20またいつか
「……。」
廊下を歩く。偽善さんのいない廊下を。
「偽善さんどうしちゃったんだろ……。昨日、おかしかったな。」
「ねぇ、偽善っていう奴ともう一人逃げたらしいわよ。」
他の執事たちが立ち話をしていた。
「……ぇ」
じゃあ、昨日の偽善さんは、偽物……。
こちらに気付く。
「こんにちは。お散歩ですか。いいですね。あら、」
子は部屋へ全速力で走る。
「偽善さんっ、の部屋って……確か、」
執事たちの部屋から一つ選ぶ。
ガチャ
誰もいない。もう一つのベットはぐちゃぐちゃに荒れていて、もう一つのベットは綺麗に整頓されていた。
それより他の物は無かった。
「……そ、んな。」
その場に立ち尽くす。
「……そっか。」
偽善さんは偽善さんなりの行動をしたんだ。
ふと、机の上を見る。何故か中央に置かれている机を。
「何これ。」
小さな瓶を拾い上げる。中には椿の花弁が詰め込まれていた。しかしもう枯れているようだ。
「これって、執事さんがやってくれた……あれ、紙?」
瓶の下に四つ折りの紙が置いてあった。開いてみる。
ごめんなさい
拙い文字で書かれていた。
「……いいよ。偽善さん。」
「またいつか会おう。」
「……ちゃんと伝わったかな。」
「はい。伝わっておりますよ。きっと。」




