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タピオカ万歳!

作者: 護道綾女

第1話


 タピオカ漁師のレオナルド・バッチさんの朝は早い。


 まだ夜も明けぬうちに船を出し、沖の漁場へと向かう。狙うのは丸々と太ったタピオカだ。その卵はアメリカやヨーロッパなどのホテルなどを相手にした高級品なので口にすることなく売りに出される。しかし、身もうまいのだとレオナルドさんは言う。フライにシチュー、昔からの鉄板メニューだが、最近はソテーしてテリヤキソースを絡めて仕上げるというレシピも出て来た。あの甘く香りがたまらないと彼は言う。


 以前は船が沈みそうになるほどタピオカが獲れ、港は子供の背丈ほどあるタピオカであふれたという。しかし今はうまくいって二、三匹である。これでいい、戻ってくれたのだから、と彼は嬉しそうに笑顔を浮かべた。


 タピオカドリンクがブームとなった時、レオナルドさん達漁師はタピオカを獲りまくったまくった。タピオカの卵は売れに売れた。たっぷりと儲けた彼も大きな家を建てることができた。だが、それも長くは続かなかった乱獲によりタピオカが姿を消し漁が成り立たなくなったのだ。賑わっていた港は元の小さな漁港に戻った。それだけならいいのだが、タピオカ漁のために無理をした者や、身の丈に合わぬ買い物をし破産した者も多くいた。そのため借金をかかえ町を出た者も多く、中には犯罪に走った者や自ら命を絶った者までいる。レオナルドさんも新しくした船の借金に苦しみ、一緒に住んでいた息子家族は生活苦のため町を出て行った。


「あの頃が一番苦しかったね。だがね、俺達がやっちまったんだ。しかたないよ」レオナルドさんは自嘲気味に笑った。


 意外なことに、転機となったのは代用タピオカが発明されてからのことである。原料はキャッサバの根茎から製造されたデンプンだ。本来は菓子の材料や料理のとろみ付けに使用していた。それをを容器に入れ回転させ球状に加工し乾燥させた。それらは「タピオカパール」と呼ばれた。キャッサバから作られる代用タピオカ「タピオカパール」は安価なこと本来の黒の他、白や赤や黄色のカラフルな色に染められることから、あっという間に世界に広まった。


 タピオカが姿を消し、代用タピオカが本物にとってかわり主流となり、誰もタピオカを獲ろうとしなくなって数年、漁を続けていたレオナルドさん達の網にまたタピオカがかかり始めた。喜んだ彼らだったがもう二度と過去にあった過ちを繰り返すまいと漁法と漁獲量をなどを取り決めタピオカ漁を正式に再開した。


 漁期を決め、網ではなく籠を使い十分に育った魚だけを獲る。少なく獲って高額で売る戦略だそうだ。高額であってもアメリカ、中国、ヨーロッパなどからは十分引き合いはあり、魚もタピオカだけではないので暮らしていける。港は立ち直ることはできる。借金の返済はまだ時間がかかるもののレオナルドさんはそう確信している。


 朝日を浴びて波間に浮かぶブイが見えたきた。わたしもそろそろ立ち上がりレオナルドさんの手伝いに向かうとしよう。

嘘ですからね。真に受けないようにしてください。

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