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第4話

 今日は場所と活動内容の見学をする、ということで僕と天道さんは部室を目指してキャンパス内の通りを歩いていた。

 空が茜色に染まりはじめている。腕時計を確認すると、17時を回る頃だった。


 穏やかな夕暮れの中、周りには授業を終え帰路につく人、サークル活動を楽しむ人、それを見学している新入生、この時間に研究室に向かう上級生など様々だ。


それらを横目に見ながら歩いていると、ふと、天道さんが口を開いた。

「舞丘先輩……舞丘さん……仁さん……先輩のこと、どう呼んだほうがいいですか?」

「天道さんが呼びやすい呼び方でいいよ」

「ではXxジンxXエックスエックスジンエックスエックスでいいですか?」

「呼びにくいし、その名前はいじらないでくれ……」

「うーん……じゃあ短くて呼びやすいので『仁さん』で……あ、下の名前で呼ぶからって変な勘違いしないでくださいね。困っちゃうので」

「はいはい……」


なんとなく、天道さんの性格というか人柄が分かってきた気がする。


「私のことはどう呼んでも構いませんよ。てんてんとか天さんってよく言われます」

「天さんって……餃子チャオズじゃあるまいし」

「はぁ?」


どうやらドラゴボネタは通じないらしい。

あだ名で呼ぶのはどうも照れくさいので、当分『天道さん』のままでいいか、と心の内で決める。


「あれ? ここって、東門……でしたっけ。大学から出ちゃいますけど」

「あぁ、うちは非公認のサークルだから大学内に活動場所があるわけじゃないんだ。すぐ近くのアパートを一部屋借りてあって、そこを部室代わりにしてるんだよ」

「え……部屋借りてるって……ココら辺、都会ではないですけど決して安いわけでもないですよね?」

「まあ、そうだね。すぐ着くし、その説明は部屋の中でするよ」


大学の東門から出て、わずか徒歩1分。そこに僕達のサークルの根城がある。


「……着いた。ここの103号室が一応部室ってことになっている」


シンプルな外見のアパートだ。オートロックはないが、駐車場・駐輪場があり、敷地内にゴミ置き場もある。近くにコンビニがあり立地としてはなかなか良いアパートだ。


「近っ!……ここなら講義の合間とかでもすぐ来れそうですね」

「そのせいで講義はじまるギリギリまでゲームやってしまうことも多々あるけどね……」


渡されている合鍵を使い、ドアを解錠する。

ドアノブに手をかけたその時、


「待ってください!」

「ん?」

「……失礼を承知の上で聞きますけど、この部屋、実は仁さんが住んでるお部屋で、中に入ったら私に襲いかかってくる、なんてありませんよね……?」


天道さんはジト目でこちらを見てきた。失敬な。僕は犯罪に手を染めたくない。

……少しだけ悪ノリしてみるか


「ち……勘が鋭いな。もう少しだったのに」

「ひっ」


天道さんは小さな悲鳴を上げ、一歩後ろに退いた。

普通にドン引きしている。ふざけすぎたかもしれない。


「……ごめん、冗談だ。ちょっと待って」


ドア横に付いているインターホンを押す。

数秒待つと、インターホンのスピーカーから先輩の声が聞こえてきた。


「……仁?鍵持ってないの?対戦中だったんだけどー」

「すみません、鍵は持ってます。新入生連れてきたんですけど、中に人がいるってことを信用してほしくてちょっと」

「え?あんたそんなに怪しまれてんの?……よくわからないけど中で待ってるわよ」


後ろを振り向き、むっとした顔をしている天道さんに声をかける。


「聞こえた?一応これで、女性の先輩が部屋にいることを信用してくれるかな」

「信用はしますけど、仁さんへの信頼は地に落ちました」

「辛辣だね……じゃ、中へどうぞ」


僕と天道さんは、居たたまれない空気になりつつ部屋に入っていった……

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