【あっちの世界】と【こっちの世界】
?「健太さん」
夢現の中で声が聞こえる。目を開けると草原に一人の女性が立っていた。年の頃は20代後半くらいではないだろうか。オジサンには刺激の強い衣服を着用している、と言っても若干露出多めの黒い服装だが。
「どなたですか?そしてここはどこですか?」
?「ここは貴方の夢の中です。夢を見ているだけですよ。そして私はこの【こっちの世界】に転生させた張本人、新木亜美です。以後、お見知りおきを。時折、夢でお会いしますから」
キャリアウーマンに居そうな雰囲気で、万人受けしそうな顔立ち。営業やったらトップセールスになるだろうな、などと考えながら質問をした。
「今、【こっちの世界】と言いましが、それはオレが中学生の世界と言う事ですか?」
「はい、そうですよ。貴方は【あっちの世界】つまり元いた世界で通勤途中に事故に遭い、まぁ自損事故ですけどね、フフフ」
「え?そうなると【あっちの世界】で死んだのですか?」
「いえいえ、決してそうではないです。生きていますよ。だから夢も見ることができます。もちろん【こっちの世界】でですけどね」
「戻る方法はあるのですか?」
「ん~あるにはありますが、一種のパラレルワールドになっています。まったく同じ時間軸に戻る事はなかなか難しいですよ」
アニメやなんかで見た設定だな。なんとなく納得できる話だ。
「新木さん、ちなみに貴女、張本人と言いましたが何者なのですか?」
「貴方を【こっちの世界】に導いた張本人です、それ以上でもそれ以下でもないです」
「では、【あっちの世界】に戻る方法を教えてください」
「いくつかありますが・・・いいのですか?」
「なぜ?」
「だって、またあの結婚生活を過ごすのですよ?」
「と言う事は同じ事を繰り返せば、元に戻れると?」
「はい、同じ時間軸に戻るためにはまったく同じ生活をしていく事が条件になりますから」
確かにごもっとも。というよりも中学2年生の14歳からあと33年同じ生活?無理だろ。それにあの結婚生活は避けたいな。
「ですよね」
新木女史はにこやかにそう言った。
「ん?どういう事ですか?」
「今、貴方が考えた事を聞きましたから」
「話す必要すらなくなるのですか、本当に貴女、何者ですか?」
「強いて言うなら『佐久山健太様担当の神』です」
「神?」オレは失笑を隠し切れずにいた。
「失礼ですね、貴方が生まれてからずっと見守って来ましたのに」
「失礼しました。それで、神様、一度通った時間ではなく違う時間軸を通って尚且つ【あっちの世界】に戻る方法はありますか?」
「やってみますか?あまりにも不遇な状況でしたものね、後半」
「えぇ、是非。明日香と暮らす事が最低限オレの戻りたい理由ですので、できれば竹〇結〇とか広〇涼〇とみたいな嫁をもらって、尚且つ幸せ円満に。ムフフ。あ~子沢山になったらどうしよう~ムフフ」
「あのぉ、そこまでは行きませんが最低限に戻るように頑張ってみてください」
新木女史は汚いものを見るかのような視線をオレに向けつつそう言った。
オレは居住いをただし、新木女史に訪ねた。
「では、【あっちの世界】に戻る方法を教えてください」