5ごめん
「……ちっ。」
朝だ。窓からの朝日が鬱陶しい。
着替えて、目の前にある最低限の朝食を食べる。
「…………。」
味がしない。
「こんな、仕事……!こんな館っ……!!」
ゴンっ
食べかけのご飯が目に入る。
「無かったらっ……!!!俺はっ、俺はっ」
ガシャン
「幸せだったのに……。」
音が途切れる。
床にぶちまけた朝食をそのままにし、戸を開ける。
「……わっ、」
執事が礼儀正しくいた。
「偽善様、昨日は無礼を働き」
「邪魔だ。」
肩が擦れ合う。
「……、」
――――――――――
「偽善様、」
げっ。またこいつだ。
「これを。」
「…………?」
小さく折った紙を袂から手渡される。それだけ言って何処か去って行った。
なんか言われるかと思った。なんだ、違うのか。
子の部屋へと戻る。
「…………。」
早速、手渡された紙を開けてみる。
「……あ?」
文字だ。綺麗な達筆文字で書かれている。
「くそっ。文字だ。これ、何て読むんだっけ。こ、こめんなそり?」
――ごめんなさい。
「はぁ?!あいつまた謝ってきやがった。」
――――――――――
「…………、」
夜。ようやく一日が終わろうとしている。あとは寝るだけだが、何だか寝たく無い。瞼は鉛のように重いのに。きっと、明日が来るのが嫌なのだろう。
「……しつ、」
無音の部屋に響き渡る。
この部屋に俺しかいないのに、誰か聞いていそうで怖い。一人とはそう言うものだ。
コンコンコン
誰か来たようだ。
「…………?」
誰だ?こんな夜遅くに。
頭を上げる。戸の方を見た。
「偽善様。私です。執事です。」
「…………。」
なんだ。あいつか。
枕に頭をボンッと戻す。
「あぁ、偽善様。聞いていらっしゃっるのですね。」
俺は今聞いていない。もう寝ているんだ。
目を閉じる。
「昨日はご無礼を働き申し訳ございません。」
目を開ける。
「うわぁ!!」
執事がいた。
「何故ここにいる!出て行け!!馬鹿!」
「ごめんなさい。鍵が開いていたのでつい。」
「はぁ?!それだけで部屋に入ってくる奴がいるか!!んぐ!」
偽善の口に執事の人差し指があたる。
「夜ですよ。」
ちかい。でこに執事の髪が、
「ふふふ、目、ぐるぐるしてますね。」
「…………。もういい。さっさと出て行け。綿菓子野郎。」
執事が体勢を直す。その姿ですら丁寧だ。
「それでは、許してくださる……と言う事なのですね。」
「あぁ、もういい。出て行け。」
またふふふと笑い、執事が出て行こうと、
「おや、」
机の上にに銀木犀が置いてある。
「それはっ、!」
「偽善様、駄目ですよ。これは偽善様の物では無いでしょう。明日、一緒に謝」
「煩い!」
ドンっ
静かな部屋に響く。
「……分かりました。これは没収です。」
「……っ、」
あんなに優しい執事に睨まれる。
少し、少し怖い。