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錢館  作者: あ行
4/24

4休憩

「…………。」

 木陰のように日差しが差し込む廊下を歩く。

「ぁ、あの子。例の子じゃない?」

「えぇ?あの子?そうだったの?」

 馬鹿共が(さげす)む目で喋ってる。全て筒抜けに聞こえてるぞ。

「そうそう。前に騒ぎを起こした……、」

「あぁ、あれねぇ!」

「ばか!バレるよ。」

 煩い。

「……あ゙ぁ?」

「「……ひっ!」」

「早く行きましょ。」

 ねずみみたくチョロチョロと逃げていった。

「…………。」

 何でもできる奴に何が分かる。

――――――――――

「……ちっ。」

「……。」

 子がまた怯える。昨日のことがあったので、なおさらだ。

 解きかけの紙に目をやる。

「…………。」

 もうやりたくない。これをやって何を得られるか分からない。

「…………。」

 さっきから、あいつの筆先が止まっている。勉強なんて裕福の奴がする事なのに、あいつは分かってない。それが気に食わない。

「……おい、」

「……な、何。」

 上目遣いで俺を見る。

「お前は何も分かっていない。」

「何が……、」

 最後の言葉を切る。

「お前は裕福なんだ。それなのに、お前は馬鹿で、能天気で、」

「     」

 なんでそんなこと言うの。簡単に言って良い言葉じゃない。

「う、うぅ、……っ、ぐす、」

「泣いても俺とお前に価値なんてない。」

――――――――――――

「〜♩」

 滅多にない昼休憩。特別な日だから、庭に来た。 

「これが終わったら、お子の迎え、その次にお風呂、夜食、あぁ、私ったら、」

 職業病ですね。

 誰かに聞かれているかもしれないので、飲み込んだ。

「〜♩〜♩」

 誰もが聞き惚れてしまう歌だ。

「昼休憩〜、昼休憩〜。いい響きです。花も美しい。」

 焦らすように撫でる。

「おや、」

 誰かいるようだ。

 ひょこっと顔を覗かせる。その拍子に髪が垂れる。

「…………。」

 偽善だ。いつもと違って騒がしくないから、一瞬誰だか分からなかった。

「偽善様、」

「……わっ!!」

 誰だ。

「ふふ、また驚かしてしまいましたね。」

 にこっと太陽の光に包まれて笑顔だ。なんだ、こいつか。

「…………。」

「おや、」

 いつもの様に何か言ってこない。まぁ、こい言う時もあるだろう。

「しかし今日はっと、暑いですね。」

 そう言いながら、貴方の隣に座る。ふわりと髪がなびく。

「…………。」

 また無視された。目が点になる。どうされたのでしょう。

「「…………。」」

 少し気まずい。

 長い袖をまくる。

「偽善様は、暑くはないのですか。」

「……くない。」

 あからさまに暑そうだ。首元に汗が垂れている。

「ほら、私のように腕をまくって。」

 偽善の細い腕に触る。

「…………!!何するんだやめろ!!」

「………!どうされたのですか。この包帯はっ、」

 偽善の腕には血の滲んだ、歪な包帯が巻いてあった。

「こ、これは!」

 大丈夫。大丈夫。相手はただの傷だと思ってる。はず、

「お前には!関係ない。」

 また走って逃げてしまう。

「……あ、ご、ごめ」

 偽善が遠ざかって行く。それでも手をかざす。意味も無いのに。

 偽善のあんな顔見たら、

 あんな顔されたら、

――――――――――

「…………。」

 夜。少し金木犀の香りが強い。

「今日は偽善様に……悪いことをしてしまいました。」

 夜風が頬を撫でる。まだ少しぬるい。

「……明日もまた、同じことの繰り返しですか。」

 月すら執事のことを見ない。

「こんな館なんか、」

 こんな館なんかいつか絶対抜け出してやります。

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