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錢館  作者: あ行
3/24

3庭

「…………。」

 蒸し暑い湯気が顔に当たる。朝ごはんの準備をしているところだ。もちのろん、子のご飯だ。

「…………ちっ、」

 何故あいつの為に、準備なんかしなくてはいけないんだ。

 鬱憤がふわふわと溜まる。

「偽善様、」

「うわぁ!!」

 いいリアクションだ。そのまま額縁に収めたい。

「だ、か!ら!!脅かすなって!!」

「ふふっ、すみません。以後気をつけます。」

 絶対反省してない。

「あぁ、偽善様。配膳は左がご飯、右がおかず、そして奥が汁物ですよ。」

 基礎すら知らないのか。

「あぁ?そんなもんどうでもいい。」

 そう言葉を投げ捨てて、子の部屋へ向かう。

――――――――――

「…………。」

 頬に手を当てながら、外をぼーっと眺めた。偽善さんは、部屋の掃除をしてくれている。

「…………ぁ、」

 小さな小鳥が飛ぶ。

 一羽だけ……。群れでいないのかな。

 太陽の光が部屋に注ぎ込む。花にじょうろで水をあげてるみたいだ。

「ぎ、偽善さん…………、」

「あ゙ぁ?」

 睨む。

「…………っ、」

 睨まれた。けど、言わなきゃ。言葉にしなきゃ、伝わらない。

「僕、外に行きたいな。」

「そんな事か、行かせない」

――偽善や。何か頼まれたら、快く従ってくれ。

 笑顔を貼る館主人が浮かぶ。

「……ちっ、行くぞ。」

――――――――

「……ま、待って。」

 偽善は花など見ずにずんずん先へ進む。これじゃあ、散歩の意味がない。

「…………!」

 ……?偽善さんが急に止まった。何かあるのかな。

「おい、違う所行くぞ。」

 さっきとは真逆の方向へと進む。

「うん、……」

 何があったんだろ。

 振り向く。目があった。

「おや、こんにちは。」

 執事さんだ。確か、前に優しくしてもらったっけ。

「こ、こんにちは、」

「……げっ。」

 偽善は見つかったと言わんばかりの顔をする。

「ふふふ。散歩ですか。良いですね。」

「もうさっさと行こう。」

 執事の言葉を遮り、どこかへ行こうとする。

「あぁ、ちょっとお待ち下さいまし。」

「あ゙ぁ?こっちは忙しんだよ。」

 散歩なのに?可笑しな方ですね。

 内心笑う。

 チョキチョキ

「これをどうぞ。」

「あ、」

 小さな銀木犀だ。ほのかに甘い香りがする。

「ありがとぅ、」

 声が小さくなってしまった。

「いえ、喜んでもらって幸いです。」

 小さいのに聞いてくれた。優しい笑顔だ。

「もう行くぞ。」

――――――――――――

「……♩」

 子は上機嫌だ。ぶらぶらと足を漕ぐ。あれからずっと、銀木犀を見つめている。空にある星を無視してまで。

「…………。」

 一方、偽善はむしゃくしゃしている。俺が不幸なのに何故お前は幸運なんだ。

「……偽善さん、ぇっ、」

 机に置いていた無数の星を盗られた。

「要らないよな。こんな物。」

 なんで、なんで。

「まって……、」

 僕の宝物が、

 バタン

「………………ぐすん。」

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