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プロローグ

「この結婚に意義のあるものは今すぐ申し出よ、さもなくば」

 新たな門出に手を差し伸べて型通りに言葉を連ねる司教様の言葉を受け入れる参列者の中で「はい」ブリジットは手を挙げた。

 厳かな礼拝堂には異議を申し出る声がはっきりと響き参列者の視線が集まる中で伸ばした手を膝に戻した女は臆すことなく紅く色を重ねた口を開く。

「司教様、発言のお許しを」

 伸ばした背筋は曲がることはなく正当な権利を行使するがごとく述べる。

「あ、ああ」

 まさか反対するものがいるとは思わなかったのかそれとも昨晩の痴態を思い出したのかどちらにしろ司教様がたじろいだところで幾重にも並べられた長椅子から立ち上がり言葉を発した。

「婚姻が結ばれる前にひとつ申し上げます。その方は妻子持ちですが結婚しても本当によろしいのですか?」

「……な、なにを言っているんだ! 警備兵この女を摘み出せ」

 思い当たる節でもあったのか新婦は言葉を失いおろおろと視線を彷徨わせていた新郎を睨みみる。

 嘆息を吐きポーチから撮りためていた写真を取り出すと天高く投げ上げれば重力によって舞い降りる露な男女の一場面は言い逃れのしようがなく参列者の視線はひとりの男へと注がれていた。

 ちがうんだ、これは。という情けない声と遮るような渇いた音が礼拝堂に響き渡った。




 ──確かに、報酬分の働きはしたわよ。




 ブリジットは教会の側に居を構える主にそっと告げた。

 彼にこの言葉が届いているのかはわからない。

 ただ風に頬を寄せた彼は少しだけ微笑んでいるように見えた。

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