7涙
「……っ、」
偽善の頬に一筋の涙。数秒も経たない内に、金へと変わっていった。
「ん、今回も少ないようだなぁ。もっと頑張れよ。」
それを丁寧に館主人がすくい上げる。
「……ぃ、」
「ごめんよ。偽善。ほんとはこんな事したく無いんだ。」
言葉だけを述べ、偽善の腕にまた新しい傷を増やしていく。
「うんうん。もう今日はこのくらいで良いかな。偽善、部屋に戻って良いぞ。」
笑顔を貼る。偽善は疲れていて、まだぐったりとしていた。
「早く去れ。」
「……。」
――――――――
暗闇の廊下を歩く。
「………………。」
奥から誰かが歩いてくる。
「おや、」
「げっ、」
執事だ。こんな深夜に何でいるだ。
「偽善、こんな夜遅くにどうされたのですか。」
「それはこちらのセリフだ。何故ここにいる。」
偽善らしい回答だ。
「私はお子が寝られないと仰りましたので、子守唄を歌っておりました。」
「ふぅん。」
見下される。
「偽善は、どうされたのですか。」
ぐいっ
「…………!!」
「この腕は。」
きつく腕を掴まれる。逃げられない。血が腕を伝う。
「こ、これは、」
「ふふ、まず、手当てをしましょうか。」
――――――――――――
「自分でできる。このくらい。」
「ふふふ。嘘仰い。」
執事の方を見る。まつ毛が長い。
「少し、滲みますが我慢してください。」
「…………っ。」
消毒液が滲みる。意外にも、偽善が大声を出さなかったので執事は驚く。
「偉いですよ。」
「お前が夜は静かにしろといったんだろう。」
「ふふ、そうでしたね。」
執事は朗らかに笑う。何でも許してくれて、包み込んでくれそうだ。
チョキン
包帯をちょうど良い長さにして、ハサミで切る。それすらも楽しそうに笑っている。
「私の顔に何か付いてますか。」
「……!付いてない。」
見ていたのを気付かれていた。
困り眉で笑う。
「そう顔をそらさないで。あともう少しで終わりますよ。」
綺麗に包帯が巻かれていく。芸術と言っても過言ではない。
「…………。」
なんで、俺なんかに優しくするんだろう。俺に優しくしたらバチが当たる。
「なぁ、」
「何ですか。」
ほほ笑む。何故かはわからないが、泣きそうになった。
「何でも無い。」
「……?そうですか。」
それ以上何も言わずに、包帯が巻き終わった。
「よし。出来ましたよ。」
「…………。」
「偽善、」
目が合う。目を逸らしたくなった。
「またお怪我をされたら、私を頼るのですよ。では、また。」
行ってしまう。
「おやすみなさい。」
「……ぁ、」
バタン
「しつ、」