-序章-
全ての始まりにして苦難の始まり・・・と言うか発覚。
紙媒体のライトノベルを意識していたので、なろう系ではかなりの長文スタートかもしれません。申し訳ありません。
ついにこの時が来たのだ。
シーズ チェラムとルナ クレイムスは皇帝より聖剣エル、ミナをそれぞれ受け取る。最高の魔法聖剣技師、ブロウド エグバンゼルが手がけた聖剣だ。それはもうサーヴァルなど一撃で倒せると約束されている物でもある。
二人は一度実剣化を解き、事前に学んだ契約を形通りに行う。口づけを交わすのだ、そして再び実剣化させるのだが・・・・。
想像と違う。
手に持っていたのはダガー。確かにデザインはとても美しい・・・しかし規模が違う。
聖剣授与式に居合わせた全ての人が異例の事態にどよめく。大半の聖騎士はその様子を鼻で笑っている一方、聖剣技師達は前代未聞の出来事に混乱している、もちろん自分もだ。
そして聖剣技師達の疑惑の矛先は自然とエグバンゼル先生へ向く、最高峰の聖剣技師の作品ともあればあってはならない状況、チャンスと見る聖剣技師も居れば、何かの間違いだとも様々。当然何かの間違いだと自分も思っている。しかし、ルナに至ってはミナを実剣化させられなかった、姉妹とはいえ、2本も実剣化が出来ないと言うのはあり得ないのだ。
ルナはいつも身に着けている腰のランタンの飾り物に一度目を落とした後、シーズの目線に気が付いて舌をペロっとだして首をかしげる。そんな事したってかわいいとでも言うと思ったか?そんな余裕が無いんだ。
「見せてごらんなさい」
冷や汗を垂らしながらエグバンゼル先生が走ってきた。そしてエルから診断を始める。
自分もエグバンゼル先生を知らない訳じゃない。美しく、そして性能の高い聖剣を制作する名聖剣技師だ。聖騎士や聖剣の憧れと言っていいほどの優れた魔術を持つ、そして半年前の披露会から調整期間で何度も顔合わせしている。その時の優しい職人の顔とは大きく違う、今まで見た事が無い顔をしているのだ。
「契約儀式だけでこんなはずは・・・」
一度実剣化を解かれたエルは目を大きく見開いている。
「・・・お姉ちゃん」
エルの希望を失った顔、ミナは自分の心配より姉を真っ先に心配する。エグバンゼル先生も必死、自分のキャリアの為では無い、自慢の作品の為に必死になっている、正常性を確かめる為なら手段は選ばない、エルの手首を掴んで強引に実剣化させた・・・エルはエグバンゼル先生の手で、見覚えのある両手剣の形をする。
「ああ、良かった」
エグバンゼル先生はまず一息、そもそも聖剣とは一般的な両手剣の形をする。確かに契約者の要望に応じて別の武器にする事も可能・・・だがそれには偉く厳しい修練が必要となる。しかしそんな修練をした記憶すら無いのに、エルは小さなダガーだ、そんな事あるのだろうか?ミナの実剣化出来ないその物は老化などにより聖魔力が枯渇したときによく起こる現象、だが聖魔力は個人差はあれど、誰もが持っている魔力であり、実剣化における消費量も些細な範囲に過ぎない。
「・・・なんじゃ」
ミナもエグバンゼル先生の手では実剣化出来た。先生はひとまずほっとする。
「つまり・・・私達に問題があると?」
「そのようじゃな・・・しかし、おぬしらの状態は病院に行って見ないと分からぬ・・・失礼するぞ」
エグバンゼル先生は実剣化状態のまま、エルとミナをシーズとルナに渡して、逃げるように聖剣技師控えの列に走っていった。
その場は騒然としたが、式典は進む。聖剣は一度契約すると契約解除時に聖剣側が死んでしまう確率が非常に大きい、別の聖剣と契約しようにも重複契約すると武器形状が小柄な物になるなど問題多々。与えてしまった物は仕方が無いと言う事で二人は皇帝城エルマ・カセドルを追い出されてしまった。その後は聖騎士団入団の実技テストがあるが、実施されなかった。
次回は式典後のその後となります。彼らも剣の実力はあるんですが・・・。
最後まで読んでいただけると幸いです。