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第三話

「お願い。一生のお願い」

 情けない声をあげ、臣下に手を合わせ頭を下げる姿からは威厳は微塵も感じられずウィルフレッドはほとほと呆れてため息を吐いた。

「あなたの一生のお願いはすでに聞いているはずですが」

「それは僕のお願いでしょ。これはララについてなんだ」

「ララ様の?」

「ああ」

「わかりました。話だけは聞きましょう」

「ウィルフレッド、君、恋人はいる?」

 なにごとかと思えば。

 踵を返しウィルフレッドは返答を突っぱねた。

「待って待って待って、待ってってばウィルフレッド。これはセクハラじゃなくて、娘に虫がつかないように旅に同行して欲しいんだ」

 心情をはかられないようゆっくりと足を止め、振り返る。

「……私がですか?」

「君ならば信頼できるからな」

 聖女には旅をしてその地を浄化する役目がある。

 その先々で危険な目に遭うこともあるだろう。

 その同行者として選ばれたわけだが、なぜ私がその役目を担う必要があるのか。

「そうだろう? ウィルフレッド」

 わざわざ釘など刺す必要もないでしょうに。

 私ならば彼女とどうこうなることもないでしょう。というところか。

「もちろんにございます」

 鏡の向こうには同じように世界が存在する。

 瘴気が湧き出て癒しの力で浄化すると言われている。

 だから行き交いは禁止されていた。

 聖女を除いては。

 聖女は清らかな女性とされていた。

 その身に清らかな気を持ち浄化する力があるという。

 代々受け継がれる称号。

 ララ・グレイシー。

 均衡を保つために定期的に聖女が鏡を渡り浄化を繰り返すことでその身に不浄を溜めるため聖女には代替わりが必要となっていた。

 危険な場所へ送り出すことに一部で懐疑的な声も上がったが国民の声に王女様が寄り添い出自は関係ないご意思を表明されたことで王室の人気はかつてないほどに跳ね上がっていた。

 広場には溢れんばかりの観衆の声と賛辞が彩り豊かな花吹雪の中でこだまし、ララ様が婚約者アルバート様とともに手を挙げ歓声に答えていた。

 ウィルフレッドはこれまでの巡り合わせに感謝していた。

 生涯立ち入ることのできない場所へ赴けることにだ。

 建国時より数世代に渡り王に仕えてきたが長い年月が巡る中でさえウィルフレッドの目を引くものは特段なかった。

 ララ・グレイシーを除いては。

 旅の同行など安いもので、ウィルフレッドはそれらしい笑みを貼り付けて新たなララグレイシーとその番の少年の門出に祝福を贈っていた。

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