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00.序章
チリン――チリン――
誰かが置いていったのか、木に引っ掛けられた風鈴の音が風に吹かれ響く。
青年は一人、墓に手を合わせる。
「……」
チリン――チリン――
「……また来るな」
そう言って青年は立ち上がる。
ふと目の前に仔猫を運ぶ猫が通る。
親猫はこちらに気づき草むらに入り込んだ。
「あ……」
『**、お前は……***』
過去に聞いた少年の言葉が頭をよぎる。
「……わかってるさ。……帰るか」
墓を後に階段を下る。
「待っていてくれ……。お前が何と思おうが……絶対に」
その為に俺は、
チリン――
「……見つけ出して、必ず――お前の無念を晴らす」
チリ……パリンッ――
紐の切れた風鈴は地に落ち、欠片は太陽の光を集めていた。
タイトルは『逢想の纒憑』と読みます。
元々漫画にする予定で挙げたプロット式箇条小説(会話からストーリーを小説風に纏めるやり方)なので会話文多めです。