交易都市ファーバンテセウス
ファーバンテセウス攻略は遠征隊本来の任務に含まれる。遠征隊としての任務はルーデンの奪還および、ブラックアウト術式の破壊である。そこまでの道にある町は全て奪還しなければならない。
片付けを済ませてファーバンテセウスまで向かう、しかし探す手間はそこまで掛かりそうも無かった。
町の入口にラ・クインテット・ストラトスが居た。
「ご準備、お済ですか?」
「ああ」
「馬車はそちらへ」
「・・・どうも」
指定された建物は一世紀放置とは思えないくらいしっかりとしている、しかも専用の馬車留置場だ。屋根まで付いている大がかりな物だ。
「・・・で、あんたの主人とやらは何処に居る?」
ラ・クインテット・ストラトスはそれを聞いて地面を指さした。
「・・・ふざけているのか?」
「いえ、地下下水道から出られなくなっておりますわ」
またなんでそんな所に・・・。
一度ルナと顔を合わせる。だが、嘘では無いはず。サーヴァルと魔剣が結託する事などあり得るか?
「・・・分かった、信じよう・・・どういう奴だ?」
「大きな球体生物です。クリット教を信仰していらっしゃる皆様に分かりやすく言えば・・・天使・・・でしょうか?」
・・・うん・・・?
その例えが分からない。
「実際にご覧になられれば分かります、こちらです」
流されるままにラ・クインテット・ストラトスについていく、ファナは馬車の番人で残るいつものパターン。ラ・クインテット・ストラトスについていくと目の前には黒い海が広がる港と思わしき場所に出た。
「これが・・海」
初めて見た・・・シーズ達は無限に広がる海にしばし見とれる。今まで最大の水辺と言えばファーバンラグニスの横を流れるマレバ運河しか無かった。マレバ運河はファーバンラグニス唯一の水源であり、外界と繋がるはずの人工河川、しかし通る船と言えば養殖用の漁船のみ、神聖帝国は軍艦を現在保有していない。持っていても使い道が無く、維持費しか掛からないからだ。そのマレバ運河は最終的にこの海に繋がっており、そしてファーバンテセウスで物資の交易をしていたのだ。ルーカスで調べた歴史が正しければそのはずである。今の所矛盾は一切無い。
「神聖帝国が船を使わなくなったのは80年前の事ですから無理もありませんわね・・・あんまり端の方へ行くと崩れますわよ?わたくしが主要な施設は手入れしてきたとはいえ、これほどの規模の町、一人で維持は出来ませんので大部分は崩落寸前、お気を付けなさい?」
「80年も・・・」
気が遠くなる年月・・・確かに魔剣に寿命は実質無いらしい、その間ずっと孤独だった、それは馬車の魔剣達もそうなのだろう。
「剣になればそれくらいの年数なんてあっという間ではございますけれども・・・こちらでございますわ、流れている水は循環用の川水ですので」
だが違ったようだ。ラ・クインテット・ストラトスに案内されて着いた所は下水道の排水口、比較的綺麗と言えば綺麗だが、鉄製の柵は完全に朽ちて無くなっている。手すりなど鉄が使われていたであろう跡しか残っていない。石作りとはいえもちろん変形している箇所もある。崩落は意外な事にしていないらしいが、崩落寸前ポイントはいくつかあるとの事・・・慎重に進むべきなのだが、案内役はサクサク進んでいく。そして見えてきた・・・羽の生えた大きな球体と大きな目、神聖帝国の主要な宗教、クリット教で所説ある天使クリットの姿・・・そのうちの一つと大体の特徴が一致する物体が目の前にあった。
「・・・どう見ても・・・天使ですわ!本気でコレを相手にするんですの!?クソ聖騎士!!」
キュリア達上級聖剣が怖気ずく、ミナもそうだ。
「・・・でー・・・でもさ?・・・サーヴァルキング級・・・なんでしょ?これ・・・」
「サーヴァルと天使って別物だとおもうの・・・」
一方でサーミャとエリスは半信半疑・・・市民階級なんて所詮その程度の価値観でしか無い・・・なぜならば市民階級の人間は信仰に費やす時間が無いほど忙しいからだ。
「どうせ皆様はクリット教信者でございましょう?ご安心ください、元はファーバンテセウス領主、ロッセンティーニ マルコフ2世 ですので何もためらう必要はございません、エルモンド サルザン様は惑わされてしまい残念な結果となってしまいました・・・わたくしの説明不足でございましたわ・・・熱心なクリット教信者でございました」
ラ・クインテット・ストラトスは心配そうにキュリア達を見る。
「俺はあまり宗教に関心が無い」
「私も」
・・・そう、ルナはどうだか知らないが、少なくとも例にも漏れず、自分自身も市民階級、サーヴァルと割り切ってしまえばやってやれない事は無いはず・・・。
「そういえば、貴方様にエーベルケニウスをお渡ししましたが・・・正直言ってほとんどお役に立たないかと思いますわ?白く光る球体にご注意ください、高難易度聖魔術のウェル・ムンタでございますので・・・浄化魔法ですわ?」
「・・・うっそ・・・サーヴァルって魔法使えるのか?」
「サタンの攻撃、特に大型の物に関しては我々聖剣や魔剣の属性が影響される事が多いのです、わたくしは光属性ですので・・・」
「・・・その、つまりだ、その大量の魔力と聖魔力が無尽蔵に供給されているサーヴァルキングは高難易度浄化魔法も使い放題だと?」
「つまりはそういう事でございます」
「・・・中々厄介なッ!」
「しかも失敗して絶命してもサーヴァルキングとして復活すると・・・文字通りの無限兵器、生前の知識や技量が高ければ高いほど討伐も難しいと言う事ですのね?」
マーキュリーとセベストリアも酷い顔をする、事実、セベストリアの考察通りだ。ラ・クインテット・ストラトスを所有していたと思われるこの主人は何らかの特権階級に居たはずの人間だ、だとするならば教養もそれなりに高いはず、高難易度クラスを知るとなればそれなりだ。
「サタンの魔力元はレーヴェンの広域支配術式、ブラックアウト環境下では無尽蔵に供給されます」
「・・・そこまでが可能な量が常に供給されている訳か・・・」
サーヴァルのあり方・・・どうやらラ・クインテット・ストラトスはだいぶ詳しいらしい。感覚的にブラックアウト環境下だと強くなる事は言われているが、高難易度魔法を連打出来る力が供給される程とは思っていなかった。分かりやすく言えば、皇帝陛下に対して皇帝魔術士達が聖魔力を供給する高難易度術式を連続して放てるイメージ・・・そんな事が出来てしまえばパワーバランスは確かに崩壊する、今のロンドクルツ神聖帝国が皇帝陛下の力をもってしても、消滅の道を辿っている要因でもある。・・・しかし、浄化魔法が使えるなら自己浄化は可能では・・・?
だが、議論する時間はもう無い、ロッセンティーニ・サーヴァルキングに捕捉されてしまった。ラピット・ソレイユを構える、ルナはサーミャからミナを受け取って戦闘体制に入る。そして広い水量調整室に入った、その瞬間、ウェル・ムンタと思わしき魔法が球体の触手のような所から、逃げる隙間すら無い程無数に放出された。これは駄目だ、二人は通路まで戻り、攻撃を凌ぐ。
「・・・こりゃ・・・キッツイなぁ・・・」
「当たらないようになんて無理でしょ・・・?」
・・・そう、懐に滑り込む余地が無い・・・それはつまり逃げるので手一杯、魔剣を投げつけた所で魔剣そのものが浄化されるはず。幸い壁などの物体に効果は無い様子だ。
シーズは腰から片手剣を引き抜く、それでラ・クインテット・ストラトスとキュリアとサーミャが首をかしげる。ちなみに彼女らはここから動いていない。ラ・クインテット・ストラトスを守るよう指示してあるからだ。今更護衛は不要な気もするが・・・。
「クソ聖騎士?その鉄くずが何かの役に経つんですの?」
「・・・磨いてあるとはいえ・・・鏡面反射で跳ね返す気・・・?」
「・・・まぁ・・・そうだな・・・?だが・・・」
「だが?」
「物は浄化されない」
「・・・で?」
キュリアとサーミャの首の角度はさらにキツくなる。だがルナは察したようだ。
「あー・・・はいはい、そういう事ね?」
ルナも腰の剣を引き抜いた。なんだかんだ察しの良い相棒である。
「それは予備で頼む、しくじった時用だ」
「了解」
ルナが剣を再び収めるのを見届けた後、ラピット・ソレイユをサーミャにぶん投げて鉄剣を構える、そして通路から出る、そして大きく一振り、途中で手を放して転げる、すぐさま通路を目指して走る。どうやら当たったらしい、水量調整室が大きく揺れる。
「・・・どうだ?」
「命中・・・したけど逃げろぉ!!」
ルナに手を引かれて来た道を走る。下水道が崩れだした。これはヤバい。
「うっそうっそ!」
「まってまって!何なんですの!?」
サーミャとキュリアが逃げながらギャーギャーわめいている。何とか外へ出たが・・・当然討伐成功・・・な訳が無い。サーヴァルとはまぁ何とも見つけやすい物で、体そのものが淡く発光している。町の中心にヤバいのが浮いていた・・・。
「・・・地下から解き放ってしまいましたが・・・これからどうするのかプランはおありでしょうね!?クソ聖騎士!!」
「・・・ある訳無いだろ?」
「クソ!!クソ!!クソ聖騎士!!」
キュリアはセベストリアを地面に叩きつける・・・実剣化状態ならば痛くないとは思うが・・・。
「まぁ・・・出しちまった物はしょうがねぇ・・・だろ?クソ聖騎士」
「・・・そうだなぁ」
そういいながらラピット・ソレイユを寄こしてくるのでそれをサーミャから受け取る。近づいて見れば、鉄剣は目に突き刺さっているのはよくわかる・・・問題は地面の大穴・・・そもそも地下の時点で攻撃を与えられる高さに居なかったのも事実だが、余計に攻撃を当てる事が出来ない状態になっている。どうしたら攻撃を与えられるか・・・それが大問題だ。
「・・・もう一本、使う?」
「それで落とせる物か?」
「どーだろ?」
ルナは鉄剣を差し出すが、これで地面まで降下してくれる気がしない。
「じゃ、屋根から飛び移れば?」
「屋根からは可能だが、問題は俺はそこまで飛ぶ事が出来ない、さらに一部を取り払ってある軽量型とはいえ、鎧を着てるんだ、これだけで10kgはある」
ま、そうだよな?それより重い、聖騎士団標準仕様の軽量鎧を着こんでいるサーミャが腕を組んでそんな顔をする・・・が、何か手を思いついたようだ。
「じゃ、私が囮になる、極力屋根まで近づけて見る・・・遠くて届かないんなら動かすんさ」
「・・・いけるか?」
「やるしかないでしょ?キュリア!行くよ!」
「私もですの!?」
ほら、一本置いて!とマーキュリーをキュリアの手からかっさらってラ・クインテット・ストラトスに押し付け、強引に引っ張っていく、少しでも重戦士の機動力を上げる寸法だ。アイツもそうだが上級聖剣にもなれば鎧も特注、騎士団標準鎧の構成からさらに見た目重視の装甲スカートが追加されているのでさらに重い、減らせる物は減らさないと逃げ遅れる。これらはセベストリアとマーキュリーも同じ、ミナも同様だったりする・・・彼女は前期の上級聖剣のトップだ、豪勢極まりないのも当たり前。エルも同様だった。
そうと決まれば上がれる屋根を探す・・・と言っても大半が木製の屋根があろう建物は軒並み屋根が朽ちてしまっている、屋根がある建物は商業建造物もしくはお役所などお金のかけられる建物が多い・・・一部はきっと誰かが維持していたと思われる重要施設だろう。大部分は崩れてしまっているが屋根の高さまで上がれる建物を探し待機、目に2本目の鉄剣が刺さっていると言う事は気を逸らすためにルナが投げたのだろう。3人が目の前の通りを走っている。ロッセンティーニ・サーヴァルキングがそれを追って浮遊しながら無尽蔵にブライト・サンやウェル・ムンタを筆頭とした光魔法を3人に向けて解き放っている・・・それにしても羽はお飾りか?羽ばたいている様子が無い・・・真横に来た瞬間にその羽に飛び移ると、ロッセンティーニ・サーヴァルキングが動きを止め、シーズに向かって浄化魔法を放ってきた!慌ててよじ登ってロッセンティーニ・サーヴァルキングの上を走るが、どうやらこの攻撃、本人にも効いている様子、後ろの羽が浄化されて消えてしまっている・・・しかしそこはサーヴァルキング、たぶん再生する。背中に下げているラピット・ソレイユを構えて羽を切り落とす。それでロッセンティーニ・サーヴァルキングは墜落する、そしてシーズを正確に狙える余裕がなくなっているので本体にラピット・ソレイユを突き刺してみる・・・問題は当たりが分からない事。
「・・・ちっ!」
こりゃ駄目だ。
しょうがないので触手を切り落とす事にする。これさえ無ければ光魔法は発生出来ない!
片っ端から触手を切っていき、なんとか死角を作成する。その過程で見つけた・・・ロッセンティーニ マルコフ2世 だった物だ!
「終わりだっ!」
豪快にラピット・ソレイユを突き刺す、それで触手から相当出力の光魔法があても無く解き放たれた!これは・・・ウェル・ムンタだ。
「逃げて!」
「くっそっ!」
自爆する気か?ルナの声を聞いて慌ててラピット・ソレイユを引き抜いて近くの建物まで走る。窓のあった場所から転がりこんでこれを乗り切ろうとする・・・乗り切れないかもしれない。
まばゆい光と共に目も開けられなくなる・・・そして・・・しばらくして目を開けてみれば雲一つ無い青空が広がっていた。
「・・・おい・・・無事か?」
返事は無い・・・だが建物は無傷・・・しかしあの威力・・・もしかしたら死んだか?
空を見れば、少なくとも100キロ近い範囲のブラックアウトを一瞬で浄化したような状況・・・たぶんルーカスもその範囲におさまっている事だろう、それ以前の中途半端な浄化状況の範囲は余波で普通に消し飛んでいる様子・・・東側から来たが、東側のブラックアウトの境界線が見えない。
「・・・散々ですわっ!!」
そうこうしていたらキュリアのむなしい怒鳴り声が反響して聞こえてきた。その方向へ行ってみるとルナ達が居た。たぶん無事なようだ。しばらくすれば後ろからラ・クインテット・ストラトスがマーキュリーを持って歩いてきた。
「ご無事でなによりで」
「・・・生きてる・・・で、良いんだよな?」
「そのはずかと思います」
ラ・クインテット・ストラトスはそういいながらマーキュリーを差し出してくる。ひとまず受け取るが、実剣化解除は出来ない・・・と言うか、しない方が本人の為なのでしない。
ひとまずマーキュリーをキュリアに投げ、ラ・クインテット・ストラトスについていく、行き着いた場所は北側の屋敷、屋根を含む全面石作りで、窓もある。町の中でも海から遠いおかげか、金属の門が残っている。
「・・・ここは?」
「領主のお屋敷ですわ、本日はこちらでお休みになられてください・・・お食事はご用意出来ませんが・・・なにせ聖剣に食事と睡眠は原則不要ですので・・・それと、こちら・・・主人の討伐の報酬・・・とも言えない代物でございますが、これ以上の物はこのお屋敷から持ち出して頂いて構いません」
「・・・指輪」
渡された物はきらびやかな装飾の多い指輪、内側の刻印を見れば、ラ・クインテット・ストラトスと書かれている・・・要するに契約の指輪だ。
「使い方は?」
「わたくしの場合、聖魔術師20人による契約術式が必要ですわ?もっとも、わたくしは聖魔術師に頼らなければ使用もままならない広範囲型対黒魔術聖剣、サタンの攻撃から都市を守る為に制作されましたので、聖魔術師を一人も従えて居ない貴方には無用の代物でございます」
「・・・なんでそんな物がここに」
「そもそもの私はリズリット王国12代国王、ベルムント・リズリットの第3王女、セルアンナ・リズリットと申します。ロンドクルツ神聖帝国の黒魔術兵器に対抗する為、リズリット王国が開発した聖剣のうちの最高傑作と自負しております」
ラ・クインテット・ストラトスは屋敷の扉を開けて、シーズ達を中へ入れる。
「多額の税金を投入し、国内屈指の聖魔術師を200人集め、半数が命を落としも制作されたのが今のわたくしでございます」
「・・・一大国家事業と言う訳か・・・王族を元にしない限り国民の同意を得られなかった計画だったオチか?」
「もちろんその通りでございます。国家予算の半分を費やして、なお成功する確率も3%未満・・・そうして聖剣となったわたくしは150年ほどリズリット王国を神聖帝国のサタンから守りました」
「だがここはリズリット王国領じゃなかったはずだ」
「13代国王エルジア・リズリットの老衰により滅亡、戦利品として以降、神聖帝国のロッセンティーニ家に2代勤めました。直近の主人はファーバンテセウスのクリット教司祭でもありましたので」
「だから天使の姿に・・・」
「主人がファーバンテセウスを守れなかったのは聖魔術師の技量不足でございました。わたくしの性能を最低限発揮するのにも一国の王宮に仕えるほどの聖魔術師が6人は必要・・・一領主の財力ではそのような人材の確保は到底不可能でございます・・・残念でなりません」
「・・・そりゃ、お気の毒に」
大きな応接室に案内されると、ラ・クインテット・ストラトスは部屋を出て行ってしまった。ひとまずこれからどうするか・・・だが、もちろんルーカスへ一度戻る、これしかない。
「聞きたい事がございますの」
「・・・なんでしょう?」
玄関の壁にもたれかかったキュリアは外へ出ようとするラ・クインテット・ストラトスを呼び止める。
「貴方達、魔剣は聖魔力を常に消費してますの?」
「消費量は個体差ありますが、貴方達次世代型と原則同じ、剣化時にしか消費する事の他は無いはずでございますが・・・なにか?」
「貴方、運用には聖魔術士が別途必要とおっしゃっておりましたわよね?」
「そうでございますけれども、わたくしの場合は都市に対黒魔術隔壁を形成するのに外部からの聖魔力と魔力が必要なだけであって、普段は貴方と大差無い使用量かと思われますが・・・?」
・・・魔剣も・・・ハズレですわ。
キュリアは大きく溜息をつく。
「あくまでも、リズリット王国製の聖剣ではの話、神聖帝国ならばそのような・・・その・・・魔剣でしょうか?そのような物を制作していた可能性もございますが、神聖帝国生まれの聖剣が知らないのであれば、きっと存在しないのかと思われますわ?神聖帝国製の魔剣の方にお聞きした方が早いかと・・・お連れ様をお呼びしに行きますのでわたくしはこれにて」
ラ・クインテット・ストラトスはスカートを持ち上げてお辞儀をした後、外へと出て行った。ラ・クインテット・ストラトスがファナを連れて戻ってきたのはそれから30分後である。
「・・・海って青いんだな」
夕日に照らされた海、穏やかな潮風、隣のルナの金髪がまぶしくその風にあおられている。先ほどまでの激闘が嘘かのような静けさ。それが心地よい。
「これからどうするの?」
ルナは膝を抱えながらゆっくり首をかしげる。たまに見せる美人顔、コロコロ印象が変わるのもルナの特徴の一つだが、これは雰囲気のせいとしか言えないだろう。実際二人っきりだ。
「ルーカスに戻る・・・これしか無いだろ?どうせ聖魔術士長共々移動だろうさ」
「聖騎士団詰所とか、主要なインフラはそのまま使えそうだし、そうなるよ」
そうだよね。ルナはまた夕日に目線を向ける。シーズもつられて夕日に目線を合わせた。
「ルーカスより状態が良いのは皮肉な所だが・・・管理者が居たんだ、そりゃ放棄された都市より断然良い」
・・・実際そうだ、階段が抜け落ちてない、床が抜けない、ドアが取れない、雨漏りもしなさそうな強固な建物がいくつも存在している。座っても座面が抜けない椅子も普通にあるだろう。オマケに旧式だが上下水道設備もある。
「明日戻る?」
「ああ、早くしないとまたブラックアウトに飲まれるぞ?」
「だーよねぇ」
シーズとルナは海を見ながら深く溜息、船は港の底に沈没しているのがいくつかある。今まで見た事が無いサイズ、漁船の20倍の大きさだ、これが一世紀以上前は何百隻も居たはずだが、想像が付かない。
屋敷に戻れば夕飯が用意されていた。ラ・クインテット・ストラトスが百年以上ぶりの食事に目を輝かせている。
「魔剣って食事が要らないんじゃないのか?」
「食べても食べなくてもどちらでも良いだけでございます、つまり食べても良いのです」
早く食べたくてしょうがないラ・クインテット・ストラトスはシーズ達を早く食卓に着かせるよう催促をする。よほど久しぶりの行動のようだ、一番先に食べ終わり、お替わりすら要求する始末、食材はどのみち補給に戻るので消費は多めでも良いが流石に食べすぎでは?と思う所はある。
町中に生活水用の小さな水路があり、水は使い放題、川水を引いてあるらしく、飲料用としては煮沸は大前提だが、上下水の文明はファーバンラグニスと同程度、一世紀も経て大きく改良された物は上水のみのようだ、現在はこの水路、金属製のパイプに置き換わり、水汲み場は廃止され各建物に引き込まれているのだが、文明が全く進んでいない事がうかがえる。
「・・・しれっと乗り込んできては居るが・・・ファーバンラグニスに行くには隣町のルーカスから乗り換えだぞ?ちなみに乗り換えの馬車も無いと思う」
シーズは馬車を走らせ始める。ラ・クインテット・ストラトスが運転台の直ぐ後ろに居るのだ。
「そもそも契約出来る環境は無いとはいえ、貴方様が私の契約リングを所持している以上、付き添うのが普通では無くて?」
「・・・そういう事だったか」
「必要に迫られれば契約しても構いませんが、それには貴方様が最高峰の聖魔術師を最低6人従える器にならなければなりませんので」
「まぁ、無理だな」
「それと、こちら・・・貯められなければそもそも使えませんが」
「・・・なんだこれは?」
ラ・クインテット・ストラトスから埃が凄く、青錆もなかなかのランタンのような物を受け取る。光源の所には丸い水晶がはめ込まれており、イマイチ使い道が分からない・・・インテリアのような雑貨、そういえばファーバンラグニスの家にも同じ物があった気がする。
「聖魔力を一時的に保存する容器ですわ?・・・本当はただの照明器具ですけれども、昨日、貴方の聖剣が貴方の聖魔力の行方を調べまわっているご様子でしたので」
それでさらに後ろのキュリアがビクッとして目を逸らしだす・・・まあ、お前か、知ってた。
「これ一個だけではわたくしは使えませんのでご承知おきを」
ラ・クインテット・ストラトスはそういいながら後ろを向いて壁にもたれかかった。
「受け取ったは良いが・・・」
ルナがなぜか目を逸らす・・・このランタン、そんなにヤバい物なのか?
聖魔力保存容器を普通のランタンの横に吊るしてファーバンテセウスを出る。空は雲一つない快晴、今まで暗闇に近い旅路だったので逆にまぶしいくらい、しかしサーヴァルが一匹も居ないので、少々無理をすればルーカスにたどり着ける所まで来れた。
「・・・どうする?着くのは深夜だぞ?」
「もうちょっとじゃん」
「わかったわかった」
もう横でうたた寝してるルナがそう言ってまた寝る・・・このやろう。
とはいえ、安全な町が目の前なのでここは無理をしてでもたどり着くべきだ、危険は無いかもしれないがゼロとも言い切れない外で野営はあまりすべきでは無い。
夜勤の守衛の聖騎士達に出迎えられてひっそりと町へ入る。武器屋はそのままらしいので武器屋の前に馬車を止め、ルナをベッドに運ぶ事から始める・・・ラ・クインテット・ストラトス以外全員寝てるのだ。
「武器屋を経営されているのですね?」
「いや・・・俺はここで寝泊りしてるだけだ」
「でもここまで手入れの行き届いた鉄剣・・・」
「色々あったんだ・・・上の部屋を好きに使ってくれ・・・と言いたいが、もう屋根裏くらいしか残って無い」
屋根裏・・・と言う単語を聞いて一世紀以上前は王女様だった人物が目を輝かせる・・・ファーバンテセウスにそういう物件は無かったのだろうか?一応主要な都市だったはずだ、半数の物件にあっていいはずなのだが・・・?
「あの町に無かったんか?」
・・・あっ・・・。ラ・クインテット・ストラトスはそんな顔をする。主人の喪失で庶民の生活への憧れとやらどころではなかったらしい。
全員をベッドやリビングのソファに運び終わった所で工房の椅子に座る。当然目の前にはラ・クインテット・ストラトスが居る・・・忘れてた、コイツは睡眠その物も必要ないのだ。
砂鉄まみれの作業台を掃除してそこでひとまず寝る、ラ・クインテット・ストラトスも真似して寝ようが、ずっと起きていようが知った事では無い・・・眠い、疲れた。
翌朝、キュリアに叩き起こされる・・・コイツは元気極まりない・・・そういう奴なんだが、聖魔術士長に会わなきゃいけないのだ・・・その前に飯だ、この角紫は朝食を所望しているのだ。
髪の毛に付いた鉄粉を払いながら店の方へ行く、馬車の馬は既に済ませている模様、ラ・クインテット・ストラトス辺りがその辺に干し草でもばらまいたであろう跡がある。馬は馬車から外されて隣の建物の柱に繋がっており、その馬の手入れをラ・クインテット・ストラトスがしていた。
店には他の聖剣が集まっている。シーズが揃った所で出るようだ。ただ、ミーナの店に着いてみれば開店前・・・そりゃそうだ、昨日の昼から何も食べていないからだ。食材の残りは馬車にはあるのだが、あの武器屋、実は調理場の掃除をしていない。なので開店前の列に並ぶ・・・しかも先頭だ。
シーズ達の後ろには夜勤明けの聖騎士達が並び始める。ミーナの店も実は24時間営業に近い物があり、常に厨房には火が入りっぱなしなようだ。酒場とは言っている物の、営業時間は20時までと早い、その代わりに夜勤の配給食を調理しているのだ。夜勤シフトの聖剣達が日勤シフトの聖剣達と入れ替わるタイミングで開店する。腹を空かせた夜勤組の聖騎士に押されるように店内へ、朝らしいメニューと夜勤向けのいわゆるディナーが用意されている。シーズ達はディナーの方を提供された。
「朝からこのボリュームは・・・」
ミナがシーズの前で困り果てている。
「そりゃ夜勤組は開店前に並ぶからな?日勤はもう少し経ってから朝食を取りに来る」
「・・・そうなんだ」
ミナは肉料理にありつく。
「朝食も早いとディナー扱いになるんだよねー」
「まぁな?」
シーズの隣ではもうどっちだっていける口のルナがガッツリボリュームの夜勤向けメニューを掻き込んでいく。ミーナの店も最初の頃はシーズであろうと夜勤向けメニューが提供された事もある。今となっては・・・そのような事もあるようだ。自分の目の前の物も夜勤向け料理、夜食を口にしていないのでどうだっていいのだが。
「てっきり私とシーズは朝食メニューになるかと思ってた」
「しばらく居なかったんだ、一時期ミナに作らせてた時もある。双方のシフトで何処に行ったか分からなくなってるんだろ?」
「あーなるほどね」
そういっているうちにルナはもう平らげた・・・だがキュリアとサーミャも同じ、カロリー消費が激しい戦闘員だからなおさらだろうとは思うが、その目の前でお嬢様らしさはどうしたと言わんばかりの顔をセベストリアとマーキュリーはしている。ひとまず食べ終われば、会いに行かずとも、聖魔術士長がシーズの隣に座ってくる。
「深夜に帰ってきたって?昨日のありゃなんだ?」
「ロッセンティーニ・サーヴァルキングを討伐した時の爆発・・・かな?浄化されるかと思った」
「聖魔術士5億くらいかき集めた威力のブライド・サンだぞ!?サーヴァルキングがそんな事出来るはずが無い・・・んだが実際起きた、全く俺らの仕事をほぼ無意味にしやがって・・・」
「そうは言ったって・・・今回のは光魔法系だったんだ・・・討伐できたのが不思議でならないレベルだ!無茶言うな!」
「ま、仕事が無くなるのは良いんだけどよ・・・つーことはファーバンテセウスに引っ越しか・・・だるっ」
「ひとまずルーカスの聖石をファーバンテセウスまで運んでもらう必要がある、出来ればその先まで」
「ああ、もう搬送の作業は昨日終わらせてある」
「早いな、早すぎないか?」
「俺らを何だと思ってる?あの魔法を見破れない奴なんて聖魔術士失格だ・・・と、言いたい所だが、俺が質問に答えた途端、聖騎士団側がさっさと荷物まとめてファーバンテセウスに行けと言い出したんだ」
「聖騎士団の守衛隊がここまで来てたのか?」
「お前がエルちゃん失って意気消沈している間に来たぜ?余計な情報だったから俺はそれをお前に言わずに送り出しただけだ、めんどくせー奴に怒鳴られてから旅立ちたくは無いだろ?」
「・・・それは・・・そうだが」
「ちなみに言えば、守衛隊の編成が追いついて居ない状況だ、鼻を高くしていいぞ?それだけお前らが優秀なんだよ」
「それはどうなんだか」
「だが、守衛隊の編成が間に合っていないと言う事は補充の人材も居ないと言う事だ、無理はするなよ?」
「・・・分かってる」
「とはいえ、ファーバンテセウスは港町だ、補給は海からも可能になる訳だな」
「その船はあるのか?」
「無いだろうな、最大サイズの漁船をかき集めるだろう、ファーバンテセウスを抑えたとなると半世紀ぶりに大型船を建造する事にもなりそうだな?まぁそれはその時しだいだ、それにルーデンに入植が始まった、東の城門の外で難民キャンプを築いていた奴らがどんどんお前の抑えた町に戻って行ったりしている、人がかなり動いて国が不安定になりがちになりそうだが、半年もすれば長くなる補給線を維持出来るインフラが整備出来るだろう」
「ファーバンラグニスはもう大混乱か」
「知った事か、元々殺す気で編成した政治パフォーマンスの遠征隊なんだ、思わぬ結果で仕返ししてやろうぜ?」
聖魔術士長はそういいながらパンを平らげ、食後の紅茶をすする。シーズ達が夜勤組メニューな事には特に触れない様子だ。紅茶を飲み干せば直ぐに席を立つ。
「明日には出発だ、補給物資は今ある物全て持っていく」
「よくそれを良しとしたな?」
「明日補給物資が来るんだ、別に良いだろ?出ていく代わりに提示した条件だ、飲まなければ動かないと言ってやったさ」
「あんたも強くなったな」
「半年近くも聖騎士団にコケにされてやってるんだ、いい加減そろそろ反抗しても良いだろ?そういう訳だから準備しろ、馬車はいくらでもある、家具とか持って行っても良いぞ?」
「もっとも、使える物があれば・・・の話だけれどな?」
「ねぇだろ・・・この町には」
聖魔術士長は鼻で笑って酒場を後にする。ミーナ達も引っ越しの準備をしている様子だ。見切り発車で物事が進んでいる様子、後に武器屋には馬車が追加で3台も用意されていた、過剰極まりないので武器屋の武器と一部の工具を半分のっけて、ベッドなど、使える家具も乗っける、それでもまだ余裕、城を維持していた聖剣達には別途馬車が用意されていた。どうやら守衛隊が持ってきた乗り捨て馬車らしく、守衛隊の半数に満たない遠征隊には2人1台使える計算で余っているらしい。翌朝は40台近い馬車が列をなしていた・・・規模だけなら遠征隊初期の頃の数とほぼ同じ、そしてこれ以外にも補給用に充てられている既存の馬車が10台ある、それは補給でファーバンラグニス間を移動中らしいがそれは当然ここに加わっていない。
「俺らも移動かよ」
マルコーがめんどくさそうにシーズ達の隣に馬車を付ける。
「ちゃっかりお前らも遠征隊だからな?」
「そんな話一言も聞いてないぞ?」
「実際そんなもんだ」
「俺は絶対信じない!・・・痛っ!」
マルコーの頭をフーリエが叩いて黙らせた。ひとまず馬車を発進させる。ファーバンテセウスには何も無くたどりついた。まずは初めての海に全員が興奮するのは言うまでもない・・・あの聖魔術士長ですら初めて、この中に海を実際に見た事がある人間など一人も居なかったのだ。
「本当に一世紀以上前の町なのか・・・?」
聖魔術士長は聖魔術士ギルドの管理者の椅子に恐る恐る座る、それをシーズとルナが見守る、今度は抜けなかった。
「ようやくあんたにふさわしい椅子が現れたようだな?」
「よせや・・・どうせ直ぐ立つ時が来るだろうよ?この調子じゃ・・・」
座面が抜けない事で安心した聖魔術士長はゆっくり背もたれに背中を預ける・・・しかししっかりしていたのは座面だけだった。メキッと音を立てて聖魔術士長はひっくり返った。
ルナはそれを見て床が抜けないか踏んで確かめる。石作りだ、抜ける訳ないだろ?
「・・・しょぼくていいなら下にちゃんとしたのがあるぞ?」
「・・・後で持ってくる」
聖魔術士長は腰の痛みに悶えながら後ろの本棚に手をかけた、本棚が崩れて聖魔術士長は本の下敷きになったのは言うまでもない。
片付けを終えればミーナの元へ、流石元貿易都市なだけはある、宿屋も石作りと豪勢な建物が残っている。ラ・クインテット・ストラトスによれば、貿易商や他国の外交官などの要人が利用する高級宿屋だったらしい。初めて入るが柱の彫刻など、非常に豪勢な作りをしておりとても立派、パーティールームもある、海沿いに近いのに扉や窓は全て完備、理由は遠征隊の宿舎として維持していた背景がある。ラ・クインテット・ストラトスが定期的に保全をしていたようで、直ぐにでも使用が可能な状態、おかげで直ぐに昼飯にありつけた。
その後は無人の商店街を歩く、やはり商業施設の人気は無い、建物は屋根まで完備しているが、店舗が使い勝手を悪くしており新しい住人に選ばれない。ラ・クインテット・ストラトスも先ほどの宿屋を中心に保全をしていたようで、宿場街への入居がほとんど、この辺は手付かず、窓ガラスも残っていないので当然とも言える。
朽ちて何屋かすら分からない建物の中に入る、かろうじてある残骸から服飾屋だろう事は分かる。錆びたミシン台があった、表面こそ錆びているが、野ざらしでは無いのでそこまで程度は悪くは無い。倉庫と思わしき空間は閉鎖的、窓が無い、在庫品には怪しい瓶がいくつもある、それを一本手に取ったが、一体何かは不明、一度外に持って行ってみるも訳の分からない黄色い液体が入っているだけだ、ラベルが読めない。
・・・戻すか。
再び倉庫に戻ってその瓶を箱に戻した、しかし箱その物が崩れさり、怪しい液体が倉庫中に垂れ流しになってしまう、そして急にまぶしい白い光が放たれた!爆薬だったか!?
とっさに受け身を取るも既に遅い、痛みすら感じない程の爆発だったのだろう・・・目を開けてみれば暗闇、無意識で外を目指すが、何か硬い物にぶつかる、木だ。
なんとか出られない物かと木の壁を触る、取っ手があった、押して見ても開かないが、引いたら開く、外へ出れば知らない町の・・・たぶん魔法具屋、店主は居ない。
「・・・何処だ?ここは・・・?」
しかし見覚えある物がある、ミシン台だ、若干錆びは出ている使い込まれた物に変わっている。
ひとまず店の外へ出てみる、店のドアを開けて外を見ると両脇10件は今にも営業しているかのような店舗、11件目は半分廃墟の奇妙な店舗、それ以降は廃墟があった。
持っていた先ほどの瓶、ラベルを読めば・・・。
割れたコップもこれ一滴!
高速魔法修復材
使用方法:対象物に一滴かけ、魔力を当てます。対象物の時を戻して壊れる前の状態に戻します。
効果時間は瓶から出して5分程度。
注意方法:巻き戻し一分につき魔力5j程使用します。使用時は瓶を魔力が当たらない離れた所に置いてください。当てすぎると対象物が原材料に戻ってしまう場合がありますのでご注意ください。生き物や植物など、魔力を持つ物には効果はありません。
マキシム魔法具店 リズリット王国メーシェルバ、ディメンバー横丁4番地1番
・・・つまりだ、1適でコップの時間を巻き戻し出来る、規模で言えばこれ一本で倒壊した家も修復が可能と言う訳なのだ・・・だが魔力は一体何処から?店内にあるろうそくに火を付け先ほどの倉庫へ行けば答えがあった。
「・・・原因はこれか」
ラ・クインテット・ストラトスに貰った物と同じランタンのような物を持ち上げる、おおよそ100個ほどある。元々は魔法ランタンと言うようだ、魔力を燃料として炎系魔法を燃焼させると言う物、つまり通常のランタンで言えば、ろうそくの所が水晶に当たる、最大で魔力5000jを貯める事が出来る、聖魔力を注ぎ込むとランタンとしては機能しないようだ。説明書にそう書かれている。だがそもそも一世紀以上放置ならば魔力も自然放出しきって空になっていたはずだ、それが一杯になるまで魔力を全部に注がない限り・・・いや、そういえば注いだ奴が居る。ロッセンティーニ・サーヴァルキングだ。
もう一度店内に戻る。そもそも魔法具をこんなに見た事が無い、製造がほぼリズリット王国なのでロンドクルツ神聖帝国では製造出来ない物だったのだろう。ロンドクルツ神聖帝国で製造出来ないなにかしらの理由がありこれらの魔法具は消えて行ってしまったようだ。
しかもこの通り、よく見れば魔法具店が他にも2件ある、他の物件も全て放棄されて数年後程度まで復元出来ている。
魔法具店の2階は悪趣味な家具が多いので隣の服飾店の二階のリビングに上がる。持ってきた家具など要らないくらいしっかりした家具しかない。座り心地の良いソファーに座れば、長旅の疲れを引き出されてしまった・・・なんて良いソファーなんだ・・・。
ファーバンテセウスから先にはリズリット王国がある。そこから輸入された魔道具がついに活躍!
果たして今後の攻略の鍵となるのか?
最後までお付き合い願えると幸いです。






