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【18枚目】曲がり角でぶつかるイケメンは、私でもいいだろうか。

 

「ハリス様、…どうして?」


私は驚きで目を見開く。


 すると、ハリス様が照れ臭そうに言った。


「妹が、リズが君が曲がり角でイケメンとぶつかる為に食パンを咥えて毎朝走っていると教えてくれた。


 イケメンとは、顔が整った令息のことらしいが。


 …私でも良いだろうか?」


私の中で困惑と嬉しさがごちゃごちゃになる。


「…でも!!ハリス様は私の事、忘れてしまったんですよね?!」


すると、申し訳なさそうに眉を下げた。


「ああ。だが、初めて君を目にした時から正直可愛いと思った。


 だから、君と恋人だったと聞いて困惑はあったものの、正直納得した自分もいた。


 そして、保健室で変顔をして私を笑わせてくれようとしただろう?


 きっと記憶を失う前の私も君のそういう楽しい所を好きになったんだと思う。


 だから。


 ルチア・トラボルタ嬢。


 私ともう一度初めから恋してもらう事は出来ないだろうか。」


そう言ってハリス様は頭を下げてきた。


 私はどんどん目頭が熱くなっていって、気づいたらボロボロと涙を流していた。


 泣きながら私はなんとか伝える。


「…初めてだったんです。」


頷きながらハリス様が続きを促してくれる。


「きちんと人を好きになった事も、キスした事も、デートをした事も。


 デビュタントで踊ったことも。


 みんなみんな、貴方が初めてだったんです。


 だから、忘れてしまったのはとても、悲しい。


 けれども!!!

 

 これからもハリス様が隣にいてくれるのはとても嬉しいですっ!!!」


そんな私を優しい目で見ながらハリス様は引き寄せた。


 目が合うと、私の大好きだったフワッとした笑顔を見せて、キスしてくれた。


「やっぱり、君とキスした事がある気がする。


 …それに、あれから、このブレスレットを見ると、どうしてか君の顔が思い浮かんだ。


 これは、君がくれたんだろう?


 それに、このピアスも君のネックレスとお揃いのものだ。


 …忘れてしまったはずなのに。何故かここ一週間考えるのは君の事ばかりで。


 君が他の誰かに曲がり角でぶつかって、その誰かのものになってしまうのかと思ったら耐えられなくて。


 気づいたらここに来ていたんだ。」


そう言って私の事を抱きしめてくれた。


「もう忘れたら、許しましぇんよ…。」


私がぐすぐすしながら言うと、にっこり笑いながら答えてくれた。


「ああ、もう絶対に忘れない。」


―その日、私は初めて学校を休んだ。


 そして、ハリス様と2人で初めてデートしたサンティス広場に来ていた。


「ここで、待ち合わせをして、このレストランでランチをして付き合う事になったんです。」


私がそう言うと、ハリス様は目を細めて聞いてくれている。


「だったら、もう一度行こう。確かにここは、私のお勧めの店だ。」


そう言って、ハリス様が私の手を握ってくれたので、2人でお店の中に入る。


 平日の早い時間でまだガラガラだったので席は選びたい放題だ。


 私達はあの日座った席に座る。そして、笑いながら食事したのだった。


◇◇


 次の日から毎日、放課後になると私はいつも通りクラスメイトとわちゃわちゃ遊んでいた。


 ただし、その中にハリス様が混ざるようになった。


「今日はみんなでピザパーティーをしようー!!!」


 ダマえもんが土で竈を作って、火属性を持っているユリアちゃんが火をつける。


 そして、私とハリス様が打ったピザにナナちゃんとクルス君がトッピングをした。


 それをモニカが手際よく窯に入れて、ユリアちゃんがカットしてくれた。


 うーん、良い匂い!!…頂きマンモスっ!!


「まあ、いい匂いですわっ!私も混ざって良いですか?!」


エリザベス様もいらっしゃったのでみんなは『もちろんですっ!』と言って席を空ける。


「「美味しいー!!!!」」


そう言ってみんなでピザを食べていると、なんと元婚約者のポール様が何とも言えない顔でこちらを見ている。


 モニカが警戒心丸出しで

「何の用ですか?」と聞くと。


「その…ルチア。色々と申し訳なかった。」


そう言ってなんと、ポール様が頭を下げてきた。彼にも何か心境の変化があったのだろうか。

 でも、洗脳にかかる前のことをもう思い出す事は出来ない。


「…もういいですよ。それに今、私には超ラブラブな素敵な彼氏がいるので。」


そう言うと隣でハリス様が照れて耳を赤くしている。


「でも。謝ってくれた事は嬉しいので、ピザ一切れくらいなら分けてあげます。」


そう言って紙に包んでピザをあげると、ポール様は

「ありがとう…。」

と言いながら去っていった。


「あ、そう言えばエリザベス様はルーク様と順調なんですか?」


私がそう聞くと、エリザベス様は顔を真っ赤にして頷いた。

「ええ…。実は、私、ルーク様が初恋だったの。もちろんカール様と婚約が決まってからはそんな気持ちに蓋をしてたのだけど。


 それに、実はルーク様も私の事をずっと想っていて下さったみたいで。


 だから…。私、今幸せだわ。」



(…そっか。だからルーク様はミラ・エマーズの魅了魔法にかからなかったんだ。きっと、ずっとエリザベス様を見てたから。隣国の姫と婚約がなくなったのに、全然ダメージを受けてなかったのはそう言う事だったんだな。)


 そう思うと胸があったかくなった。


「エリザベス様、良かったですねっ。」


私がそう言うと、エリザベス様はとても綺麗な笑顔で笑った。


 皆も微笑ましい目でエリザベス様を祝福するのだった。



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