第3話
おかしい……
予想外だ……
天道さんのモンスターが……
いくらなんでも弱すぎる……!
『てんてん【敗北】 VS XxジンxX【勝利】』
バトル開始から5分も経たずに、対戦結果が表示された。
僕がマスター級のプレイヤーでそれなりの実力があるという点を踏まえても、あまりにも一方的な勝利だった。
まず、天道さんの3匹のモンスター構成がいわゆる『旅パ』だったのだ。旅パとは、旅パーティの略で、主にストーリークリアを目的としたパーティ構成のことである。ポコモンはストーリークリア後に出現するモンスターが強力なので、ストーリー前に出現するモンスターを人同士の対戦で使用するプレイヤーはあまりいない。
次に、モンスターが使う技が強くない技ばかりだった。天道さんはモンスターが初期から使える技を多用してきたので、こちら側はダメージを殆ど受けることがなかった。結果、僕は3タテ(※1匹のモンスターしか使うことなく、3匹のモンスターを倒すこと)で勝利してしまった。
天道さんの方をチラりと確認すると、悔しそうにぷるぷると震えている。
あれだけ自信満々な顔をしていたのに……
「おかしい……」
「……おかしいって、思ったより私が強かったって意味ですか?」
「弱すぎておかしいって意味だ!」
「がーん……」
天道さんは古さを感じる擬音を発しながら大きく肩を落とした。この落ち込みよう、わざと手を抜いていたというわけでもないのか…
手元を見ると、画面に天道さんの所持しているモンスターリストが表示されていた。
僕が一度も捕まえたことのないモンスターがいたのでそれを選択すると、軽快な音が流れると共にそのモンスターが僕のモンスターリストに移動した。
「あわわわ、わ、わたしのサルスケがぁ……」
「はは、申し訳ないけど頂戴するよ」
あまりにも良い反応をしてくれるので笑みが溢れてしまった。
「ひどいです……先輩が最低で鬼畜な悪魔に見えます……!」
「オイオイ、散々な言われようだな……」
「うぅ……」
「さて、約束通りサークルに加入してもら……」
いや待て……僕らのサークルが求めていた人材は『ゲームが上手い人』だったはずだ……!ポコモンが強くない時点で、天道さんは他のゲームもおそらく強くはないだろう。先輩の希望に当てはまらないがどうしよう……。
「……入りますよ、サークル。」
「え?」
「約束ですから。まさか今更入るな、なんて言いませんよね?」
「う、うん」
「ふふ。じゃあ、これからよろしくお願いします。舞丘先輩」
天道さんは、すっと手を前に出した。
「ほら、握手ですよ、握手」
なんか自然な流れで加入してもらうことになったけど、まあ多分大丈夫だろう……。
「よろしく……」
僕も手を出し、そっと天道さんの手を握ったのだった。
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