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《谷底の超理性的真理》

「欲求を持たなければ苦しむこともないな……。」

 私、谷優れ(すぐれ)は悟っている。高校2年生にして人生の真理を悟っている。


 始まりは些細なことだった。友達を作ろうと勇気を出して話しかけたら話が合わず、会話が止まった。強烈な羞恥心と焦りで身体中から脂汗が吹き出した。そんな私を周りはあざけ笑い、どうしていいか分からなくなりその場から逃げ出した。

 この体験が私に真理を悟らせた。世の中はつらいこと、悲しいことで溢れている。じゃあどうすればつらみや悲しみを回避できるか?その答えこそ『欲求を持たないこと』なんだ。人間が苦痛を感じるメカニズムは単純明快で、自分の欲求が満たされなかったからだ。友達を作りたいと思うから友達が作れなくて苦しむ、自分を見てほしいと思うから無視されてつらい。生きたいと思うから死の恐怖に怯える。じゃあそれらを回避したいなら欲求を持たなければいい。

 もちろん実際に欲求を捨てるのは難しい。でも不可能ではないはず。私は欲求を捨て去ることが大人になるまでのやるべき事だと信じている。大人になって社会人として働く時に苦しまないように、それまでに全ての欲求にバイバイするんだ。


 今日の昼食に関しても私の真理は揺るがない。高校生になってから、昼食はずっと最寄りのコンビ二で最短経路で買える食べ物を選んで買う。食べるものを選ばないから好みに合わなくて悲しむこともないし、もし最短経路で買ったものが好みに合わないとしてもそもそも味に期待してなければノーダメージ。どこからでも苦痛から回避できる無敵の真理なんだ!


 昼食を終えたので近くの壁にもたれかかってボーッとする。頭から雑念を全て捨てる。これをこのまま午後の授業が始まるまで続ける。意味もなく何かを考えるのは考えたいからだ。だから必要がない時は考えない。

 近くの通行人がいつものように私を見てクスクス笑う。何も考えない事と違ってこういうのはまだ気にしちゃう。笑われて苦しいのも笑われたくない、周りから変に思われたくないって欲求があるからだ。早く欲求を捨てなきゃ…。

独りで考え込むとこうなる

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