最強師匠にしごかれる元勇者
この作品は、水都おこめさんに制作していただきました。
とある、人里離れた山奥。 陽光が降り注ぎ、草木と花々を照らしている。 小川のせせらぎと、鳥の声がそよ風に乗って聞こえてくる。 ここから遠い、里の様子も、そう変わりはない。 世界は、平和を謳歌している...。
しかし、そんな⻑閑な風景の中に、真逆の緊迫感を持って対峙する2人がいた。
一人は、剣を構えた⻘年。
いや、顔からして...少年と言ってもいい年齢に見える。 しかし、その顔つきは、凡庸なものではない。精悍そのものだ。 捲った上着の袖口から覗く腕に残る数多の傷痕が、その潜り抜けてきた修羅場を裏付ける かのよう。
もう一人は、威風堂々たる雰囲気の、美剣士。 身の丈を超えるほどの異様な大きさの剣を、構えるでもなく、肩に担いでいる。 剣士は、女性だった。もっと言うなら、美女だった。 サラサラのブルーのショートヘアを春風に靡かせている。 前髪で、片方の目が隠れている。 大剣を、軽々と肩に担ぎながら...呑気にひとあくびをした。
これから生死のやり取りをするのだ...という少年の表情。
今にも、その場に寝そべって昼寝でもしてしまいそうな、女剣士。 明かな力量差が、あるようだ。
「ふっ......はっ!」
あくびの終わり際を狙って、少年が仕掛けた。
白刃が煌めく。 勢いよく横なぎに振りかぶった剣が、泰然とした女剣士の美しい首もとを狙う。 数多の死線を潜り抜けた少年の太刀筋は、未だ子どもの色を残した顔つきからは想像もつ かないほど、鋭い。
が。
「...甘い」
キィン!
「うわっ!」
女剣士が片手で振るった剣に難なく弾かれて、少年は思わずたたらを踏んだ。
「休むな」
キィン!キィンキィンキィン!
「おっ!わっ!ちょっ!」
細身の女剣士が、己よりも巨大な鉄塊を、まるで小枝かなにかのように片手でビュンビュ
ンと振り回し始めた。
どこか冗談のような光景だ。
鉄骨のような大剣が、大出力で回る扇風機のように、矢継ぎ早に迫ってくる。
...俺、今日こそは死ぬんじゃなかろうか。
「...っ...!...っりゃああああああ!」
鉄刃の嵐の中、一瞬の間隙を衝いて、少年が再度踏み込んだ。
「お...なかなか...」
胴体のド真ん中を狙った突き。 踏み込みの鋭さも、狙う場所にも、微塵も容赦はない。
『殺す気で来なければ、殺す』
と、目の前のスパルタ師匠から言われているためだ。
しかし。
「...が、やはり甘い」
どすっ
「うごっ!」
少年の決死の突撃を女剣士はカラダを滑らせるようにひらりと躱し、後頭部を拳でしたた かに打ち据えた。
少年の太刀筋は、完全に読まれていた。
「...う...ぐ......」
ドサッ... 叩かれた衝撃で意識がそのまま頭から飛び出したように...少年は草むらに倒れ込んだ。
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