基本は食パン!これに限るんです!」


そう答えると、目を見開いて固まった。

「…そうなのか。それはまた余計なことを聞いてすまない。良かったら馬車に…ああ、そうか。曲がり角まで走らないと意味がないのだったか?」


そう言って少しだけ口角を上げた。あれ、もしかして笑った…?


「そうでーす!今日もしゃかりきに走りますね!」


私がそう言うと、少し考え込んでから頷いた。


「…しゃかりき…?わかった。その、怪我はしないようにな。」


「大丈夫ですよ。私は『疾風のパン食い競争』ですから!!」


そう言って私は今日も元気に走っていった。


 後ろでパディントン様が『疾風のパン食い競争…』と言いながらキョトンとしていたことには気付かなかった。


◇◇


 教室に着くと、クラスの皆がなぜかソワソワした雰囲気である。


「モニカー、ユリアちゃーん。おはよー!今日は何で皆こんな感じなの?」


そう聞くと、ユリアちゃんがビックリした顔で固まった。


「ちょっとルチアさん、今週末は社交界デビューじゃないですか!同い年の貴族の子女は全員参加ですよ!…まさか知らないとか言わないですよね?!」


とめちゃくちゃ早口で言われた。


 おおお、そうなんだ!…ん?という事は…。


「あ、じゃあそれ私も出るって事?…ですかね。」

そう聞くとモニカがぷるぷる震え出した。


「…ちょっとちょっと…!!


 まさか何も準備してないとか言わないわよね?!


 ドレスは本来だったら婚約者に送られるのだけど、貴女あの浮気クソ野郎に婚約解消されちゃったし。


 …まあそもそもアイツ元々送ってくるか怪しかったけど。」

 

そう言って怒られてしまった。


 そうだ、確か私はポール様にドレスを贈られると思って待ってたのだった。


 けれど婚約解消されて…。


 がちょーーーーーん。


 その後自分で何か用意した記憶は、ない!!!


 私のばか馬鹿馬鹿!!


「わーん、忘れてた!!どーしよ…。」


「とりあえず今日は遊んでないで家にまっすぐ帰りましょう。ご家族が気を利かせてご用意してくれているかもしれませんし。なかったら『ショッピング・オブ•エターナル』に泣きつきましょう。」


と、ユリアちゃんに諭されてしまった。


 あ、ダマスクス君ってそう言えばお父さん、商会やってるんだっけ…。


 とりあえず、今日は遊んでないでまっすぐ帰らなきゃ。しょぼーん。


◇◇


 授業が終わると大急ぎで家に帰った。


「お母様ー!そう言えば今週末って私、社交界デビューですよね?ポール様と婚約解消しましたが、何か着るドレスってありましたっけ…。」


すると、お母様がピシッと固まった。


「そう言えば…!

 

 婚約解消が衝撃的過ぎて忘れていたわっ。すぐに用意しなければ!」


あわわわわ!


(ダマえもーーーん!何とかしてちょーーーーー!)


こうして私はお母様とアンとすぐにダマスクス君の実家の商会へと足を運んだのだった。


 これでドレスを用意出来なかったら偉いこっちゃである。


◇◇


「…ということで、無理を言っているのはわかっていますわ。けれど、なんとかデビュタントのドレスをお願い出来ないでしょうか。


 既製品を採寸してこの子のサイズに詰めて頂いて、刺繍や飾りでなんとなくそれっぽくでも良いので!」


うう、お母様、頭を下げさせてしまってすみま千円。


「そんな!トラボルタ夫人!顔をあげて下さいませ!大丈夫です!オーダーメイドならともかくそういうことなら頑張って仕上げますので。」


ダマスクス商会の服飾店、『アンボワーヌ』のデザイナーのナンシーさんがギュッと力強くお母様の手を握る。


 後ろでは話を聞いてすぐデザイナーさんに話を取り付けてくれたダマスクス君が親指を立ててくれている。


 うううう、ダマえもーん!!恩に切るよ!


 こうして私とダマスクス君、お母様やアンから色んな話を聞きながらナンシーさんはインスピレーションを得たようだ。


「やりますわ!私!ルチアお嬢様にピッタリのドレスを仕上げてみせますっ!!」


そう言って決意に満ちた表情になった。


 うおおおおおお!カッコいい。ありがてぇ、ありがてぇ。


 こうして、私のデビュタントのドレスは無事急ピッチで作られることになったのだった。


 デビュタントの前日、ギリギリに出来た上がったドレスはフワフワしたベージュの可愛らしいドレスで、袖やウエスト等アクセントになるところに茶色い素材が使われている。


 用意されたアクセサリーもゴールド系やブラウン系の可愛らしいものである。


「かんわいいですー!ナンシーさん!どうやってこんな可愛いデザインを思いついたんですか?!」


と聞くと、照れた顔で、

「うふふ、お話された中で毎朝召し上がっているというので食パンをイメージしてみました!」

と言われた。


 うおおおおおお!天才!天才がここに降臨しましたよ!


 こうして私はすったもんだありつつも無事デビュタントのドレスを手に入れることが出来たのだった。





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