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【3枚目】イケメンにはぶつかりませんが、友達が出来ました。


 あれから1週間。


 今日も私は、学園の50m程前で馬車を降ろしてもらった。


「お嬢様…今日もやるのですか?」


アンは呆れた顔をしているが、私はやる気満々だ。


「当たり前よ!今日こそ犬以外にぶつかるはずよ!」


そう言って私は食パンを口にセットした。


「やーん!!遅刻遅刻ぅー!!!」


今日も曲がり角に向かってダッシュする!


 ちゃんと初日の反省を踏まえて、スピードをいい具合に落とした!怪我したり、ジローにぶつかったら可哀想だもんね。


(良い出会い!安全第一!)


すると、後ろから走ってきた馬車が隣で停車して、男の人が降りてきた。


(はぅ…!この人は氷の貴公子、ハリス•パディントン様!!!)


「…貴女は何故いつもパンを咥えて走っている?」

不思議そうな顔をして尋ねてきた。


「おはようございます!


 パンを咥えて走っていたら良い出会いがあるかなぁと思って!


 私、婚約解消されたので婚活中なんです!」


そう答えると、目を見開いて固まった。


「…そうなのか。それは余計なことを聞いてすまない。良かったら馬車に乗って行くか…?」


「あ、大丈夫ですー!

 

 だって曲がり角まで走らないと意味ないですもん!」


私がそう言うと、何か考え込んでから頷いた。


「…わかった。いや、正直よくわからないが。とりあえず頑張ってくれ。」

「はーい!!」


そう言って私は元気に走っていった。結局今日は誰にもぶつからなかった。なかなか難しいものである。


◇◇

 

 教室に着くと、モニカに話しかけられた。

「よっ。ルチア。婚活は順調ー?」

「よっ。モニカ。相変わらずな感じー。」


あれから何故か私は友達が増えた。


 ちなみに昨日は校庭の裏山でキノコを採取して、焼きキノコパーティーをした。


「今日は何するー?!」

私はすぐそこにいたクラスメイトの男爵令息、ジェイ•クルス君に聞くと、即答してくれた。


「秘密基地作りませんか!僕、隣のクラスから土魔法使える人連れてきます。」


ちなみにクルス君の婚約者の男爵令嬢、ナナ•トルレーニちゃんも一緒である。ナナちゃんは運動神経が抜群のスポーツ女子だ。


「あ、じゃあ小テストも近いしそこで勉強しましょう。」


そう言ってくれたのは優等生の伯爵令嬢ユリア•メイベルちゃんである。


「賛成ー!!!」


その場にいた何人かが賛同してくれたので、今日の放課後は基地作りになった。


「じゃあ私おばちゃんから食料調達してくるー!」


私は調達班にまわった。


 食堂のおばちゃんの所に行くと、おばちゃんが申し訳無さそうな顔で大量のレモンを渡してきた。


「ごめんね。ルチアちゃん。今日はこれしか余ってないの。」


なので砂糖だけ貰ってモニカと大量にレモネードを作った。


「…ルチア、あなた子爵令嬢よね?なんでレモネードの作り方なんで知ってるの?」


「えへへー。お母さんに教えてもらったんだー。」

そう言うと、

「ふぅーん。貴女のお母様、貴族のご婦人なのにお料理なんてしてたっけ?」

と言われたのでギクッとしてしまった。


「えええええええーと!お母さんの知り合いのお姉さんのいとこの叔母さんの叔父さんの娘あたりかな!」


と誤魔化したら、

「それって完全なる他人じゃん。」

とツッコまれてしまった。


 みんなで土で出来たかまくらでレモネードを飲みながら勉強していたら、また『氷の貴公子』様が来た。


「…何をしているんだ?」

「あ!『氷の貴公子』様だ!」

私が思わず言うと、みんなに口を塞がれた。


「おバカーーー!!これは皆が勝手に呼んでいるだけでご本人は知らないのよ!」

と小声でモニカに注意された。


「申し訳ありません!パディントン様!この子いい子なんですけど、ちょっと…!」

モニカが慌てて謝るので一緒に頭を下げて恐る恐る顔を上げると。


 カチーンと固まったままの表情のハリス様が立っていたが、耳だけ真っ赤だった。


「…構わない。ルチア・トラボルタ嬢。だが、普通に名前で呼んでもらえると。」


「はーい!」


そう言って笑顔で答えると、まだ耳は赤かったが満足げに頷いて去って行った。


 一緒に勉強していたクラスメイトは固まっている。


「びびったー。ちょっと、トラボルタさん、気をつけてよー!あの人公爵家の令息だし怒らせると怖いよー。氷の貴公子なんて、冷たくて怖そうともとれる二つ名だし、本人は嫌かもしれないでしょ!」


そう言ったのは土魔法でカマクラを作ってくれた隣のクラスで大きな商会の息子のベルン・ダマスクス君だ。


 私はキョトンとしてしまった。


「え、あの人が?全然怖くないよ!きっと仲間に混じりたくて来たんだよ!この前スイカ美味しそうに食べてたし!きっとレモネード飲みたかったんだよ!」


そう言うと、モニカはため息をついた。


「まあ、とにかく何もなくてよかったわ。もー、ちゃんと考えて喋ってよね。」


私は怒られてシュンとする。


「ふぁーい。。あ、でも私も『氷の貴公子』みたいに何かカッコいい二つ名が欲しい!」


「じゃあ、皆でそれぞれの二つ名を考えてみましょうよ!」

案外ノリノリでクルス君が言ったので皆で考えることになった。


 結局ユリア・メイベルちゃんが『黒薔薇の優等生』、ジェイ・クルス君が『蒼き光とメガネ』、クルス君の婚約者のナナ•トルレーニちゃんは『どんと来い、魔球』、ベルン・ダマスクス君が『ショッピング・オブ・エターナル』、モニカが『隻眼の魔法少女』、私が『疾風のパン食い競争』になった。


 …なんだか私だけカッコよくない気がするのは気のせいだろうか。

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