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錢館  作者: あ行
9/24

9同室

「はぁ、」

 偽善は自分でため息を吐いたことすら気づかずに、ベットに横たわる。

「…………。」

 唯一一人の時間。心音は秒数。貴重な一滴。

「…………しつ、」

 目を逸らす。思い出したから。

「また明日があるのか、おれに……生きる価値なんて、あるのか……」

 天井に手をかざす。包帯…………。

「…………。俺も……これがなきゃ、普通になれたのかな、ただの、ただの出来損ないだったのかな、」

 視界が歪む。嫌だ。泣きたくない。

「…………う、」

 涙が金へと変わる。

「……、」

 こんな自分が

「大っ嫌いだ……。」

――――――――

「…………。」

 麒麟のように長い廊下を歩く。

 月。今日は三日月か。月に行ったら、誰にも邪魔されず、自由が待っているのか。目を閉じて死ねるのか。そうであってほしい。

 自室へ戻る。

 ガチャ

「なっ……!お前、なぜここにいる。」

「そりゃあ、そうですよね。私も驚きました。」

淡々と言葉を述べる。

「お前の部屋はここじゃあない。あっち行け。」

 戸の外へと指差す。

「まず中で話しましょう。寒いでしょう?」

 冷たい風が指に当たる。

――――――――――

「で、どう言うことだ、ですか。」

「えぇっと、」

 顎に手を当てる。肩から髪が垂れる。

「先程、私の部屋へと戻りますと、お前の部屋は無くなった。今日からは違う奴が使う。偽善とやらの部屋にでも行け。と、除け者扱いで……。」

「……?、?訳がわからない。もう少し分かりやすく言え、ってください。」

 言葉の意味は理解できても、文章では理解できない。

「まぁ、悪く言えば部屋を追い出されたと言う訳です。」

「……え、」

 今すぐにでも、出て行けと言いたいが、そうしたらこいつの住む部屋が無くなる。よく見るとベットが二つになっていた。

「…………。静かに過ごせよ。」

「ありがとうございます。言われなくてもそうしますよ。」

 執事はまた途中の荷解きを再開する。

 ガタガタ

 偽善は部屋の中心に机を引きずる。何をしているのでしょう。

「こっから」

 部屋の端から

「ここまでが」

 端まで小走りする。

「境界線だ。ここの線を越えるなよ。立ち入り禁止だ。」

「ふふっ、そんな線、なくても私は」

 腰からベットを降りる。

「あ、ちょっ」

 偽善が決めた境界線を越える。

「偽善の隣に行きますよ。」

 近い。距離感がいかれてやがる。

「…………ぅ、」

「ふふふ。」

――――――――――――

「「………………。」」

 執事は何度も読んだ小説を読む。同じセリフ、行動、人物。全てが同じだ。

「……すぅすぅ。」

 偽善はベットの上で、可愛く寝ている。

「…………しつ、」

 執事のページをめくる手が止まる。そして偽善の方へ行く。

 偽善の頬を撫でる。

「はい。執事はここに居ますよ。ずっと貴方のそばに。」

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