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【完結】呪縛 〜心を呪縛された男と、体を呪縛された少年の狂恋譚〜 〘R15版〙  作者: 路明(ロア)
14.妄想に嫉妬する

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GELOSO DELLE DELUSIONI 妄想に嫉妬する II

「直前か……」

 ダンテは記憶をさぐった。

 最近は(こと)のあとに話しかけてくれることがなんどかあった。

 コルラードのほうからキスしてくれようともしたり。

 ぎこちない舌の動きがかわいくて、つい何の手助けもせず薄目で様子を伺ってしまった。

 濃厚なキスは、あまり経験がなかったのだと思うと、口元がゆるんだ。

「そのあと、してもいいと言ってくれて」 

 ダンテは熱に浮かされたようにつぶやいた。

「もう一回……」

 オルフェオがリアクションに困った様子で目を左右に泳がせる。

 ダンテはあわてて口を手でおおった。

「……聞かなかったことに」

「分かっています」

 面倒くさい主人だと思っているのだろうか。表情が疲れて見える。


「急に小遣いをほしがったが」

 ダンテは(ひざ)の上で手を組んだ。

「金額は」

「たいした額ではない。もともと渡そうとしていた程度のものだ」


 オルフェオが不意に横を向く。

 ダンテが渡したミネストローネの皿をどこかに置こうとしたらしいが、ものが置ける場所はすべて薔薇(ばら)の花瓶で埋まっているのでそのまま持っていた。

「それまでは?」

「受けとるのを拒否していたんだが……」

「それを急にほしいと言いだした」

 オルフェオが確認するように言う。

「何を買ったのでしょう」

「べつに……すこし捉え方が変わっただけだろう」

 オルフェオが宙をながめる。

 しばらく何かを考えていた。


「コルラード様と接触のあった人物を、もういちど一から調べ直してみます」


 そう言い、きびすを返す。

「実家の使用人から、外で何らか関わった男までか。手数をかけるが」

「ダンテ様」

「何だ」

「男性とは限りません」

 オルフェオが言う。

「女性に囲われている可能性も」

 ダンテは困惑した。

「ここにきてややこしいことを言うな」

「もとから男性と限定したつもりはありませんが」

 ダンテは頭を抱えた。

「……男のほうに嫉妬(しっと)するだけで手いっぱいだ」

「よくそういう冗談が出ますね」

 冗談ではない。ダンテは頭のなかで反論した。


「女性は……あの子は何となくないような気がする」


「あなたのイメージはともかく男の子ですから。女性とそういう関係になって宿まで提供してもらえるなら、あまり躊躇(ちゅうちょ)なく応じるのでは」

「そういうタイプの女性は拒否すると思う」

 ダンテは言った。

 オルフェオがじっとこちらを見る。

 もちろんただの直感だ。

 いつものごとく冷静なツッコミがあるかもしれないと思った。

 だが、愛人であった母親をあれだけ嫌っているのだ。

 たわむれで少年を囲うような、貞操観念の低い女性は嫌悪するのでは。

「まあ……可能性の高いところから捜索(たんさく)していきますので」


「どれくらいかかる」

「何とも」


 オルフェオが答える。

「これでも見つからなければ、幼少期にあやしてくれた人間までさかのぼるしか」

 ダンテはハッと顔を上げた。

「乳母は」

「はじめにあたりましたが、だいぶまえに故郷のフィエーゾレに帰ったそうです。遠方ですし、馬もなくたいして持ち合わせもないのであれば、そこまでは行かないであろうと」

 ダンテは窓のほうをながめた。

 今日も心地のよい風が窓から入る。

 コルラードがいないのに、天候は順調なのだなとうらめしくなる。

「どうしてもコルラード様が見つからないようであれば、フィエーゾレに出向くのもかまいませんが」


「十五年しか生きていなくても、私の知らない人間関係がずいぶんあるものだな」


 ダンテはため息をついた。

「もしあの子がゾルジ家ではなくこの家で育っていたら、関わった人間をすべて知ることができたかな」

「さすがに全部はむりでしょう」

 オルフェオが答える。

「全部知りたかったな。どんな人間とかかわって、どんな会話をしてきたのか」

 オルフェオが冷静な表情でこちらを見ている。

 ややしてから皿を手に会釈すると、ドアのほうに向かった。

「ゾルジ家に出入りしていた者からもういちど見直してみます」

 「それと」とオルフェオはつけ加えた。


「コルラード様のお部屋を少々調べさせていただいてもよろしいでしょうか」





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