1仕事
「ちっ……、早く着替えろ。」
「……ぅ」
子はもたもたと服に腕を通す。現代には珍しい洋服だ。子供のくせにいいもん着やがって。
あぁ、もうこんな、こんな執事の仕事なんて辞めたい。
「あ゙ぁー、それだと会場へ間に合わない!」
「……っ、」
子は今にでも泣きそうだ。
「俺がいないと何も出来ないな。服すらも着替えられないのか。」
「……うぅ。」
子は泣いてしまった。月夜に照らされながら、月のように淡く光る。
「泣くな。」
――――――――
相手のことお構いなしに、長い廊下を歩く。
「ま、待って、」
「おや、今晩は。」
ばったり他の奴に出会ってしまった。にかっと笑っている。
「執事たるもの、主人の後を歩くのが当然では?」
「あぁ?お前にはどうでもいいことだ。」
ぎっと眉間の布を寄せる。
肩が擦れ合う。
「ふふふ。」
――――――――
「では、三時になりましたらまたここへ来て下さい。」
「そんなこと、とっくのとうに知っとるわ。」
部屋に戻ろうと
「おぉ!偽善。良くやってるか。」
「あぁ、館主人。」
この館の主人だ。商業じみた笑顔を貼っている。会いたくなかった。
「今日の"あれ"はこちらの都合で無くなった。伝えられて良かったよ。」
「………、」
「返信は?」
鋭い刃物が脳に刺す。
「……い、」
「うっはは、良い良い。」
ガチャ
「…………。」
硬いベットに倒れる。やっと一人の時間だ。
「こんな……、こんな館、全部壊して出て行ってやる……!」
偽善 →口悪
執事 →敬語
子 →静か
館主人→館の主人