11大掃除
「お前たち!!今日は館の大掃除。サボりや逃げ出す奴がいたら即クビだ!!」
いっその事、そうしてくれ。
この館の執事で二番目に偉いやつが、なにか喚いている。
偽善の方を見る。呆れた顔をしていた。
「何をモタモタしてる!早く位置につけ!もう配属は決まっているだろう!!」
皆、ぞろぞろと機械のように向かっていく。
「偽善、」
ひょこっと聞く。
「うわぁ!」
「ふふふっ、そろそろ慣れてください。」
頬を赤らめてくすくす笑う。
「偽善の掃除場所はどこですか。」
「廊下だ。」
偽善はこちらを見ず。ただ、遠くの長い道を見ている。
「あぁ、それだと離れ離れですね。私は庭です。一緒だと良かったのですが。」
「一緒にいても、良いことなんか」
透いた目が合う。
「無いだろう。」
――――――――――
「んーと、まずはこの花瓶を皆んなで動かすぞ!けど、こっちの五人は違う花瓶でお願い。で、」
刃物が脳に刺さる。
「出来損ないのお前には何もやるなと言いたい所だが、窓拭きぐらいはできるであろう。」
雑巾とバケツを手渡された。
「…………。」
バケツに水を汲んで、大画面の窓を拭く。
「そう、そこ持って。」
「よいしょっと。」
「これはどうすればいい?」
「あぁ、それは置いておいて。」
背中から皆んなの会話が聞こえてくる。無意識に聞いてしまう。
「いくぞ!せーのっ、」
「やった。皆んなでできたよ!」
「あはは、皆んなでやったら楽だね。」
窓越しに皆んなが映る。皆んな同じ事をして、皆んなで協力しあって
「…………。」
ふと、鏡の世界で誰かが動いた。
「………………、」
目が合う。
「 」
自分だった。
「…………。」
惨めな目を逸らす。
「…………、」
バケツには醜い自分が映っていた。
「はぁはぁ、」
過呼吸になる。
ガシャン
足がもたついて、バケツが転がってしまう、隠せない失敗のように。
「……ぅあ、」
「はぁ、またやったな。お前に任せた俺が馬鹿だった。返せ。」
「……ぁ、」
唯一の仕事を奪われる。
「なぁに、またあの子、やらかしたの?」
「やだ。ほんとだ。よくこの仕事続いてるね。」
誰か、
「あ―、この子って―しか、」
「そう―う。」
「「――さの子!!」」
「なぁ、―うなんだよ。―主人と―にかしてるのかぁ?!」
誰か、
「あ、」
「逃げた。」
俺の隣にいて。
幸せな話も後々あります